MENU

【2026年税制改正対応】給与所得の計算方法とは?すぐにわかるシミュレーション計算機付き

給与所得_計算方法

給与所得の計算は、経理・人事担当者にとって年末調整や源泉徴収の基盤となる最重要業務のひとつです。しかし、給与所得控除の速算表を当てはめるだけでは正確な実務は回りません。

2025年には給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円へ引き上げられ、2026年にはさらに74万円への改正が国会で審議されています。加えて、基礎控除の大幅な拡充により、課税最低限は103万円から最大178万円へと段階的に変わろうとしています。

本記事では、給与所得の基本的な計算ステップから、年収別・家族構成別のシミュレーション、2025年・2026年の税制改正が実務に与える影響、年末調整・確定申告との連携。

さらには住民税や社会保険料まで含めた「手取り」の全体像を、経理・人事担当者が実務で使える精度で解説します。

この記事の3行まとめ
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除。収入帯別の速算表と計算ステップを図解つきで解説
  • 2025年改正(控除65万円・課税最低限160万円)と2026年改正案(控除74万円・課税最低限178万円)の実務影響を完全網羅
  • 年末調整チェックリスト、中途入社・退職者の処理手順、よくあるミスと対処法まで実務者向けに徹底解説
目次

給与所得とは?給与収入・手取りとの違いを正しく理解する

「給与所得」は、毎月の給与明細や源泉徴収票の裏側で行われている税金計算の出発点となる数字です。ここでは、似て非なる「給与収入」「給与所得」「手取り」の3つの違いを明確にし、その後の計算フローをスムーズに理解するための土台を固めます。

給与所得の定義と法的根拠(所得税法第28条)

給与所得とは、会社から受け取る給料・賞与などの収入(給与収入)から、「給与所得控除」と呼ばれる概算経費を差し引いた金額のことです。計算式で表すと、次のようになります。

給与所得 = 給与等の収入金額 - 給与所得控除額

この仕組みは、所得税法第28条に定められています。自営業者が売上から必要経費を差し引いて事業所得を算出するのと同じ発想で、給与所得者(サラリーマンやパート・アルバイト)の場合は個別に経費を集計する代わりに、収入金額に応じた一定額を自動的に差し引く仕組みが採用されています。

ここでいう「給与等」とは、基本給だけでなく、残業手当、役職手当、家族手当、住宅手当、賞与(ボーナス)など、雇用契約に基づいて雇い主から受け取るあらゆる金銭が含まれます。ただし、一定の非課税項目(通勤手当の一定額以下の部分など)は除外されます。

「給与収入」「給与所得」「手取り」3つの違いを図解で整理

給与に関する「収入」「所得」「手取り」という3つの言葉は、日常的に混同されがちですが、税務上はまったく異なる概念です。全体の流れを把握すると、それぞれの位置づけが明確になります。

【給与収入(額面)】
   ↓ 給与所得控除を差し引く
【給与所得】
   ↓ 所得控除(基礎控除・配偶者控除・社会保険料控除など)を差し引く
【課税所得】
   ↓ 所得税率を適用(超過累進税率5%〜45%)
【所得税額】
   ↓ 税額控除(住宅ローン控除など)を差し引く
【最終的な所得税の納税額】

このフローのうち、最初の「給与収入」は源泉徴収票の「支払金額」欄に記載される金額で、いわゆる「額面の年収」に相当します。そこから給与所得控除を差し引いた「給与所得」は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に該当します。

一方、「手取り」は税法上の用語ではなく、給与収入から社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)、所得税、住民税をすべて差し引いた後に実際に銀行口座に振り込まれる金額を指す日常用語です。つまり、手取り額を正確に把握するには、税金だけでなく社会保険料の計算も必要になるということです。

給与所得に含まれるもの・含まれないもの

経理担当者が給与所得を正しく計算するうえで、どの収入が課税対象に含まれ、どの収入が非課税になるかの判定は重要な実務ポイントです。

  • 課税対象(給与収入に含まれるもの)
    基本給、残業手当・休日出勤手当、役職手当・資格手当、家族手当・住宅手当、賞与(ボーナス)、通勤手当のうち月15万円を超える部分、現物給与(社宅の経済的利益など)が挙げられます。
  • 非課税となるもの(給与収入に含めないもの)
    通勤手当のうち月15万円以内の部分、出張旅費・日当(通常必要と認められる金額)、在宅勤務手当のうち実費精算に該当するものがあります。

