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労務の仕事とは?AI時代でもなくならない理由と業務内容を徹底解説

労務の仕事

労務の仕事は、給与計算・勤怠管理・社会保険手続きなど、従業員が安心して働ける環境を支えるための業務全般を指します。近年は「AIによって労務の仕事はなくなるのではないか」という声も増えていますが、結論からいえば、労務担当者の仕事はなくなりません。 むしろ、AIを活用することで仕事の質が上がり、専門家としての価値がより高まる職種です。

この記事でわかること
  • 労務担当者の主な仕事内容(勤怠管理・給与計算・社会保険手続きなど)
  • 労務と人事・総務の違い
  • AIや自動化で代替される業務と、されない業務の違い
  • 労務の仕事に向いている人の特徴とキャリアパス

労務担当者の仕事内容・人事との違い・AI時代における労務の将来性について、初めて学ぶ方にもわかりやすく解説します。

目次

労務担当者の主な仕事内容

勤怠管理|従業員の働く時間を正確に記録する

勤怠管理とは、従業員が毎日何時に出勤して何時に退勤したか、どれくらい残業したか、有給休暇を何日取得したかといった「働いた時間に関するデータ」を正確に把握・記録する業務です。

一見シンプルに聞こえますが、これは労務の中でも特に重要な仕事のひとつです。なぜなら、勤怠データは給与計算の土台になるからです。出退勤の記録に1分でもミスがあれば、給与の支払い額が変わってしまいます。「給料が少ない」「残業代が出ていない」といったトラブルは、勤怠管理のミスから起きることが非常に多いのです。

また、勤怠管理には「法律を守っているかチェックする」役割もあります。日本には労働基準法という法律があり、「1日8時間・週40時間を超えて働かせてはいけない」「残業には割増賃金を払わなければならない」といったルールが定められています。労務担当者は、このルールが守られているかを日々の勤怠データから確認し、問題があれば上司や現場に働きかける役割を担います。

近年はテレワークや時短勤務、フレックスタイム制(出退勤時間を柔軟に選べる制度)など、働き方の多様化が進んでいます。そのぶん、勤怠管理の複雑さも増しており、ICカードやスマートフォンを使った勤怠管理システムを導入する企業が増えています。とはいえ、システムを正しく運用し、異常なデータに気づいて対処するのはあくまで人間の仕事です。勤怠管理は、従業員が安心して働ける環境を守るための、労務の根幹といえます。

給与計算|給料・手当・控除を正しく算出する

給与計算とは、毎月従業員に支払う給与の金額を正確に計算する業務です。「給料を計算するだけ」と思われがちですが、実際には非常に複雑な作業が求められます。

まず、計算の出発点は「総支給額」の算出です。基本給に加え、残業手当・通勤手当・役職手当・家族手当など、会社ごとにさまざまな手当があり、これらをすべて正確に足し合わせます。次に、そこからさまざまな「控除」を差し引きます。控除とは、給料から天引きされるお金のことで、主なものとして健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料(これらをまとめて「社会保険料」と呼びます)、そして所得税・住民税があります。これらの金額は、従業員の年収・扶養家族の人数・勤務日数などによって毎月変わるため、毎回一から計算が必要です。

さらに、年に一度「年末調整」という作業もあります。年末調整とは、1年間で源泉徴収(あらかじめ給与から天引き)した所得税の合計額と、本来納めるべき正確な税額を比較して、差額を従業員に返金したり追加徴収したりする手続きです。これも労務担当者が中心となって進めます。

給与は従業員の生活に直結するものです。1円でもミスがあれば従業員からの信頼を失いかねず、税金の計算を誤れば法律違反になる可能性もあります。そのため、給与計算は「絶対にミスが許されない」という重責を伴う仕事です。

社会保険手続き|入社・退社・育休などに伴う保険手続き

社会保険手続きとは、従業員が加入する各種保険について、役所や年金事務所などへの届け出を行う業務です。日本では、会社員は原則として「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4つの社会保険に加入することが法律で義務付けられています。これらの手続きを、会社を代表して行うのが労務担当者の役割です。

たとえば、新しい従業員が入社したときは、入社日から5日以内に健康保険・厚生年金の「資格取得届」を年金事務所に提出しなければなりません。退職した従業員については、健康保険証の回収や雇用保険の「離職票」の作成・ハローワークへの提出が必要です。離職票は、退職した従業員が失業給付(いわゆる「失業手当」)を受け取るために必要な書類なので、迅速に対応することが求められます。

