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リフレッシュ休暇とは?制度の基本から導入・運用まで人事担当者向けに徹底解説【2026年最新】

リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇とは、勤続年数の節目に従業員の心身の疲労回復を目的として企業が独自に付与する法定外の特別休暇です。厚生労働省の令和6年就労条件総合調査によると、導入企業は全体の14.7%にとどまる一方、従業員1,000人以上の大企業では47.3%が導入しており、人材確保・定着の施策として注目度が年々高まっています。

本記事では、リフレッシュ休暇の定義や有給休暇との違いといった基礎知識から、企業・従業員双方のメリット・デメリット、就業規則への記載方法、導入企業の成功事例、さらには効果測定の考え方まで、人事・労務担当者が制度設計に必要な情報を網羅的に解説します。

この記事の要約
  • – リフレッシュ休暇は法定外休暇であり導入義務はないが、全企業の14.7%が導入済み(令和6年時点)
  • – 離職防止・メンタルヘルス対策・採用力強化など企業側メリットが大きく、95.9%の企業が全額有給で運用
  • – 就業規則への記載が必須で、制度設計から運用・効果測定まで一貫した計画が重要
目次

リフレッシュ休暇とは?基本的な定義と仕組み

リフレッシュ休暇は、従業員が日常業務から離れて心身をリフレッシュするために企業が設ける休暇制度です。法律で義務づけられた制度ではないため、導入するかどうか、どのような内容にするかはすべて企業の裁量に委ねられています。ここでは、制度の基本的な仕組みを整理します。

リフレッシュ休暇の定義と目的

厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、リフレッシュ休暇を次のように定義しています。

職業生涯の節目に勤労者の心身の疲労回復等を目的として付与される休暇です。例えば、勤続3年ごとに5日間の休暇を付与することなどが考えられます。

(出典:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」代表的な特別な休暇制度の例

つまりリフレッシュ休暇とは、一定の勤続年数に達した従業員に対して、日々の業務で蓄積された疲労やストレスからの回復を目的として企業が付与する休暇です。制度の目的は大きく分けると以下の3つに集約されます。

  1. 心身の疲労回復:長期勤続による慢性的な疲労やストレスを解消し、メンタルヘルスの維持・向上を図る
  2. モチベーションの再構築:日常から離れることで仕事への意欲を再び高め、復帰後のパフォーマンス向上につなげる
  3. 長期勤続への慰労:企業への貢献に報いる福利厚生として、従業員のロイヤルティを高める

法定外休暇(特別休暇)としての位置づけ

日本の休暇制度は、大きく「法定休暇」と「法定外休暇(特別休暇)」に分けられます。

法定休暇は労働基準法をはじめとする法律で付与が義務づけられた休暇で、年次有給休暇や産前産後休業、育児休業、介護休業などが該当します。企業はこれらの休暇を必ず従業員に付与しなければなりません。

一方、法定外休暇(特別休暇)は法律上の義務がなく、企業が福利厚生の一環として任意に設ける休暇です。リフレッシュ休暇はこの法定外休暇に分類されます。同じカテゴリには、夏季休暇、慶弔休暇、病気休暇、ボランティア休暇、教育訓練休暇なども含まれます。

法定外休暇であるため、企業にはリフレッシュ休暇を設ける義務はありません。ただし、いったん就業規則に規定した場合は労働条件の一部となるため、企業側は規定に従って付与する義務を負います。この点は後述する「制度の廃止・変更時の不利益変更リスク」と関わる重要なポイントです。

リフレッシュ休暇の一般的な付与条件

リフレッシュ休暇の付与条件は企業ごとに異なりますが、一般的には「勤続年数」を基準とするケースが大半を占めます。よく見られるパターンは以下の通りです。

  • 勤続年数基準型:勤続5年、10年、20年、30年といった節目ごとに付与する。最も一般的な方式
  • 定期付与型:勤続3年ごと、5年ごとなど一定の間隔で定期的に付与する
  • 年齢基準型:一定の年齢(40歳、50歳など)に達した時点で付与する
  • 全員付与型:勤続年数や年齢にかかわらず、毎年すべての従業員に付与する

多くの企業では勤続年数10年、20年、30年の節目を基準に設定しており、勤続年数が長いほど付与日数を増やす「段階的付与」を採用するケースが目立ちます。

付与日数の相場と平均(勤続年数別)

厚生労働省の「平成31年就労条件総合調査」によると、リフレッシュ休暇1回あたりの最高付与日数の平均は5.5日です。これは全企業の平均値であり、勤続年数に応じて付与日数が増える企業も少なくありません。

実際の企業事例を見ると、付与日数の相場感は以下のようになっています。

勤続年数付与日数の目安
3〜5年3〜5日
10年5〜7日
20年7〜14日
30年10〜30日

土日祝日と組み合わせれば、5日間のリフレッシュ休暇でも最大9日間の連続休暇が実現できます。実際に、厚生労働省も土日や年次有給休暇との組み合わせによる長期休暇の取得を推奨しています。

休暇中の給与は有給?無給?

リフレッシュ休暇中の賃金の扱いは企業が自由に決定できますが、厚生労働省の調査データでは、大多数の企業が有給として運用しています。

  • 全額支給:95.9%
  • 一部支給:1.3%
  • 無給:2.8%

(出典:厚生労働省「平成31年就労条件総合調査」

約96%の企業がリフレッシュ休暇中も通常通り給与を全額支給しているのが実態です。無給にすると制度の利用率が大幅に下がる傾向があるため、従業員のリフレッシュという本来の目的を達成するうえでも、有給での運用が望ましいと言えます。

なお、リフレッシュ休暇に加えて慰労金や旅行券を支給する企業もあります。たとえばベネッセでは勤続20年目に5日間の休暇に加えて15万円の支援金を支給しています。こうした金銭的インセンティブは休暇の取得促進に効果的です。

リフレッシュ休暇と有給休暇の違い

リフレッシュ休暇と年次有給休暇は、どちらも従業員が取得できる休暇ですが、法的な位置づけや運用ルールに大きな違いがあります。特に人事担当者が正確に理解しておくべきポイントを解説します。