近年よく質問が出るのが、テレワーク関連の手当です。国税庁のFAQでは、在宅勤務手当が「実費精算」の形で支給される場合は非課税、毎月一律の定額で支給される場合は給与として課税対象になるとされています

たとえば、通信費や電気代の実費を従業員が申請し、会社が精算する方式であれば非課税となりますが、「在宅勤務手当として月5,000円」のように固定額で支給する場合は課税されます。

また、税制適格ストックオプションの権利行使益は給与所得として課税されませんが、税制非適格のストックオプションは権利行使時に給与所得として課税されます。社宅については、従業員が一定額以上の家賃を会社に支払っていれば課税されませんが、無償または著しく低い家賃の場合は、経済的利益が給与所得に加算されます。

給与所得と他の所得区分(事業所得・雑所得)の違い

副業を持つ従業員が増えている昨今、給与所得と他の所得区分の違いを把握しておくことは、経理担当者にとっても重要です。

給与所得は「雇用契約」に基づいて受け取る報酬に対して適用される所得区分です。一方、副業で得た収入が「業務委託契約」に基づく場合は、原則として雑所得(または一定の規模・継続性があれば事業所得)に分類されます。

実務上のポイントとして覚えておきたいのは、副業先から「給与」として支払われる場合は、たとえ副業であっても給与所得になるという点です。この場合、主たる勤務先では「従たる給与」として年末調整の対象外となり、本人が確定申告を行う必要があります。

個人事業主(フリーランス)との違いも押さえておきましょう。個人事業主は「売上 − 必要経費 = 事業所得」という計算式で、実際にかかった経費を一つひとつ帳簿につけて計上します。

一方、給与所得者は個別の経費申告が原則不要で、収入金額に応じた給与所得控除が自動的に適用されます。この仕組みのおかげで、給与所得者の多くは年末調整だけで所得税の精算が完了するのです。

【令和7年分対応】給与所得の計算機シミュレーション

年間の給与収入(額面)を入力すると、給与所得控除額・給与所得金額・所得税・住民税・手取りの概算を自動計算します。

給与所得控除額
給与所得金額
所得税
税率 %
住民税
一律 10%
社会保険料
手取り(税引後)概算
手取り率 %
内訳グラフ
給与等の収入金額控除額
ご注意
本ツールは令和7年分(2025年分)の税制改正を反映した概算計算です。社会保険料は協会けんぽ東京支部の料率で概算しています。配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除等は含まれていません。正確な税額の算出には年末調整または確定申告が必要です。660万円未満の給与所得は速算表による概算のため、所得税法別表第五の金額と若干の差が生じる場合があります。
年収を入力すると計算結果が表示されます

給与所得控除とは?控除額の計算方法と速算表【2026年対応】

給与所得控除は、給与所得者にとっての「みなし経費」にあたる制度です。サラリーマンやパート・アルバイトの方は、仕事のためにスーツを買ったり、自己研鑽のための書籍を購入したりと、さまざまな支出がありますが、これらをいちいち確定申告するのは現実的ではありません。

そこで、収入金額に応じた一定額を自動的に差し引く「給与所得控除」の仕組みが設けられています。

給与所得控除の仕組みと趣旨

給与所得控除が設けられている理由は、主に2つあります。

  1. 1:給与所得者の必要経費の概算控除としての役割
    自営業者が事業所得を計算する際に実額の必要経費を差し引くのと同様に、給与所得者にも経費相当額を認めるという考え方に基づいています。
  2. 2:給与所得の捕捉率が他の所得区分より高いことに対する調整機能
    給与は源泉徴収制度によってほぼ完全に把握されるのに対し、事業所得や不動産所得は申告に依存する部分が大きいため、この捕捉率の差を補うという政策的な意味合いも含まれています。