また、従業員に妊娠・出産・育児休業・介護休業といったライフイベントが発生した場合にも、さまざまな手続きが発生します。育児休業中は給与が支払われない代わりに「育児休業給付金」という国からの給付金がありますが、その申請手続きも労務担当者が行います。

これらの手続きには、それぞれ提出期限が定められています。期限を過ぎると従業員が給付金を受け取れないなど、実害が生じることもあるため、正確かつスピーディーな対応が不可欠です。法律の知識と細やかな事務処理能力の両方が求められる、専門性の高い業務です。

就業規則の整備と管理

就業規則とは、会社と従業員の間の「働く上でのルールブック」のことです。始業・終業の時間、休憩・休日の取り方、給与の計算方法、懲戒処分(ルール違反をした場合の罰則)など、労働条件に関するさまざまな取り決めが記載されています。常時10人以上の従業員を雇っている会社には、就業規則を作成して労働基準監督署(労働に関する法律が守られているかを監督する国の機関)に届け出ることが、労働基準法によって義務付けられています。

就業規則の整備・管理は、単に書類を作って提出すれば終わりではありません。法律は毎年のように改正されるため、就業規則の内容が現行の法律に違反していないか、定期的に見直す必要があります。たとえば、近年では時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化など、労働に関するルールが大きく変わりました。こうした法改正のたびに就業規則を更新し、従業員に周知するのも労務担当者の仕事です。

また、就業規則は「会社と従業員のトラブルを防ぐ」役割も担っています。ルールが明文化されていることで、「そんな決まりは聞いていない」という認識のズレを防ぎ、万が一トラブルが起きたときの判断基準にもなります。労務担当者は法的な知識を持ちながら、会社の実態に合った就業規則を整備・維持していくことが求められます。

福利厚生の運用・管理

福利厚生とは、会社が従業員とその家族の生活を支えるために提供する、給与以外のさまざまなサービスや制度のことです。福利厚生には大きく2種類あります。ひとつは「法定福利厚生」といって、法律によって会社が必ず提供しなければならないもので、健康保険や厚生年金、雇用保険などがこれにあたります。もうひとつは「法定外福利厚生」で、会社が任意で独自に設ける制度です。住宅手当・食事補助・育児支援・社員旅行・資格取得支援など、会社によって内容はさまざまです。

労務担当者は、これらの福利厚生制度を適切に運用・管理する役割を担います。具体的には、制度の内容を社内に周知したり、従業員からの申請を受け付けて処理したり、利用状況を管理したりといった業務です。また、「どんな福利厚生を新しく導入すれば従業員の満足度が上がるか」を検討し、経営陣に提案する役割を担うこともあります。

福利厚生の充実度は、求職者が会社を選ぶ際の重要な判断材料のひとつです。とくに近年は、育児・介護との両立支援やメンタルヘルスケアへのニーズが高まっており、どのような制度を整えるかが人材採用・定着に直結します。労務担当者は、会社の経営目標と従業員のニーズの両方を理解したうえで、福利厚生の設計・運用に携わる必要があります。

安全衛生管理・健康診断の実施対応

安全衛生管理とは、従業員が心身ともに健康で安全に働けるよう、職場環境を整える業務です。その根拠となる法律が「労働安全衛生法」で、企業に対してさまざまな義務を課しています。

最もわかりやすい例が「健康診断」です。会社は年に1回以上、すべての従業員に定期健康診断を受けさせることが法律で義務付けられています。労務担当者は、健診機関との日程調整・従業員への案内・受診勧奨・結果の回収と管理・産業医(企業と契約して従業員の健康管理を担当する医師)への結果共有など、一連の業務を取り仕切ります。

また、2015年からは従業員50名以上の職場に対して「ストレスチェック制度」の実施が義務付けられています。これは、従業員がどれくらいストレスを抱えているかを定期的に確認し、メンタルヘルスの問題を早期に発見・対処するための制度です。労務担当者は、このストレスチェックの実施から結果の集計・産業医との連携まで、一連のプロセスを管理します。

近年は長時間労働やハラスメントが社会問題となっており、企業が従業員の健康に対して負う責任はますます大きくなっています。安全衛生管理は、従業員を守ると同時に、会社が法律違反を犯さないためにも欠かせない業務です。