法的根拠の違い(労働基準法第39条 vs 法定外)

最も根本的な違いは法的根拠の有無です。

年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく法定休暇であり、6か月以上継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、企業は最低10日間の有給休暇を付与する義務があります。付与しない場合には、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という罰則が科されます。

一方、リフレッシュ休暇には法的根拠がありません。あくまでも企業の任意で設ける法定外休暇であり、導入しなくても法律違反にはなりません。また、リフレッシュ休暇の日数・条件・給与の有無についても法的な定めはなく、すべて企業が自由に設計できます。

年5日取得義務との関係【重要】

2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、企業は年5日の有給休暇を確実に取得させる義務を負うこととなりました。違反した場合は従業員1人あたり30万円以下の罰金が科されます。

ここで人事担当者が特に注意すべき点があります。リフレッシュ休暇は、この年5日取得義務の日数にカウントされません

つまり、ある従業員がリフレッシュ休暇を5日間取得したとしても、それとは別に年次有給休暇を年5日以上取得させる義務は消えないのです。リフレッシュ休暇と年次有給休暇は完全に別枠の制度として管理する必要があり、勤怠管理システムでも区別して記録しなければなりません。

取得の自由度と時季指定権の違い

年次有給休暇は、原則として労働者が自由に取得時季を指定できる権利(時季指定権)を有しています。企業側が取得時季を変更できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます(時季変更権)。

一方、リフレッシュ休暇は企業が制度設計するものであるため、取得時期を企業側がコントロールすることが可能です。たとえば「年度初めに取得時期を申請し、部署ごとに調整して決定する」というルールを設けることも問題ありません。このコントロールのしやすさは、業務への影響を最小限に抑えたい企業にとって大きなメリットです。

繰越し・消滅の扱いの違い

年次有給休暇は労働基準法第115条により、付与日から2年間の時効が設定されています。つまり、当年度に使い切れなかった有給休暇は翌年度に繰り越すことができ、2年を経過すると消滅します。

リフレッシュ休暇の繰越しについては法律上の定めがないため、企業が独自にルールを設定します。「付与年度内に限り取得可能(繰越し不可)」とする企業もあれば、「付与日から2年以内に取得」とする企業もあります。制度の目的である「心身のリフレッシュ」を考えれば、取得期限をあまり長く設定しないほうが制度の形骸化を防ぎやすいでしょう。

比較表で整理するリフレッシュ休暇と有給休暇の7つの違い

比較項目年次有給休暇リフレッシュ休暇
法的根拠労働基準法第39条(法定)なし(法定外・任意)
付与義務あり(罰則あり)なし
付与条件6か月継続勤務+8割出勤企業が自由に設定
付与日数法定10〜20日企業が自由に設定(平均5.5日)
年5日取得義務あり(違反で30万円以下の罰金)カウント対象外
賃金支払い有給が義務有給・無給いずれも可
繰越し2年間の時効(翌年度繰越可)企業の定めによる

この比較表からわかるように、リフレッシュ休暇は年次有給休暇とは根本的に異なる制度です。両者を混同して運用すると法令違反やトラブルにつながるリスクがあるため、制度設計の段階で明確に区別することが求められます。

リフレッシュ休暇とサバティカル休暇の違い

リフレッシュ休暇としばしば混同される制度に「サバティカル休暇」があります。どちらも勤続年数に応じて付与される法定外休暇ですが、目的・期間・活用のされ方に明確な違いがあります。自社にどちらの制度が適しているかを判断するための比較ポイントを解説します。

サバティカル休暇の定義と特徴

サバティカル休暇とは、一定の勤続年数を重ねた従業員に対して企業が付与する長期休暇制度です。「サバティカル(sabbatical)」はラテン語の「sabbaticus(安息日)」に由来し、1880年にアメリカのハーバード大学で教員の研究休暇として導入されたのが起源とされています。

日本では2014年にヤフー株式会社が先駆的に導入したことで注目を集め、その後ソニーグループやリクルートなどの大企業でも採用が広がっています。ただし、リフレッシュ休暇と比較すると導入企業数はまだ限定的で、厚生労働省の就労条件総合調査でも「1週間以上の長期休暇制度」としてまとめられている状況です。

サバティカル休暇の最大の特徴は、使途が限定されないこと休暇期間が長いことにあります。留学、資格取得、ボランティア、長期旅行、家族との時間など、従業員が自らのキャリアや人生を見つめ直す機会として活用されます。休暇期間は1か月から1年程度が一般的で、企業によっては2年以上の取得を認めるケースもあります。

目的・期間・対象者の違いを比較

比較項目リフレッシュ休暇サバティカル休暇
主な目的心身の疲労回復・リフレッシュキャリアの再構築・自己成長・リスキリング
休暇期間数日〜2週間程度(平均5.5日)1か月〜1年以上
過ごし方基本的に自由(制限なし)自由だが、学びや自己投資を奨励する傾向
対象者勤続3〜5年以上(短い勤続でも対象の場合あり)勤続10年以上など長期勤続者が多い
給与の扱い有給が大半(95.9%が全額支給)無給または一部手当のみが多い
復帰後の報告原則不要レポート提出や報告会を求める企業あり
導入企業数全企業の14.7%(令和6年)限定的(統計上の明確な区分なし)
制度の性格慰労・福利厚生人材への投資・キャリア開発支援

両者を端的に表現すると、リフレッシュ休暇が「休む」ための制度であるのに対し、サバティカル休暇は「学ぶ・成長する」ための制度と言えます。もちろん実際の運用では両者の境界が曖昧なケースもあり、企業によってはリフレッシュ休暇という名称でサバティカル休暇に近い長期制度を運用している場合もあります。

自社に合うのはどちらか?選択の判断基準

どちらの制度を導入すべきかは、企業の経営課題や従業員のニーズによって異なります。以下のフレームワークで判断することをおすすめします。

リフレッシュ休暇が適している企業
– 離職防止・従業員の定着が最優先課題である
– 中小企業で長期間の欠員対応が難しい
– まずは短期間の特別休暇制度から始めたい
– メンタルヘルス対策や従業員満足度の向上を重視している