給与所得控除は確定申告や年末調整で「自分で申告する」必要はありません。給与等の収入金額が確定すれば、速算表に当てはめるだけで自動的に控除額が決まる仕組みです。

【2025年(令和7年)】給与所得控除額の速算表

令和7年度税制改正(2025年3月成立)により、給与所得控除額の速算表が改定されました。最大の変更点は、最低保障額が55万円から 65万円 に10万円引き上げられたことです。この改正は令和7年分(2025年分)の所得から適用され、同年12月の年末調整で精算されます。

令和7年分以降の給与所得控除額の速算表

給与等の収入金額給与所得控除額
190万円以下65万円(最低保障額)
190万1円 ~ 360万円収入金額 × 30% + 8万円
360万1円 ~ 660万円収入金額 × 20% + 44万円
660万1円 ~ 850万円収入金額 × 10% + 110万円
850万1円以上195万円(上限額)

(出典:国税庁 No.1410「給与所得控除」

改正前(令和2年分~令和6年分)の速算表と比較すると、大きな構造変化があります。従来は第1段階(162.5万円以下=55万円)と第2段階(162.5万~180万円=40%−10万円)の2段階に分かれていた低収入帯が、改正後は「190万円以下=65万円」の1段階に統合・簡素化されました。190万円を超える層については、従来と同じ計算式がそのまま適用されます。

また、給与等の収入金額が660万円未満の場合は、実務上はこの速算表ではなく「所得税法別表第五」(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)を用いて給与所得の金額を求めます。速算表の結果と若干の差が生じることがありますが、これは端数処理の違いによるもので、年末調整ソフトや給与計算ソフトは自動的に別表第五を適用します。

なお、上限額の195万円(年収850万円超で頭打ち)については、今回の改正でも変更されていません。この上限額は、平成29年度税制改正で段階的に引き下げられてきた経緯があり、高所得者層の税負担を適正化する趣旨が反映されています。

【2026年(令和8年)改正案】給与所得控除額の速算表(国会審議中)

2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱を受けて、2026年2月に改正法案が国会に提出されています。2026年3月時点では審議中であり、成立前のため最終的な法律内容が変更される可能性がある点にご留意ください。

改正案の骨子は、給与所得控除の最低保障額をさらに引き上げるもので、具体的には次のとおりです。

令和8年分(2026年分)の給与所得控除額(改正案)

給与等の収入金額給与所得控除額
199万円以下(見込み)74万円(本則69万円+時限特例5万円)
199万1円 ~ 360万円収入金額 × 30% + 8万円(見込み)
360万1円 ~ 660万円収入金額 × 20% + 44万円
660万1円 ~ 850万円収入金額 × 10% + 110万円
850万1円以上195万円(上限額・変更なし)

(出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」

本則の最低保障額は65万円から69万円へ4万円引き上げ。これに加え、令和8年分・令和9年分限定の時限特例として5万円が上乗せされ、合計で 74万円 となります。

本則4万円の引き上げは、直近2年間(令和5年10月~令和7年10月)の消費者物価指数(総合)上昇率約6.0%を反映したインフレ調整です。

この改正と同時に、物価上昇に連動して基礎控除額と給与所得控除の最低保障額を自動的に引き上げる「物価連動調整機構」が恒久制度として創設されます。

今後は2年ごとにCPIの変動を確認し、万円単位で控除額が調整される仕組みとなる予定です。年度ごとの最低保障額の推移をまとめると、次のようになります。

年分最低保障額内訳
~2024年(令和6年分)55万円本則55万円
2025年(令和7年分)65万円本則65万円(+10万円)
2026年(令和8年分)※改正案74万円本則69万円+時限特例5万円

所得控除との違い|「給与所得控除」と「所得控除」を混同しない

「給与所得控除」と「所得控除」は名前が似ていますが、計算のステージがまったく異なります。この違いを正確に理解しておかないと、年末調整での計算ミスにつながるため、経理・人事担当者はしっかり区別しておきましょう。

  • 給与所得控除
    給与収入(額面)から差し引いて「給与所得」を算出するための控除です。収入金額に応じて自動的に決まり、申告は不要です。
  • 所得控除
    算出された給与所得(および他の所得)からさらに差し引いて「課税所得」を算出するための控除です。全部で15種類(2025年時点)あり、個人の事情に応じて適用されます。