労使トラブル対応と相談窓口としての役割

「労使トラブル」とは、会社(使用者)と従業員(労働者)の間で生じる争いや問題のことです。代表的なものとしては、残業代の未払い・不当解雇・ハラスメント(パワハラ・セクハラなど)・労働条件の一方的な変更といったケースがあります。こうしたトラブルが発生した場合、または発生する前に未然に防ぐために動くのが、労務担当者の重要な役割のひとつです。

日々の業務の中では、従業員から「有給休暇はどう申請すればいい?」「残業代の計算が合わない気がする」「上司からきつい言葉をかけられている」といった相談が持ち込まれることがあります。労務担当者はこうした相談に真摯に向き合い、事実確認を行い、就業規則や法律に照らして適切な対応を取ります。

トラブルが深刻化した場合には、労働基準監督署(行政機関)や社会保険労務士(専門家)と連携しながら対処することもあります。また、従業員が多い会社では「労働組合」という従業員の代表組織が存在することがあり、会社と労働組合が交渉を行う際のサポートも労務担当者の業務に含まれます。

この業務には、法律の知識だけでなく、相手の話をしっかり聞き、状況を冷静に整理する力が必要です。労務担当者は会社と従業員の双方の立場を理解し、公正な解決を目指す「橋渡し役」として機能することが求められます。

労務と人事の違いを具体的に理解する

労務と人事は、どちらも「会社で働く人に関わる仕事」であるため混同されがちですが、その目的は明確に異なります。一言で表すなら、労務は「従業員が安心して働ける環境を整えること」、人事は「会社の目標に向けて人を動かすこと」です。

目的の違い:「環境を整える」vs「人を動かす」

労務の仕事の中心は、給与計算・勤怠管理・社会保険手続きといった、法律に基づく手続きや管理業務です。これらは、従業員が「正しく給料が支払われている」「保険にきちんと加入されている」「安全に働ける環境が守られている」という状態を維持するために行います。言い換えると、従業員の権利を守り、会社が法律を守って運営できるよう支える縁の下の力持ち的な役割です。

一方、人事の仕事は採用・研修・人事評価・配置転換・昇進・降格など、「人材をどう活かすか」に焦点を当てています。会社が掲げる目標や戦略に合った人材を採用し、育て、適切なポジションに配置することで、組織全体のパフォーマンスを最大化することを目指します。

つまり、労務は「今いる従業員が不満なく安全に働けているか」を守る守備的な役割、人事は「会社をもっと強くするために人をどう活かすか」を考える攻撃的な役割、と理解するとわかりやすいでしょう。どちらも欠かせない機能ですが、求められる視点と動き方はまったく異なります。

仕事の対象と関わり方の違い

労務と人事では、従業員との「関わり方」にも大きな違いがあります。

人事は、採用面接・研修・面談・評価フィードバックなど、従業員と直接コミュニケーションを取る場面が多い仕事です。「どんな人材が会社に合うか」「この社員はどう成長しているか」「どのポジションに配置すれば力を発揮できるか」といった、人の可能性や将来性を見極めながら動きます。

それに対して労務は、どちらかといえば従業員と間接的に関わることが多い仕事です。日々の業務の多くは、データの集計・書類の作成・役所への届け出・システムの管理といった事務作業が中心です。ただし、従業員から社会保険の相談を受けたり、労使トラブルの解決に動いたりする場面では、直接的なコミュニケーションが求められることもあります。

また、労務は「法律」を強く意識した仕事です。労働基準法・健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法など、さまざまな法律の規定に従って業務を進めなければならず、法律の改正にも常に目を光らせる必要があります。一方、人事は法律への理解も必要ですが、より「戦略的な視点」や「人を見る目」が重視される仕事といえます。

中小企業と大企業での役割分担の違い

労務と人事の業務範囲は、会社の規模によって大きく変わります。

大企業では、人事部と労務部が別々の部署として設置されていることが一般的です。それぞれに専門のスタッフが配置され、採用担当・給与計算担当・社会保険担当などとさらに細分化されているケースもあります。業務量が多く専門性も高いため、役割を分けて効率的に対応する体制が整っています。

一方、中小企業では、一人の担当者が労務と人事の両方をこなすことが珍しくありません。さらに、総務や経理の業務まで兼任するケースも多く、「人事・労務・総務を一人で担当する」という状況も現場ではよく見られます。少ない人数で幅広い業務をカバーしなければならないため、中小企業の労務担当者には広い知識と高い処理能力が求められます。