サバティカル休暇が適している企業
– イノベーションや新規事業の創出を重視している
– 従業員のリスキリング・キャリア自律を支援したい
– 人員の代替体制が比較的整っている大企業
– グローバルな人材獲得競争に勝ちたい

なお、両制度は排他的なものではなく、リフレッシュ休暇とサバティカル休暇の両方を導入している企業もあります。たとえば大和証券では、通常のリフレッシュ休暇5日間に加えて、勤続20年目・30年目に「勤続感謝休暇」として5日間を追加で付与するという二段構えの制度を運用しています。自社の状況に応じて、段階的に制度を拡充していくアプローチも有効です。

リフレッシュ休暇の導入状況【令和6年最新データ】

リフレッシュ休暇の導入率は長期的に見ると緩やかな上昇傾向にあります。ここでは、厚生労働省の最新統計と民間調査データをもとに、導入の現状と従業員側のニーズを定量的に確認します。

全企業の導入率推移(2013年〜2024年)

厚生労働省「就労条件総合調査」の経年データを見ると、リフレッシュ休暇の導入率は以下のように推移しています。

調査年導入率
平成25年(2013年)11.1%
平成30年(2018年)12.4%
平成31年(2019年)13.1%
令和2年(2020年)13.1%
令和3年(2021年)13.9%
令和4年(2022年)11.8%
令和5年(2023年)12.9%
令和6年(2024年)14.7%

(出典:厚生労働省「就労条件総合調査」各年版

2013年の11.1%から2024年の14.7%へ、約10年間で3.6ポイント上昇しています。年ごとに多少の増減はあるものの、中長期的には導入企業が着実に増えている傾向が読み取れます。特に令和6年の14.7%は過去最高値であり、コロナ禍後の働き方見直しを契機にリフレッシュ休暇を新たに導入する企業が増加していることがうかがえます。

企業規模別の導入率(1,000人以上 vs 中小企業)

リフレッシュ休暇の導入率は、企業規模によって大きな差があります。令和6年のデータは以下の通りです。

企業規模導入率
1,000人以上47.3%
300〜999人33.0%
100〜299人18.4%
30〜99人10.6%
全企業平均14.7%

(出典:厚生労働省「令和6年就労条件総合調査の概況」第7表

従業員1,000人以上の大企業では約半数が導入しているのに対し、30〜99人規模の企業では10.6%にとどまります。この格差は約4.5倍に達しており、中小企業にとってリフレッシュ休暇の導入ハードルが高いことを示しています。代替要員の確保が難しいこと、人事制度の整備にリソースを割きにくいことが主な要因と考えられます。

ただし、中小企業でも導入率は緩やかに上昇しており、人材獲得競争の激化を背景に今後さらに導入が進む見込みです。

特別休暇制度全体のなかでの位置づけ

リフレッシュ休暇は、特別休暇制度のなかでは夏季休暇・病気休暇に次ぐ3番目の導入率を占めています。令和6年のデータで他の特別休暇と比較すると、以下のようになっています。

特別休暇の種類令和6年導入率令和5年導入率増減
夏季休暇40.0%37.8%+2.2pt
病気休暇27.9%21.9%+6.0pt
リフレッシュ休暇14.7%12.9%+1.8pt
1週間以上の長期休暇13.8%14.2%△0.4pt
ボランティア休暇6.5%4.4%+2.1pt
教育訓練休暇5.0%3.4%+1.6pt

特別休暇制度全体の導入率も59.9%と前年の55.0%から大幅に上昇しており、企業全体として福利厚生の充実に力を入れている傾向が見て取れます。

従業員が最も求める福利厚生としてのリフレッシュ休暇

導入率は14.7%にとどまるリフレッシュ休暇ですが、従業員側のニーズは非常に高い水準にあります。

HIS(エイチ・アイ・エス)が2023年6月に実施した「福利厚生に関するアンケート調査」(有効回答982名)では、従業員が福利厚生に求めるものの第1位がリフレッシュ休暇という結果が出ています。さらに、家族が喜ぶ福利厚生のランキングでも第1位に選ばれており、性別・年代を問わず幅広い層からの支持が高いことがわかります。

(出典:HIS法人営業「福利厚生に関するアンケート調査」

また、エデンレッドジャパンの調査では、リフレッシュ休暇の利用経験がある人は19.0%に対し、未導入企業の従業員のうち34.8%が「導入してほしい」と回答しています。これは休暇系の福利厚生のなかで最も高い数値です。

(出典:エデンレッドジャパン「従業員が求める福利厚生ランキング」

つまり、リフレッシュ休暇は「企業の導入率」と「従業員のニーズ」の間に大きなギャップが存在する制度であり、導入すれば他社との差別化につながる可能性が高いと言えます。

「制度はあるのに使われない」取得率の実態

一方で、リフレッシュ休暇を導入していても実際に利用されていないケースが少なくないことも、データが示しています。

JILPT(労働政策研究・研修機構)が2017年に実施した大規模調査(企業12,000社・従業員約54,000人が対象)では、有給のリフレッシュ休暇制度がある企業の従業員555名のうち、過去1年間に制度を利用した人は28.6%にとどまり、71.4%が未利用という結果が出ています。

(出典:JILPT「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」(2020年)

制度があっても利用されない主な原因としては、「周囲に迷惑をかける」という遠慮、引継ぎ体制の未整備、上司や同僚からの暗黙のプレッシャーなどが挙げられます。この「制度倒れ」を防ぐための運用施策については、後述する「導入手順」のセクションで詳しく解説します。

リフレッシュ休暇を導入する企業側のメリット

リフレッシュ休暇の導入は、従業員だけでなく企業側にも多くのメリットをもたらします。ここでは、導入効果として特に重要な6つのポイントを取り上げます。

離職率の低下と人材定着

リフレッシュ休暇の最も直接的な効果のひとつが、離職防止です。

厚生労働省の「若年者雇用実態調査」(平成30年)によると、初めて勤務した会社を辞めた理由の第1位は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(30.3%)です。給与への不満(12.4%)を大幅に上回っており、若手従業員にとって休暇制度の充実度がいかに重要であるかがわかります。