主な所得控除を一覧で整理すると、

  • 基礎控除(2025年は最大95万円)
  • 配偶者控除(最大38万円)
  • 配偶者特別控除(最大38万円)
  • 扶養控除(38万円〜63万円)
  • 社会保険料控除(実額全額)
  • 生命保険料控除(最大12万円)
  • 地震保険料控除(最大5万円)
  • 医療費控除(実額−10万円)
  • 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等の実額全額)
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 雑損控除

が挙げられます。

このうち、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除は年末調整で処理できますが、医療費控除と雑損控除は確定申告でしか適用できません。従業員から「医療費が高額だった」という相談を受けた場合は、確定申告を案内する必要があります。

特定支出控除とは?給与所得控除を超える経費がある場合

給与所得控除はあくまで「概算」の経費控除ですが、実際の仕事関連支出が給与所得控除額の半分を超えるケースでは、超過分を追加で控除できる「特定支出控除」という制度があります。

対象となる特定支出は、通勤費、職務上の旅費、転居費(転勤に伴うもの)、研修費、資格取得費(弁護士・公認会計士・税理士なども対象)、帰宅旅費(単身赴任の場合)、勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等、合計65万円が上限)の7種類です。

適用するには、特定支出の合計額がその年の給与所得控除額の2分の1を超えている必要があり、超えた部分だけが控除対象です。たとえば年収500万円(給与所得控除額144万円)の場合、特定支出の合計が72万円を超えたときに初めて適用されます。

ただし、この制度の利用者は極めて少なく、給与所得者約5,000万人に対して年間約1,700人程度、利用率にして0.003%ほどにとどまります。理由としては、多くの企業が通勤費や研修費を会社負担としているため自己負担が発生しにくいこと、給与支払者(会社)による証明書が必要で手続きが煩雑なことが挙げられます。確定申告が必須で年末調整では適用できない点も、利用のハードルを上げている要因です。

経理担当者として把握しておくべきは、従業員から特定支出控除の証明書の発行を求められた場合の対応フローです。証明書は会社が発行する必要があるため、人事・経理部門で書式と手続きを整備しておくとスムーズに対応できます。


【ステップ解説】給与所得から所得税・住民税を算出するまでの計算フロー

ここまでの解説で「給与所得」「給与所得控除」「所得控除」の違いを整理しました。このセクションでは、給与収入から最終的な手取り額に至るまでの計算プロセスを5つのステップに分解し、それぞれの段階で何が起きているのかを具体的に解説します。経理・人事担当者の方は、このフローを頭に入れておくと、年末調整時の各計算の位置づけが明確になります。

Step1 年間の給与収入を確定する

計算の出発点は、その年の1月1日から12月31日までに支給される給与等の合計額を確定することです。具体的には、毎月の給与(基本給+各種手当+残業代)と賞与(ボーナス)をすべて合算します。

注意すべきは、ここでいう「支給日ベース」で計算する点です。12月分の給与であっても翌年1月に支給される場合は、翌年の給与収入に含まれます。逆に、前年12月に支給された1月分前払い給与は、前年の給与収入に含まれます。中途入社者の場合は、前職での給与収入(前職の源泉徴収票に記載された金額)を合算する必要があります。

また、前述のとおり非課税となる項目(通勤手当の月15万円以内の部分、出張旅費など)は給与収入に含めません。給与計算ソフトでは通常、非課税項目は自動的に除外されますが、手動で計算する場合は注意が必要です。

Step2 給与所得控除を差し引いて給与所得を算出する

年間の給与収入が確定したら、前述の速算表を適用して給与所得控除額を求め、給与収入から差し引きます。

計算例:年収500万円(2025年分)の場合

  1. 速算表で該当する区分を確認 → 360万1円~660万円の区分
  2. 控除額 = 500万円 × 20% + 44万円 = 144万円
  3. 給与所得 = 500万円 − 144万円 = 356万円

なお、実務上は給与等の収入金額が660万円未満の場合、速算表ではなく「所得税法別表第五」の表を使って1円単位で正確な金額を求めます。速算表はあくまで概算把握用であり、年末調整や確定申告の計算では別表第五が正式な根拠となります。給与計算ソフトはこの別表を自動的に参照するため、手作業で速算表を使う場合との間にわずかな差額が生じることがあります。