転職や就職を考える際には、この違いを理解しておくことが重要です。大企業では特定の業務を深く掘り下げるスペシャリストとして成長できる環境がある一方、中小企業では幅広い経験を積んでゼネラリストとして成長できる可能性があります。自分がどちらのキャリアを歩みたいかを考えながら、働く環境を選ぶとよいでしょう。

労務の仕事はAIでなくなるのか?【正直に解説】

「AIが進化すると、労務の仕事はなくなってしまうのではないか」。そう不安に感じている人は少なくありません。結論からいうと、労務の仕事のうち一部はAIや自動化によって効率化・代替が進んでいます。しかし、仕事そのものがなくなるという話とは少し異なります。

AIや自動化で代替されやすい労務業務とは

AIや自動化が得意とするのは、「決まったルールに従って繰り返し行う作業」です。労務の業務でいえば、給与計算・勤怠データの集計・社会保険料の計算といった定型的な数値処理は、すでにシステムやAIが自動でこなせるようになっています。

また、従業員からの「有給の申請方法は?」「社会保険の扶養に入る条件は?」といったよくある質問に対応するAIチャットボットを導入する企業も増えています。

こうしたツールの普及によって、以前は何時間もかかっていた給与計算が数分で終わる、といった業務効率化が実現しています。作業の量は確かに減っていくかもしれません。

ただし、重要なのは「作業が減る=仕事がなくなる」ではないという点です。AIが定型業務を担ってくれることで、労務担当者はより高度な判断や人との関わりを必要とする業務に集中できるようになります。

これは仕事の「消滅」ではなく、仕事の「進化」と捉えるべきでしょう。

それでも労務担当者が必要とされる理由

AIが便利なツールであることは間違いありませんが、労務担当者の仕事をすべて代替できるわけではありません。それには明確な理由があります。

法改正への対応と専門的な判断力

労働に関する法律は毎年のように改正されます。最低賃金の引き上げ・残業規制の強化・育児休業制度の拡充など、変化のスピードは年々速くなっています。

AIは既存のデータをもとに処理を行うことは得意ですが、

  • 「この法改正が自社の就業規則にどう影響するか」
  • 「従業員Aさんのケースに、この新しいルールをどう当てはめるべきか」

といった専門的な解釈や判断は、人間の経験と知識が不可欠です。

従業員との信頼関係・相談対応

「上司からパワハラを受けているかもしれない」「育児休業を取りたいが言い出しにくい」――こうした繊細な悩みを抱えた従業員が頼る相手は、AIチャットボットではなく人間です。

話を聞いてもらい、共感してもらい、一緒に解決策を考えてもらうという体験は、人間にしか提供できません。労務担当者が従業員の相談窓口として機能することの価値は、AIが普及してもなくなりません。

企業固有の状況に応じた柔軟な判断

「この従業員は特殊な雇用形態で、法律の基準をそのまま当てはめると不都合が生じる」「会社の経営状況を踏まえて、どの制度から優先的に整備すべきか」といった、その会社固有の文脈を踏まえた判断はAIには困難です。現場をよく知り、会社の歴史や文化を理解した人間だからこそできる判断があります。

AIを「脅威」ではなく「ツール」として活用する時代へ

AIの登場を恐れるのではなく、うまく活用できる労務担当者こそが、これからの時代に最も必要とされる存在です。

給与計算や勤怠集計のような定型業務はシステムに任せ、自分は法律の解釈・従業員からの相談対応・制度設計・経営層への提言といった、より付加価値の高い業務に時間とエネルギーを注ぐ。これが、AI時代における労務担当者の理想的なあり方です。

実際、労務の現場ではクラウド型の労務管理システムやAIを活用した給与計算ツールが急速に普及しており、こうしたツールを使いこなせる人材への需要は高まっています。「AIに仕事を奪われる」のではなく「AIを使って仕事の質を上げる」という発想の転換が、これからの労務担当者に求められる姿勢といえます。

AI時代に求められる労務担当者のスキルセット

AIが定型業務を担う時代に、労務担当者として価値を発揮するためには、どのようなスキルを伸ばせばよいのでしょうか。

まず重要なのは、法律の深い理解です。AIはルールを処理することは得意ですが、複雑なケースへの解釈や判断は人間が行います。労働基準法・社会保険法などの基礎知識をしっかり身につけ、改正情報にアンテナを張り続ける姿勢が不可欠です。