(出典:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査」

リフレッシュ休暇を導入し、従業員が適切に休める環境を整えることは、こうした不満を解消し、人材の定着率を高める有効な手段です。JILPTの調査でも、福利厚生に対する満足度が高い従業員ほど「今の会社に勤め続けたい」と回答する割合が高いことが確認されています。

メンタルヘルス対策と健康経営への貢献

長時間労働や慢性的なストレスは、うつ病や適応障害といったメンタルヘルス不調の大きなリスク要因です。リフレッシュ休暇による数日間の完全な業務離脱は、日常のストレスをリセットする効果があり、メンタルヘルスケアの予防的施策として機能します。

特に長時間労働が常態化しがちな業界・職種では、通常の週末や有給休暇だけでは十分な回復が得られないケースが多くあります。リフレッシュ休暇で5日以上の連続休暇を取得することで、心身の深い回復が期待できます。

また、経済産業省が推進する「健康経営」の取り組みにおいて、従業員の休暇取得促進は重要な評価指標のひとつです。リフレッシュ休暇の導入と積極的な取得促進は、「健康経営優良法人認定」の取得にも寄与する可能性があります。

採用競争力の強化(特にZ世代の獲得)

近年の採用市場では、給与だけでなく福利厚生やワークライフバランスを重視する求職者が増えています。特にZ世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)の求職者は、働きやすさを企業選びの最重要基準のひとつとして位置づける傾向が顕著です。

マイナビの「2025年卒大学生活動実態調査」でも、学生が企業を選ぶ際に重視するポイントとして「休日・休暇の充実」が上位に挙がっています。リフレッシュ休暇は求人情報における差別化要素として機能し、特に競合他社が未導入であれば、大きなアドバンテージになります。

生産性・エンゲージメントの向上

直感に反するかもしれませんが、従業員に休暇を与えることはむしろ生産性の向上につながります。疲労が蓄積した状態で業務を続けると、判断力や創造性が低下し、ミスも増加します。リフレッシュ休暇で十分に休息を取った従業員は、復帰後に新鮮な視点で業務に取り組むことができ、仕事への意欲や集中力が回復します。

d’s JOURNAL(doda)が20代・30代の278名を対象に実施した調査では、特別休暇制度に対する満足度が77.3%(「満足」+「どちらかというと満足」)に達しています。休暇制度への満足がエンゲージメント全体の底上げにつながることを示唆するデータです。

(出典:d’s JOURNAL「福利厚生調査」

業務属人化の解消(引継ぎの仕組み化)

リフレッシュ休暇の導入には、意外な副次効果があります。従業員が数日間不在にする際には必ず業務の引継ぎが発生するため、属人化していた業務の棚卸しと可視化が自然に進むのです。

厚生労働省の「有給休暇ハンドブック」でも、休暇取得に伴う引継ぎのメリットとして、業務の非効率な部分のチェック、従業員の多能化促進、代替要員の能力測定、権限委譲の契機になる点が挙げられています。リフレッシュ休暇を「仕組みとして強制的に引継ぎが発生する機会」と捉えれば、組織全体のレジリエンス向上にもつながります。

人的資本経営における開示指標としての活用

2023年3月期以降、上場企業は有価証券報告書において「人的資本」に関する情報を開示することが義務化されました。従業員の働きやすさや人材投資の姿勢を示す指標として、リフレッシュ休暇の導入率・取得率を開示する企業が増えつつあります。

ESG投資の観点からも、従業員のウェルビーイングに配慮した制度を持つ企業は投資家からの評価が高まる傾向にあります。リフレッシュ休暇は単なる福利厚生にとどまらず、企業の「人的資本経営」の取り組みを対外的に示す有効なツールとしても機能するのです。

リフレッシュ休暇を導入する企業側のデメリットと対策

リフレッシュ休暇の導入にはメリットが多い一方で、無視できないデメリットや課題も存在します。ここでは代表的な4つの課題と、それぞれの具体的な対策を解説します。

制度の形骸化(取得率が上がらない)

最も深刻なデメリットは「制度は作ったが使われない」という形骸化の問題です。前述のJILPT調査でも71.4%が未利用という実態が示されており、制度の導入だけでは不十分なことは明らかです。

形骸化の原因は主に以下の3つに集約されます。

  1. 心理的障壁:「周囲に迷惑をかける」「休むと評価が下がるのでは」という遠慮や不安
  2. 制度の認知不足:制度の存在自体を知らない、または取得条件を正確に理解していない
  3. 上司の非協力:管理職自身が取得しないため、部下も取得しにくい雰囲気が生まれる

対策:管理職が率先してリフレッシュ休暇を取得する「上司率先取得」が最も効果的です。ウシオ電機では、人事部から対象者本人とその上司の双方にメール通知を行い、半期経過しても未取得の場合は再通知するという仕組みを設けた結果、取得率は毎年9割を超えています。

引継ぎ・代替要員の確保負担

リフレッシュ休暇で従業員が数日間不在になるため、その間の業務をカバーする引継ぎ体制を構築する必要があります。特に少人数の部署や専門性の高い業務では、代替が難しいケースが生じます。

対策:日常的な業務マニュアルの整備とクロストレーニング(多能工化)が鍵になります。リフレッシュ休暇の取得時期を年度初めに計画的に決定し、十分な準備期間を設けることで、急な不在による混乱を防げます。特定医療法人財団五省会では、年度初めに部署ごとの取得計画表を作成する方式を採用し、2013年度以降の取得率をほぼ100%に維持しています。

コスト負担(特に中小企業の場合)

リフレッシュ休暇を有給で付与する場合、休暇中の人件費はそのまま発生します。さらに慰労金や旅行券を支給する企業では、追加のコスト負担も生じます。大企業であれば吸収しやすい費用でも、中小企業にとっては大きな負担になる可能性があります。