端数処理のルールとして、給与所得控除後の給与等の金額に1円未満の端数が生じた場合は切り捨てます。

Step3 所得控除を差し引いて課税所得を算出する

Step2で求めた給与所得から、本人に該当する所得控除を差し引き、「課税所得金額」を算出します。

計算例(続き):年収500万円・独身・40歳未満の場合

主な所得控除の例として、基礎控除58万円(2025年分、合計所得金額655万円以下の場合。ただし合計所得金額489万円以下なら63万円、336万円以下なら88万円が適用される。

ここでは給与所得356万円の場合、合計所得金額336万円超~489万円以下にあたり、基礎控除は68万円)、社会保険料控除72万円(概算。標準報酬月額に基づく)が挙げられます。

課税所得 = 356万円 − 68万円 − 72万円 = 216万円

2025年改正で基礎控除は大きく変わりました。改正前は合計所得金額2,400万円以下で一律48万円でしたが、改正後は合計所得金額に応じて段階的に加算される仕組みになっています。

合計所得金額2024年以前2025年(令和7年分)
132万円以下48万円95万円(本則58万+特例加算37万)
132万円超~336万円以下48万円88万円(本則58万+特例加算30万)
336万円超~489万円以下48万円68万円(本則58万+特例加算10万)
489万円超~655万円以下48万円63万円(本則58万+特例加算5万)
655万円超~2,350万円以下48万円58万円(本則のみ)
2,350万円超~2,400万円以下48万円48万円(変更なし)
2,400万円超~2,450万円以下32万円32万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円16万円
2,500万円超0円0円

(出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

特例加算は合計所得金額が低いほど大きく、132万円以下(給与収入で約200万円以下)なら37万円が加算されて基礎控除は最大95万円に達します。一方、655万円超(給与収入で約850万円超)では特例加算はゼロとなり、本則の58万円のみが適用されます。

年末調整においては「給与所得者の基礎控除申告書」でこの段階的な控除額を正しく計算する必要があり、従業員本人に合計所得金額の見積もりを記入してもらうことになります。

Step4 税率を適用して所得税額・住民税額を求める

課税所得金額が確定したら、税率を掛けて税額を計算します。所得税は「超過累進税率」、住民税は「一律10%」という、大きく異なる仕組みが採用されています。

所得税の超過累進税率表(7段階)

課税される所得金額税率控除額
~194万9,000円5%0円
195万円~329万9,000円10%9万7,500円
330万円~694万9,000円20%42万7,500円
695万円~899万9,000円23%63万6,000円
900万円~1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円以上45%479万6,000円

(出典:国税庁 No.2260「所得税の税率」

この速算表の「控除額」は、超過累進税率を速算表として計算するための調整値であり、所得控除とは別のものです。課税所得金額に税率を掛け、控除額を差し引くことで、各段階の税率を正確に反映した所得税額が算出されます。

計算例(続き):課税所得216万円の場合

  • 所得税額 = 216万円 × 10% − 9万7,500円 = 11万8,500円
  • 復興特別所得税 = 11万8,500円 × 2.1% = 2,488円(1円未満切り捨て)
  • 所得税+復興特別所得税の合計 = 12万988円(100円未満切り捨てで12万900円

復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源として2013年から2037年まで、基準所得税額に2.1%を上乗せする制度です。

なお、令和8年度税制改正大綱では、2027年1月から復興特別所得税の税率を2.1%から1.1%に引き下げると同時に、防衛特別所得税(仮称)1%を新設し、合計の付加税率を2.1%に維持する方針が示されています。家計の実質負担は変わらない設計です。

住民税の計算

住民税の所得割は一律10%(市区町村6%+都道府県4%)です。ただし、住民税の基礎控除は43万円で、所得税の基礎控除(2025年は58万~95万円)よりも低い金額に設定されています。このため、住民税の課税所得は所得税の課税所得よりも大きくなります。

計算例(続き):年収500万円・独身・東京都23区の場合

  • 住民税の給与所得 = 356万円(所得税と同じ)
  • 住民税の基礎控除 = 43万円
  • 住民税の社会保険料控除 = 72万円(所得税と同額)
  • 住民税の課税所得 = 356万円 − 43万円 − 72万円 = 241万円
  • 住民税の所得割 = 241万円 × 10% = 24万1,000円
  • 調整控除 = △2,500円(標準的な金額)
  • 均等割+森林環境税 = 5,000円
  • 住民税の合計 = 24万1,000円 − 2,500円 + 5,000円 = 約24万3,500円