次に、ITリテラシー(デジタルツールを使いこなす能力)も欠かせません。クラウド型の労務管理システムやAIツールを積極的に活用できる人材は、業務効率が大きく変わります。ツールへの苦手意識をなくし、新しいシステムを学ぶことを習慣にしましょう。

そして、コミュニケーション能力と問題解決力もますます重要になります。AIが担えない「人との対話」や「状況に応じた判断」ができる労務担当者は、組織にとってかけがえのない存在です。法律とデジタルを武器にしながら、人に寄り添える。そんな人材が、AI時代の労務担当者として最も求められる姿といえます。

労務の仕事に必要なスキル・知識

労務の仕事を行ううえで、最も基本となるのが労働関連法令の知識です。労務担当者は、日々の業務の中で「これは法律上問題ないか」「この手続きは正しいか」を判断する場面が何度も訪れます。

そのたびに正確な知識が求められるため、法律の理解は労務の仕事の根幹といえます。

労働関連法令の基礎知識(労基法・社会保険など)

代表的な法律として、まず「労働基準法」があります。労働基準法は、労働時間・休憩・休日・残業・解雇など、働く上での最低限のルールを定めた法律で、すべての労務担当者が必ず理解しておくべき基本中の基本です。

次に重要なのが、社会保険に関する法律群です。健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法・労働者災害補償保険法(労災保険法)の4つをまとめて「社会保険4法」と呼ぶことがあります。これらは、従業員の入退社のたびに手続きが発生するため、内容を正確に理解しておくことが不可欠です。

ただし、最初からすべてを完璧に覚える必要はありません。実務を通じて少しずつ知識を積み上げていくことが大切です。また、法律は毎年改正されるため、定期的に情報をアップデートする習慣を身につけることも重要です。社会保険労務士(社労士)が発信するコンテンツや、厚生労働省の公式サイトを定期的にチェックする習慣をつけるとよいでしょう。

正確な事務処理能力と数字への強さ

労務の仕事は、給与計算・勤怠集計・社会保険料の計算・書類作成など、数字と書類を扱う業務が非常に多い職種です。そのため、正確に事務処理をこなす能力は必須のスキルといえます。

給与計算を例に取ると、計算する項目は基本給・各種手当・社会保険料・所得税・住民税と多岐にわたり、従業員の人数分だけ処理が発生します。100人の会社なら、毎月100人分の給与を計算しなければなりません。しかも、1円でも間違えると従業員に迷惑をかけるだけでなく、場合によっては法律違反になる可能性もあります。

「数字が苦手だから労務は向いていないかも」と心配する人もいるかもしれませんが、複雑な数学の知識が必要なわけではありません。四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)ができれば基本的には対応できます。それよりも重要なのは、「丁寧に、一つひとつ確認しながら進める」という姿勢です。

また、現在はExcelや専用の給与計算ソフトを使って計算するのが一般的なため、Excelの基本操作を覚えておくと大きな武器になります。

ミスなく、スピーディーに、大量の処理をこなす能力は、経験を積む中で自然と鍛えられていきます。最初は時間がかかっても、焦らず丁寧に取り組む姿勢が長い目で見て最も大切です。

従業員への対応力・コミュニケーション能力

労務の仕事は書類や数字を扱う事務作業が多い一方で、従業員と直接やり取りする場面も少なくありません。社会保険の手続きに必要な書類を収集したり、制度の内容を説明したり、悩みを抱えた従業員からの相談を受けたりと、人と関わる場面は意外なほど多くあります。

特に重要なのが、相談対応の場面です。「育児休業を取りたいが、どうすれば良いか」「会社の残業代の計算がおかしいと思う」「職場でハラスメントを受けている気がする」――こうした相談は、従業員にとって非常に勇気がいるものです。

労務担当者は、まずしっかりと話を聞き、相手の状況を正確に把握することが求められます。その上で、就業規則や法律に基づいた正確な情報を、わかりやすく伝える能力が必要です。

また、労務担当者は「会社のルール」と「従業員の権利」の両方に精通していなければなりません。会社の立場だけを守ろうとすれば従業員の信頼を失い、従業員の要望をすべて飲んでいれば会社が立ちいかなくなります。双方の立場を理解し、バランスを取りながら最善の解決策を導く「調整力」が、優れた労務担当者の証といえるでしょう。