対策:まずは少ない日数(たとえば勤続10年目に3日間)からスモールスタートし、制度の効果を確認しながら段階的に拡充する方法が現実的です。慰労金を伴わない「休暇のみ」の制度であれば、追加コストは既存の人件費の範囲内に収まります。また、リフレッシュ休暇による離職防止効果を考慮すれば、採用・教育コストの削減効果のほうが上回るケースも少なくありません。

取得者と非取得者間の不公平感

勤続年数を基準にする制度では、入社間もない従業員やパートタイム労働者が対象外となるケースが多く、従業員間の不公平感を生む可能性があります。

対策:対象者の範囲と基準を明確に就業規則に定め、透明性を確保することが重要です。また、2021年4月に中小企業にも適用されたパートタイム・有期雇用労働法(同一労働同一賃金)を踏まえ、正社員と同等の職務内容のパート・有期社員を合理的な理由なく対象外とすることは避けるべきです。制度設計の段階で、雇用形態による不合理な差別が生じないよう配慮が求められます。

各デメリットへの具体的な対策まとめ

デメリット主な対策参考事例
制度の形骸化上司率先取得・人事部からの通知・取得状況の可視化ウシオ電機(取得率9割超)
引継ぎ負担業務マニュアル整備・年度初めの計画策定・クロストレーニング五省会(取得率ほぼ100%)
コスト負担スモールスタート・段階的拡充・離職防止効果との比較
不公平感対象基準の明確化・同一労働同一賃金への配慮

リフレッシュ休暇のメリット・デメリット【従業員側】

ここまで企業側の視点を中心に解説してきましたが、リフレッシュ休暇は従業員にとっても大きな影響がある制度です。従業員側のメリットとデメリット、そしてリフレッシュ休暇の過ごし方についてまとめます。

従業員にとってのメリット5選

  1. 心身の疲労回復
    最も直接的な恩恵です。数日間にわたって業務から完全に離れることで、日々の仕事で蓄積されたストレスや身体的な疲労をリセットできます。週末だけでは十分に回復できない慢性的な疲労の解消に特に効果的です。
  2. ワークライフバランスの向上
    リフレッシュ休暇は、家族や友人との時間を充実させるための貴重な機会です。普段は忙しくてできなかった旅行や趣味の活動、家族との団らんにまとまった時間を充てることができます。
  3. キャリアの振り返りと再構築
    日常業務に追われていると、自分のキャリアや働き方を客観的に見つめ直す余裕がなくなりがちです。リフレッシュ休暇は、今後のキャリアプランを考えたり、自己啓発に取り組んだりする機会としても活用できます。
  4. 仕事へのモチベーション回復
    十分に休息を取った後は、仕事に対する新鮮な気持ちが戻ってきます。「また頑張ろう」という前向きな意欲が生まれ、復帰後の生産性や創造性が向上するケースが多く報告されています。
  5. 長期勤続に対する報われる感覚
    リフレッシュ休暇が勤続年数に応じて付与される場合、「長く働いてきたことが報われた」という満足感を得られます。特に慰労金や支援金が併せて支給される場合は、企業からの感謝のメッセージとして受け止められ、帰属意識の向上にもつながります。

従業員にとってのデメリットと不安

一方で、従業員側にも不安やデメリットが存在します。

休暇前後の業務負担増:休暇前に引継ぎの準備が必要になるほか、休暇後にたまった業務をこなすために一時的に負荷が高まることがあります。「休んだ分だけ後が大変」という心理が取得をためらわせる原因になります。

周囲への遠慮:日本の職場文化においては、長期休暇を取ることへの心理的ハードルが依然として高い傾向があります。「自分だけ休んでいいのか」「同僚に負担をかけるのでは」という遠慮が生じやすく、制度があっても取得しにくいと感じる従業員は少なくありません。

評価への影響不安:リフレッシュ休暇の取得が人事評価にマイナスの影響を与えるのではないかという懸念も、取得率が上がらない一因です。企業側は「リフレッシュ休暇の取得は評価に影響しない」という方針を明確に打ち出し、全社的に周知することが重要です。

リフレッシュ休暇のおすすめの過ごし方

リフレッシュ休暇の過ごし方は基本的に自由ですが、せっかくのまとまった休暇をより充実させるためのアイデアをいくつか紹介します。

  • 国内・海外旅行:普段の週末では行けない遠方への旅行が可能になります。土日と組み合わせれば5日間のリフレッシュ休暇で最大9日間の旅行も実現できます
  • 家族との時間:子どもの学校行事への参加や、高齢の親への帰省など、家族との絆を深める時間に充てるのも有意義です
  • 自己啓発・資格取得:集中的に勉強時間を確保して、業務に関連する資格取得や新しいスキルの習得に取り組むことも可能です
  • 健康増進:健康診断や人間ドック、歯科治療など、後回しにしがちな健康管理に時間を使うのも賢い活用法です
  • 趣味の没頭:読書、スポーツ、アウトドア活動、創作活動など、普段は十分に時間を割けない趣味に没頭してリフレッシュを図りましょう
  • 完全な休息:何も予定を入れず、ただゆっくりと過ごすことも立派なリフレッシュです。慢性的な睡眠不足を解消し、心身を根本から回復させましょう

リフレッシュ休暇の導入手順【実務ガイド】

リフレッシュ休暇の導入を決めたら、どのようなステップで進めればよいのでしょうか。人事担当者が実際に制度を立ち上げるための具体的な手順を、5つのステップで解説します。

ステップ1:目的の明確化と経営層の合意形成

まず、リフレッシュ休暇を導入する目的を明確にします。「離職率の改善」「メンタルヘルス対策」「採用競争力の強化」「従業員満足度の向上」など、自社が抱える課題のうちリフレッシュ休暇で解決できるものを具体的に定義しましょう。

目的が明確になったら、経営層に対して導入の提案を行います。その際には、競合他社の導入状況、厚生労働省の統計データ(導入率14.7%、従業員ニーズ調査の結果など)、期待される効果(離職防止による採用コスト削減など)を具体的な数字で示すと、承認を得やすくなります。

ステップ2:制度設計(対象者・日数・条件の決定)