重要なポイントとして、住民税の基礎控除43万円は2025年・2026年の税制改正でも変更されません。所得税の基礎控除が58万~最大95万円に引き上げられるのに対して住民税は据え置きのため、所得税と住民税の課税所得の差はこれまで以上に開くことになります。住民税は「地域社会の会費」としての性格が強く、広く薄く負担する考え方が反映されています。(出典:東京都主税局「個人住民税」

Step5 手取り額の算出|社会保険料も含めた最終計算

最後に、額面の給与収入から社会保険料、所得税、住民税をすべて差し引いて「手取り額」を算出します。

2025年度(東京都・協会けんぽ)の社会保険料率は次のとおりです。

保険種別被保険者(本人)負担率
健康保険(協会けんぽ東京支部)4.955%
介護保険(40歳以上65歳未満)0.795%
厚生年金保険9.15%
雇用保険(一般の事業)0.55%
合計(40歳未満)約14.655%
合計(40歳以上65歳未満)約15.450%

(出典:協会けんぽ東京支部「令和7年度保険料額表」厚生労働省「令和7年度雇用保険料率」

健康保険料と厚生年金保険料は「標準報酬月額」に対して計算され、雇用保険料は毎月の賃金総額に対して計算されるため、厳密には料率を単純に合算できませんが、概算把握としては上記の合計率で十分です。

計算例(続き):年収500万円・独身・40歳未満・東京都の場合

項目金額
給与収入(額面)500万円
社会保険料(約14.655%の概算)約73万3,000円
所得税+復興特別所得税約12万1,000円
住民税約24万4,000円
手取り額約390万2,000円
手取り率約78.0%

年収500万円の独身者であれば、額面の約78%が手取りとして手元に残る計算です。この手取り率は年収が上がるほど低くなります。これは所得税の超過累進税率の影響で、年収が増えるにつれて適用される税率が段階的に上昇するためです。

【年収別シミュレーション】給与所得・所得税・住民税・手取りを一覧比較

ここまでの計算フローを理解したところで、実際に年収別のシミュレーション結果を一覧表で確認してみましょう。年収200万円から1,500万円まで、独身・配偶者あり・配偶者あり+子1人の3パターンで比較します。

「自分の年収だといくら引かれるのか」「家族構成が変わると手取りはどう変わるのか」を一目で把握できる一覧表は、従業員からの問い合わせ対応にも活用できます。

シミュレーションの前提条件

以下のシミュレーションは、2025年(令和7年分)の税制改正を反映した概算値です。正確な金額は個人の状況により異なりますので、目安としてご活用ください。

前提条件は次のとおりです。40歳未満(介護保険料なし)、東京都23区在住、勤務先は協会けんぽ加入の一般企業、社会保険料は年収に対する概算(健康保険4.955%+厚生年金9.15%+雇用保険0.55%=約14.655%)、所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみ(生命保険料控除等は含めず)としています。

扶養パターンは、①独身(扶養親族なし)、②配偶者あり(配偶者の収入なし、配偶者控除38万円を適用)、③配偶者あり+子1人(16歳以上19歳未満、扶養控除38万円を適用。配偶者控除38万円も適用)の3パターンです。

【独身】年収200万〜1,500万円の給与所得・税金・手取り一覧表

年収給与所得控除給与所得基礎控除社会保険料所得税住民税手取り手取り率
200万円65万円135万円88万円29万円0.9万円3.3万円166.8万円83.4%
250万円65万円185万円88万円37万円3.1万円6.5万円203.4万円81.4%
300万円65万円235万円88万円44万円5.4万円10.0万円240.6万円80.2%
350万円113万円237万円68万円51万円6.0万円12.3万円280.7万円80.2%
400万円124万円276万円68万円59万円8.0万円15.3万円317.7万円79.4%
450万円134万円316万円68万円66万円10.7万円18.5万円354.8万円78.8%
500万円144万円356万円68万円73万円12.1万円21.5万円393.4万円78.7%
600万円164万円436万円63万円88万円18.7万円28.8万円464.5万円77.4%
700万円180万円520万円63万円103万円28.4万円35.9万円532.7万円76.1%
800万円190万円610万円58万円117万円39.7万円44.2万円599.1万円74.9%
900万円195万円705万円58万円132万円52.8万円51.7万円663.5万円73.7%
1,000万円195万円805万円58万円146万円68.7万円60.2万円725.1万円72.5%
1,200万円195万円1,005万円58万円170万円109.7万円79.2万円841.1万円70.1%
1,500万円195万円1,305万円58万円195万円182.7万円109.2万円1,013.1万円67.5%