労務担当者のやりがいと大変なこと

労務の仕事は、営業や企画のように目に見える成果が出る職種ではありません。

しかし、労務担当者が正確に仕事をこなすことで、従業員は毎月正しい給与を受け取り、必要な保険に加入され、安心して仕事に集中できます。この「見えないところで会社全体を支えている」という実感こそが、労務の最大のやりがいのひとつです。

「縁の下の力持ち」として会社を支える実感

たとえば、

  • 育児休業の取得を希望していた従業員の手続きをスムーズにサポートできたとき
  • 長時間労働で悩んでいた従業員の相談に乗り、適切な対処ができたとき
  • 就業規則を整備したことでトラブルが未然に防げたとき

こうした場面で「自分の仕事が誰かの役に立っている」という実感を得られるのが、労務という仕事の醍醐味です。

また、労務の仕事は専門性が高いため、知識とスキルを積み上げることで着実に成長を実感できる職種でもあります。社会保険労務士(社労士)という国家資格を取得すれば、さらに専門家としての評価が高まり、キャリアの幅も広がります。

地味に見えて、実は深くてやりがいのある仕事――それが労務の本質です。

法改正への継続的な対応が求められる難しさ

労務の仕事における最大の難しさのひとつが、法律が頻繁に改正されることへの対応です。労働基準法・社会保険法・育児・介護休業法など、労務に関わる法律は毎年のように見直されており、担当者は常に最新の情報を把握しておく必要があります。

たとえば、近年では

  • 「時間外労働の上限規制」(残業時間に法律上の上限が設けられた)
  • 「同一労働同一賃金」(正社員とパートタイム従業員の不合理な待遇差を禁止するルール)
  • 「育児休業の取得促進」

に関する法改正など、労務担当者が対応しなければならない変化が立て続けに起きています。

法改正があるたびに、就業規則の改定・社内への周知・手続きの変更が必要になります。これを怠ると、知らないうちに会社が法律違反をしてしまうリスクがあります。「知らなかった」では済まされないため、情報収集と対応のスピード感が常に求められます。

この「常に学び続けなければならない」という点は、人によっては大変に感じることもあります。一方で、「専門知識をアップデートし続けることがそのままキャリアの強みになる」と前向きに捉えることもできます。

変化に対応し続ける力こそが、労務担当者としての市場価値を高める源泉です。

労務の仕事に向いている人の特徴

労務の仕事は、毎月繰り返される給与計算・勤怠管理・書類作成など、地道な事務作業の積み重ねで成り立っています。華やかな成果が一瞬で出るような仕事ではなく、正確さと継続性が求められる職種です。

コツコツ作業が得意で正確さを大切にできる人

「コツコツと丁寧に仕事を積み上げることが得意」「細かいところまで気を配れる」という人が、労務の仕事で力を発揮しやすいといえます。

給与計算や社会保険手続きでは、1つのミスが従業員の生活に直接影響します。「だいたい合っていればいい」という感覚ではなく、「必ず正確にやり切る」という意識を持てる人が向いています。

また、締め切りが決まっている手続きが多いため、スケジュール管理をしっかりできることも重要です。

「事務仕事は地味だからつまらない」と感じる人には向かないかもしれませんが、「正確にこなした仕事が組織を支えている」という達成感を感じられる人にとっては、非常にやりがいのある職種です。細部への注意力と、誠実に仕事と向き合う姿勢が、労務担当者として信頼を積み上げる基盤になります。

法律や制度を学ぶことに抵抗がない人

労務の仕事では、労働基準法・社会保険法・育児介護休業法など、数多くの法律や制度の知識が求められます。しかも、これらは毎年改正されるため、一度覚えれば終わりではなく、常に学び続ける姿勢が必要です。そのため、「新しい知識を吸収することが苦にならない」「制度や仕組みを理解することが好き」という人が、労務に向いています。

法律というと難しそうに聞こえますが、最初から完璧に理解する必要はありません。実務を通じて少しずつ覚えていけばよく、わからないことがあれば調べながら進めることができます。重要なのは「学ぶことへの前向きな姿勢」と「知識を正確に理解しようとする誠実さ」です。

また、学んだ知識を資格という形で証明できる「社会保険労務士(社労士)」という国家資格があります。社労士の資格を持つことで、専門家として対外的にも信頼を得やすくなり、キャリアアップの強力な武器になります。「資格取得に向けて体系的に勉強する」というモチベーションを持てる人にとっても、労務は非常に相性のよい職種といえます。