経営層の合意が得られたら、制度の具体的な内容を設計します。決定すべき項目は以下の通りです。

  • 対象者:全正社員か、一定の勤続年数以上の社員か。パート・有期社員を含めるか
  • 付与条件:勤続何年目から対象とするか。年齢基準を設けるか
  • 付与日数:勤続年数に応じて何日間付与するか(平均5.5日を参考に)
  • 取得方法:連続取得必須か、分割取得も可か
  • 有給/無給:賃金を全額支給するか(95.9%の企業が全額支給)
  • 有効期間:付与日からいつまでに取得しなければならないか
  • 慰労金の有無:休暇に加えて金銭的なインセンティブを付けるか

制度設計にあたっては、自社の従業員構成や業務特性を十分に考慮することが大切です。同業他社のベンチマークも参考にしつつ、自社にとって無理のない範囲から始めることを推奨します。

ステップ3:就業規則の改定と届出

リフレッシュ休暇の導入を決定したら、就業規則への記載が必須です。労働基準法第89条第1号により、「休暇」に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項に該当するため、記載なしに制度を運用することはできません。

就業規則の改定にあたっては、労働者の過半数を代表する者(労働組合がある場合はその組合)の意見書を添付のうえ、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第90条)。

ステップ4:社内周知と管理職への説明

就業規則の改定が完了したら、全社に向けた制度の周知を徹底します。社内ポータルサイトへの掲載、全体会議での説明、リーフレットの配布など、複数のチャネルを使って繰り返し伝えることが重要です。

特に重要なのが管理職への事前説明です。管理職がリフレッシュ休暇に対して消極的だと、部下が取得をためらう直接的な原因になります。管理職に対しては、制度の目的と意義、部下の取得を促す責任、管理職自身が率先して取得すべきであることを丁寧に説明しましょう。

ステップ5:運用開始と取得促進施策の実施

制度のスタート後は、取得率をモニタリングしながら取得促進施策を継続的に実施します。効果的な施策の例は以下の通りです。

  • 人事部からの個別通知:対象者に取得権利の発生をメールや文書で個別に通知する。ウシオ電機のように本人と上司の双方に通知する方式が特に効果的
  • 年度初めの取得計画策定:年度初めに取得予定時期を申告してもらい、部署ごとに調整のうえ計画表を作成する
  • 取得状況の可視化:部署ごとの取得率を定期的に集計し、経営会議で報告する。数字で見える化することで管理職の意識が変わる
  • 取得者の体験共有:社内報やイントラネットでリフレッシュ休暇の過ごし方を共有してもらい、取得へのハードルを下げる

就業規則の記載例(モデル規程テンプレート)

リフレッシュ休暇を就業規則に規定する際のモデル条文を以下に示します。自社の制度設計に合わせて適宜修正してください。

(リフレッシュ休暇)
第○条 会社は、従業員の心身の疲労回復および勤労意欲の向上を目的として、
次の各号に定める勤続年数に達した従業員に対し、リフレッシュ休暇を付与する。

(1)勤続満10年 5日間
(2)勤続満20年 7日間
(3)勤続満30年 10日間

2 リフレッシュ休暇は有給とし、通常の賃金を支給する。
3 リフレッシュ休暇は、権利発生日から1年以内に連続して取得しなければならない。
   ただし、業務上やむを得ない事由がある場合は、所属長の承認を得て分割取得する
   ことができる。
4 リフレッシュ休暇は、年次有給休暇とは別枠の休暇であり、年次有給休暇の年5日
   取得義務の日数には算入しない。
5 前項の休暇は、翌年度への繰越しを認めない。
6 取得にあたっては、所定の申請書を2か月前までに所属長に提出し、承認を得る
   ものとする。
7 リフレッシュ休暇の取得を理由として、人事評価上不利な取扱いを行わないものとする。

リフレッシュ休暇の税務処理と法的注意点

リフレッシュ休暇の制度運用にあたっては、税務処理と法的リスクについても正確に理解しておく必要があります。ここでは実務上つまずきやすい4つのポイントを解説します。

休暇手当・慰労金の課税ルール

リフレッシュ休暇に伴い従業員に支給する慰労金・一時金は、原則として給与所得として課税対象になります。源泉徴収を行い、社会保険料の算定基礎にも含める必要があります。

たとえば、勤続20年の節目に「リフレッシュ休暇手当」として10万円を支給する場合、これは給与として処理し、所得税・住民税の源泉徴収を行います。

旅行券・ギフト券を支給する場合の非課税要件

リフレッシュ休暇の一環として旅行券やギフト券を支給するケースがあります。国税庁の取扱いでは、創業記念などに際して支給する記念品(旅行券等を含む)は、一定の要件を満たせば非課税(福利厚生費)として扱える場合があります。

ただし、リフレッシュ休暇に伴う旅行券は「永年勤続表彰」に該当するかどうかで扱いが変わります。永年勤続表彰として旅行券を支給する場合、おおむね以下の要件を満たせば非課税となるケースがあります。

  • 勤続10年以上の従業員が対象であること
  • 同一人への表彰が2回以上行われる場合は、前回の表彰からおおむね5年以上の間隔があること
  • 社会通念上相当な金額であること
  • 旅行券の場合は、支給後1年以内に実際に旅行に使用し、かつその使用状況を報告させていること

上記はあくまで一般的な考え方であり、実際の税務処理は個別の事情によって異なります。旅行券や高額の慰労金を支給する場合は、事前に税理士や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

制度を廃止・変更する際の不利益変更リスク

いったん就業規則に規定したリフレッシュ休暇を廃止または縮小する場合、労働契約法第9条・第10条に基づく「就業規則の不利益変更」の問題が生じます。

原則として、従業員にとって不利益となる就業規則の変更は、労働者の合意なしに行うことはできません(労働契約法第9条)。例外的に、変更の合理性(変更の必要性、従業員が受ける不利益の程度、代替措置の有無など)が認められる場合に限り、合意なしの変更が許容されます(同第10条)。