※金額は概算値(千円以下四捨五入)。基礎控除は合計所得金額に応じた2025年改正後の段階的金額を適用。社会保険料には上限があるため、高年収帯では実際の料率は低くなります。

【配偶者あり】年収200万〜1,500万円の給与所得・税金・手取り一覧表

配偶者控除(38万円)が適用されることで、独身の場合と比較して所得税・住民税が軽減されます。住民税の配偶者控除は33万円です。

スクロールできます
年収所得税住民税手取り独身との差
200万円0円1.4万円169.6万円+2.8万円
250万円1.2万円3.2万円208.6万円+5.2万円
300万円3.5万円6.7万円245.8万円+5.2万円
400万円6.1万円11.7万円322.2万円+4.5万円
500万円10.2万円18.2万円398.6万円+5.2万円
600万円15.0万円25.1万円471.9万円+7.4万円
700万円23.4万円32.6万円541.0万円+8.3万円
800万円33.5万円40.5万円609.0万円+9.9万円
1,000万円60.9万円56.5万円736.6万円+11.5万円
1,200万円101.9万円75.5万円852.6万円+11.5万円
1,500万円170.2万円105.5万円1,029.3万円+16.2万円

独身との手取り差は、年収が上がるほど大きくなる傾向があります。これは、年収が高いほど適用される所得税率が高く、配偶者控除38万円の節税効果が大きくなるためです。

年収200万円台(税率5%)では配偶者控除による節税効果は年間約1.9万円ですが、年収1,500万円(税率33%適用部分あり)では約12.5万円に達します。

【配偶者あり+子1人】年収200万〜1,500万円の給与所得・税金・手取り一覧表

配偶者控除(38万円)に加えて扶養控除(38万円、16歳以上19歳未満の場合)が適用されます。住民税の扶養控除は33万円です。

スクロールできます
年収所得税住民税手取り独身との差
200万円0円0.1万円170.9万円+4.1万円
300万円1.6万円3.4万円251.0万円+10.4万円
400万円4.2万円8.4万円327.4万円+9.7万円
500万円8.3万円14.9万円403.8万円+10.4万円
600万円11.2万円21.8万円479.0万円+14.5万円
700万円18.4万円29.3万円549.3万円+16.6万円
800万円27.3万円36.8万円618.9万円+19.8万円
1,000万円53.2万円52.8万円748.0万円+22.9万円
1,200万円94.2万円71.8万円864.0万円+22.9万円
1,500万円157.7万円101.8万円1,045.5万円+32.4万円

シミュレーション結果から読み取れるポイント

これらのシミュレーション結果から、経理・人事担当者として押さえておくべきポイントが5つ浮かび上がります。

年収850万円で給与所得控除が頭打ちになる可能性

給与所得控除の上限は195万円で、年収850万円を超えるとそれ以上は控除額が増えません。このため、年収850万円付近を境に手取り率の低下ペースが加速します。

独身者の手取り率は、年収500万円で約78.7%ですが、年収1,000万円では約72.5%、年収1,500万円では約67.5%まで下がります。

所得税率10%→20%の切り替わりポイントに注意

課税所得195万円(独身・年収約450万円前後)を境に所得税率が10%から20%に上がり、税負担の増加ペースが加速します。昇給やボーナスによってこのラインを超えると、手取りの増え方が鈍くなったと感じる従業員が出てくる可能性があります。

家族構成による手取り差は年間3万〜32万円と幅広い

配偶者控除と扶養控除の節税効果は、適用される所得税率が高い高年収者ほど大きくなります。年収1,500万円の世帯で配偶者+子1人の控除がある場合、独身者と比べて年間約32万円の手取り増となります。