相手の話をじっくり聞けるタイプの人

労務担当者は、従業員から相談を受ける機会が多い立場です。給与や社会保険に関する質問だけでなく、職場の人間関係・ハラスメント・育児や介護との両立といった、個人のデリケートな悩みを持ち込まれることもあります。こうした場面では、まず「しっかりと話を聞く」ことが何より大切です。

「相手の話をじっくり聞ける人」が労務に向いている理由は、ただ親切だからではありません。相談者の状況を正確に把握するためには、表面的な言葉だけでなく、その背景にある事実や感情を丁寧に引き出す力が必要だからです。話をよく聞かずに結論を急いでしまうと、状況を誤解したまま対応してしまうリスクがあります。

また、相談内容によっては「従業員の言い分は理解できるが、法律上はこうなる」「会社のルール上、この対応が限界だ」という難しい判断を伝えなければならないこともあります。そうした場面でも、相手の気持ちに配慮しながら正直に伝えられる誠実さと、感情に流されずに冷静な判断を保てるバランス感覚が求められます。「聞く力」と「伝える力」の両方を兼ね備えた人が、労務担当者として長く信頼されていきます。

労務担当者のキャリアと関連資格

労務の仕事と非常に密接な関係を持つ資格が「社会保険労務士(社労士)」です。社労士とは、労働・社会保険に関する法律の専門家として国が認定する国家資格で、試験に合格して登録することで名乗ることができます。

社会保険労務士(社労士)資格との関係

社労士ができる業務は大きく2つあります。ひとつは「書類作成・提出代行」で、社会保険の手続き書類や労働保険の申告書など、法律で社労士にしか作成・提出が認められていない書類があります。もうひとつは「コンサルティング」で、企業の就業規則の整備・労使トラブルの解決支援・助成金の申請サポートなど、労務に関する専門的なアドバイスを提供します。

社内の労務担当者として働く場合、社労士の資格は必須ではありません。資格がなくても、自社の社員として労務業務を行うことは法律上問題ありません。しかし、社労士の資格を持つことで、専門知識の深さが対外的に証明され、社内での評価が上がりやすくなります。また、将来的に社労士事務所に転職したり、独立開業したりといったキャリアの選択肢が広がる点でも、取得する価値の大きい資格です。

労務から広がるキャリアパス

労務担当者としてのキャリアは、一つの方向にとどまらず、様々な方向に広がる可能性を持っています。

まず、社内でのキャリアアップとしては、労務のスペシャリストとして昇進し、労務部門のマネージャーや人事部門の管理職を目指す道があります。労務の知識と経験を積んだ人材は、企業にとって非常に貴重であり、組織の中で重要なポジションを担うようになることも多いです。

また、社労士資格を取得することで、社労士事務所への転職や、独立・開業という選択肢も生まれます。社労士として独立すれば、複数の中小企業の労務顧問として活躍することができ、専門家としての高い市場価値を持つことができます。

さらに、労務の経験は人事全般・総務・経営企画など、幅広いバックオフィス業務へのキャリアチェンジにも活かせます。「法律の知識」「正確な事務処理能力」「従業員との信頼関係を築く力」は、どの職種においても価値ある強みです。AI時代において労務の専門性はますます重要になっており、長期的に安定したキャリアを歩める職種のひとつといえます。

まとめ|労務の仕事はAI時代にこそ価値が増す専門職

労務の仕事は、給与計算・勤怠管理・社会保険手続きといった地道な業務を通じて、従業員が安心して働ける環境を守る、組織にとってなくてはならない職種です。

AIの進化によって定型的な作業の一部は自動化が進んでいますが、法律の専門的な解釈・従業員との信頼関係の構築・企業固有の状況に応じた柔軟な判断といった、人間だからこそできる業務の価値はむしろ高まっています。

コツコツ丁寧に仕事を積み上げること、法律や制度を学び続けること、人の話をしっかり聞くことが得意な人にとって、労務は非常にやりがいのある職種です。

AIをツールとして使いこなしながら、人にしかできない判断と対話を大切にする。そんな労務担当者が、これからの時代に最も必要とされる存在です。

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この記事を書いた人

労務問題の課題解決メディア『ROUMU2.0』の企画編集部。企業法務弁護士ナビやBackOfficeDBなど、労務問題の解決手段を提供している。

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