したがって、リフレッシュ休暇の導入にあたっては、将来的な制度変更の可能性も視野に入れた設計が重要です。具体的には、就業規則の条文に「会社は、経営状況その他の事情の変化に応じて本制度の内容を見直すことがある」といった見直し条項を設けておくことが実務上の一般的な対応策です。

パート・有期社員への適用と同一労働同一賃金

2021年4月から中小企業にも全面適用されたパートタイム・有期雇用労働法(同一労働同一賃金の原則)により、正社員と同一の職務内容・配置変更の範囲にあるパート・有期社員を、合理的な理由なくリフレッシュ休暇の対象外とすることは、不合理な待遇差として問題視される可能性があります。

制度設計の段階で、パート・有期社員への適用範囲をどうするかを検討し、合理的な説明ができる基準を設けておくことが必要です。たとえば「勤続年数が同じであれば、雇用形態にかかわらず同一の日数を付与する」というルールであれば、不合理な差別には該当しにくくなります。

リフレッシュ休暇の効果測定とKPI設計

リフレッシュ休暇を導入したら、その効果を定量的に把握し、制度の改善に活かすことが重要です。しかし、競合記事を調査しても効果測定の具体的手法に言及した記事はほぼ皆無です。ここでは、人事担当者が実務で使える効果測定のフレームワークを提案します。

取得率だけでは不十分な理由

リフレッシュ休暇の効果を測る際に、多くの企業が「取得率」だけをKPIとしています。しかし、取得率はあくまで「制度が利用されているか」を示す指標であり、「制度が目的を達成しているか」を示すものではありません。

取得率が90%を超えていても、取得後の離職が減っていなければ制度の目的を果たしているとは言えません。逆に、取得率は50%程度でも、取得者の離職率が未取得者より大幅に低ければ、制度は一定の効果を発揮していると評価できます。

測定すべき4つの指標(離職率・エンゲージメント・生産性・採用力)

リフレッシュ休暇の効果を総合的に評価するために、以下の4つの指標を設定することをおすすめします。

1. 離職率の変化
リフレッシュ休暇取得者と未取得者の離職率を比較します。さらに、制度導入前後での全社的な離職率の推移も追跡しましょう。定着率の向上は、リフレッシュ休暇の最も重要な成果指標です。

2. エンゲージメントスコア
従業員エンゲージメント調査(パルスサーベイ等)を定期的に実施している企業であれば、リフレッシュ休暇取得前後のスコア変化を測定できます。特に「仕事への意欲」「会社への帰属意識」「ストレスレベル」に関する項目に注目しましょう。

3. 生産性指標
リフレッシュ休暇取得後の一定期間(たとえば3か月間)における業務パフォーマンスを、休暇前と比較します。営業職であれば商談数や受注率、開発職であればタスク完了率やコードの品質指標など、職種に応じた指標を設定します。

4. 採用力指標
求人における応募数の変化、内定承諾率の推移、面接時にリフレッシュ休暇に対する質問や好反応があったかどうかなどを追跡します。リフレッシュ休暇が採用競争力に寄与しているかを間接的に測定できます。

効果測定の実施タイミングと方法

効果測定は一度行えばよいものではなく、定期的に実施して傾向を把握することが重要です。

  • 四半期ごと:取得率の集計、部署別の取得状況の確認
  • 半年ごと:エンゲージメント調査との連動分析、離職率の比較
  • 年度ごと:年間の総合評価、次年度の制度改善案の策定

データ収集にあたっては、勤怠管理システムのデータ、エンゲージメントサーベイの結果、人事データベースの離職情報を連携させることで、より精緻な分析が可能になります。

経営層への報告レポートの作り方

効果測定の結果を経営層に報告する際は、以下の構成で簡潔にまとめると効果的です。

  1. 要約:制度の取得率と主要KPIの結果を1〜2文で
  2. データ:取得率推移、離職率比較、エンゲージメントスコア変化をグラフで提示
  3. コスト対効果:休暇取得に伴うコスト vs 離職防止による採用・教育コスト削減効果の比較
  4. 改善提案:取得率が低い部署への対策、制度拡充の提案など

数字で語ることを心がければ、経営層の理解と支持を得やすくなります。

リフレッシュ休暇の導入企業事例7選

リフレッシュ休暇を効果的に運用している企業の具体的な事例を紹介します。制度設計の参考にしてください。

ノバレーゼ:勤続3年ごと30日間の長期休暇

ウェディング事業を手がける株式会社ノバレーゼでは、創業時からリフレッシュ休暇制度を導入しています。3年ごとに1回、スタッフがリフレッシュするために利用できる30日間の有給休暇を付与するという、業界でも最長級の制度です。育児や介護などの特定理由に限定せず、自由な取得が可能であることも特徴的です。

「仕事と休みのメリハリをつけてほしい」という企業姿勢を明確に示す制度であり、従業員の高いモチベーションと定着率に寄与しています。

(参考:株式会社ノバレーゼ 企業理念・文化

アサヒビール:年1回6日以上の連続休暇

アサヒビール株式会社では、1989年からリフレッシュ休暇制度を運用しています。年度初めに連続6日以上の長期休暇の取得時期を申請し、部署内で調整して計画表を作成する方式を採用。リフレッシュ休暇は同僚からの理解を得やすい仕組みになっており、現在では6〜7割の従業員がリフレッシュ休暇を含む特別休暇を利用しています。

(参考:厚生労働省 働き方・休み方ポータルサイト アサヒビール株式会社

ウシオ電機:人事部通知で取得率9割超

ウシオ電機株式会社のリフレッシュ休暇制度は、取得率の高さで知られています。その秘訣は、人事部から対象者本人とその上司の双方にメール通知を行い、半期が経過しても未取得の場合は再通知を送るという「プッシュ型」の運用方式にあります。この仕組みにより、毎年の取得率は9割以上を維持しています。

「通知→確認→再通知」というシンプルなサイクルですが、上司にも通知が届くため「部下に休暇を取らせなければ」という意識が自然に醸成される効果があります。

ベネッセ:勤続年数に応じた支援金付き

株式会社ベネッセコーポレーションでは、勤続年数に応じた段階的なリフレッシュ休暇制度を設けています。勤続10年目には3日間の休暇と3万円の支援金、20年目には5日間の休暇と15万円の支援金が付与されます。

金銭的なインセンティブを組み合わせることで、制度の利用率を高めるとともに、長期勤続者への感謝の気持ちを具体的に表現する仕組みになっています。

ルピナ中部工業:10日連続取得を義務化

愛知県の製造業であるルピナ中部工業株式会社は、最大10日間の連続取得を義務化した「ガンバレ休暇」を設けています。「よく遊び、よく遊べ」という社是のもと、リフレッシュを「権利」ではなく「義務」として位置づけることで、取得へのためらいを制度的に排除しています。

義務化することで「休みを取りたいけれど言い出しにくい」という心理的障壁がなくなり、管理職も含めた全社的な取得促進が実現しています。

大和証券:リフレッシュ休暇+勤続感謝休暇の二段構え

大和証券グループでは、通常のリフレッシュ休暇5日間に加えて、勤続20年目と30年目にそれぞれ5日間の「勤続感謝休暇」を付与するという二段構えの制度を運用しています。

同社はなでしこ銘柄(女性活躍推進に優れた上場企業)にも選定されており、多様な人材が長く働ける環境整備の一環としてリフレッシュ休暇を位置づけています。

中小企業の導入事例:表彰制度との組み合わせで100%消化

中小企業の導入事例として注目すべきは、永年勤続表彰制度とリフレッシュ休暇を組み合わせた方式です。勤続の節目に表彰状と記念品を贈呈する表彰式の中でリフレッシュ休暇の付与を正式に行い、全社員の前で祝うことで「休暇を取得することが誇らしいこと」という組織文化を醸成しています。

この方式を採用した企業では、100%の消化率を実現したケースも報告されています。大規模な制度改革が難しい中小企業にとって、既存の表彰制度と紐づけることで導入コストを抑えつつ高い取得率を達成できる好事例です。

よくある質問(FAQ)

リフレッシュ休暇は法律上の義務ですか?

いいえ、リフレッシュ休暇は法律で義務づけられた制度ではありません。労働基準法に根拠を持たない「法定外休暇(特別休暇)」に分類され、導入するかどうかは企業の判断に委ねられています。ただし、いったん就業規則に規定すれば労働条件の一部となり、企業は規定通りに付与する義務を負います。

リフレッシュ休暇の日数に決まりはありますか?

法律上の定めはなく、企業が自由に設定できます。厚生労働省の調査によると、1企業あたり1回の最高付与日数の平均は5.5日です。多くの企業では勤続年数に応じて3〜10日程度を設定しており、30年の節目には30日間を付与するケースもあります。

有給休暇の年5日取得義務にリフレッシュ休暇は含まれますか?

含まれません。2019年4月施行の改正労働基準法で義務化された年5日の有給休暇取得義務は、年次有給休暇のみを対象としており、リフレッシュ休暇は別枠の扱いです。リフレッシュ休暇を5日間取得しても、年次有給休暇の5日取得義務は別途満たす必要があります。

リフレッシュ休暇中の給料は支払われますか?

法律上の定めはありませんが、厚生労働省の調査では95.9%の企業がリフレッシュ休暇中の賃金を全額支給しています。一部支給が1.3%、無給が2.8%です。従業員にとっての利用しやすさを考えると、有給での運用が一般的かつ推奨されます。

リフレッシュ休暇を取得できない場合はどうすればいいですか?

リフレッシュ休暇は法定休暇ではないため、年次有給休暇のような法的な取得権が保障されているわけではありません。ただし、就業規則に規定されている以上、正当な理由なく取得を拒否されることは問題です。まずは上司や人事部門に相談し、取得時期の調整を試みましょう。社内で解決が難しい場合は、労働基準監督署や社外の労働相談窓口に相談する選択肢もあります。

リフレッシュ休暇を廃止することはできますか?

法的には可能ですが、就業規則の不利益変更に該当するため、慎重な対応が必要です。労働契約法第9条により、原則として労働者の合意が必要であり、合意なく変更する場合は同法第10条の「合理性」の要件を満たす必要があります。廃止を検討する場合は、代替措置の提供や十分な経過措置期間の設定を行い、労働者との十分な協議を経ることが求められます。社会保険労務士や弁護士への事前相談を強く推奨します。

まとめ:リフレッシュ休暇を「制度倒れ」にしないために

本記事では、リフレッシュ休暇の定義から導入手順、効果測定、企業事例まで、制度設計に必要な情報を網羅的に解説しました。最後に、リフレッシュ休暇を実効性ある制度として機能させるための3つの要点を整理します。

第一に、「作って終わり」にしないことです。リフレッシュ休暇は就業規則に記載して制度化するだけでは不十分です。JILPT調査が示すように、制度があっても71.4%が未利用という実態を踏まえ、取得を促すための運用施策(上司率先取得、人事部からの通知、取得計画の策定など)を併せて実施することが成功の鍵です。

第二に、データに基づいて制度を進化させることです。取得率だけでなく、離職率・エンゲージメントスコア・生産性指標・採用力への影響という4つのKPIを設定し、定期的に効果を測定しましょう。数字で効果を示すことで、経営層の継続的な支持も得やすくなります。

第三に、自社の規模と課題に合った制度設計を行うことです。大企業のような充実した制度を最初から目指す必要はありません。勤続10年目に3日間のリフレッシュ休暇を設けるだけでも、従業員にとっては大きなモチベーションになります。スモールスタートで始めて効果を実感したら段階的に拡充していく、という現実的なアプローチが多くの企業にとって最適解です。

令和6年のデータが示す導入率14.7%という数字は、裏を返せば85%以上の企業がまだ導入していないということです。いま導入に踏み切れば、従業員のニーズに応えると同時に、人材獲得競争においても他社に先んじることができます。本記事の情報を参考に、自社にとって最適なリフレッシュ休暇制度の設計に取り組んでいただければ幸いです。

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この記事を書いた人

労務問題の課題解決メディア『ROUMU2.0』の企画編集部。企業法務弁護士ナビやBackOfficeDBなど、労務問題の解決手段を提供している。

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