2025年改正の恩恵は年収200万円以下の層で最も大きい

基礎控除の特例加算が最大37万円となる合計所得132万円以下(年収約200万円以下)の層では、改正前と比べて所得税の大幅な軽減が実現します。パート・アルバイト従業員にとって特に影響が大きい改正です。

社会保険料の負担が所得税・住民税の合計を上回るケースが多い

年収500万円の独身者の場合、社会保険料は約73万円、所得税+住民税は約34万円です。社会保険料のほうが約2倍の負担であり、「税金が高い」と感じる従業員には、実は社会保険料の方が大きな控除項目であることを説明すると理解が深まります。

【2025年・2026年税制改正】給与所得計算への影響と実務対応

2025年と2026年は、給与所得の計算に関わる税制改正が連続して行われる異例の時期です。「103万円の壁」から「178万円の壁」への大幅な引き上げ、基礎控除の段階的拡充、特定親族特別控除の新設、さらには社会保険の壁の撤廃まで、経理・人事担当者が把握すべき改正内容は多岐にわたります。

ここでは時系列で整理し、それぞれの実務対応のポイントを解説します。

2025年改正のポイント|給与所得控除65万円・基礎控除の段階的拡充

令和7年度税制改正法は2025年3月31日に成立し、同年分の所得税から適用されます。主な改正内容は3つです。

改正①:給与所得控除の最低保障額の引き上げ(55万円→65万円)

これにより、年収190万円以下のすべての給与所得者の税負担が軽減されます。従来は162.5万円以下で55万円、162.5万~180万円で「40%−10万円」と2段階に分かれていた区分が、190万円以下=65万円の1段階に統合されました。

改正②:基礎控除の本則引き上げ(48万円→58万円)と特例加算(最大37万円)

全納税者の基礎控除が10万円引き上げられるとともに、合計所得金額655万円以下の層には段階的な特例加算が適用されます。最も手厚いのは合計所得132万円以下の層で、本則58万円+特例37万円=最大95万円の基礎控除が受けられます。

改正③:課税最低限の引き上げ(103万円→160万円)

基礎控除95万円+給与所得控除65万円=160万円となり、年収160万円以下の給与所得者は所得税がかからなくなります。これが「160万円の壁」です。

適用開始は2025年分の所得、つまり2025年12月の年末調整からです。月次の源泉徴収では対応せず、年末調整で一括精算する方式のため、年末調整時の還付額が例年よりも大きくなる従業員が多数出ることが見込まれます。
(出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

2026年改正案のポイント|給与所得控除74万円・課税最低限178万円

令和8年度税制改正大綱は2025年12月26日に閣議決定され、2026年2月に法案が国会に提出されました。2026年3月時点では審議中であり、成立見込みは3月末とされていますが、最終的な内容は変更の可能性があります。

  1. 改正案①:給与所得控除の最低保障額のさらなる引き上げ(65万円→74万円)
    本則を65万円から69万円へ4万円引き上げたうえで、令和8・9年分限定の時限特例5万円を上乗せし、合計74万円とします。
  2. 改正案②:基礎控除の本則引き上げ(58万円→62万円)と特例加算の拡充
    本則を4万円引き上げて62万円に。特例加算は合計所得489万円以下まで一律42万円が適用される設計で、2025年版(132万円超で急減)と比べて対象範囲が大幅に拡大されます。
  3. 改正案③:課税最低限の引き上げ(160万円→178万円)
    基礎控除104万円+給与所得控除74万円=178万円。年収665万円以下の給与所得者すべてがこの恩恵を受けます。
  4. 改正案④:物価連動自動調整機構の創設
    消費者物価指数(総合)の2年間の変動率に応じて、基礎控除の本則額と給与所得控除の最低保障額を自動的に調整する恒久制度が導入されます。調整は万円単位で行われ、次回の見直しは令和10年度(2028年度)に令和7年10月~令和9年10月のCPI変動率を反映する予定です。

(出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」

特定親族特別控除の新設|19〜22歳の扶養がどう変わるか

2025年分から新設された「特定親族特別控除」は、19歳以上23歳未満の親族に関する控除制度を大きく変える改正です。

従来の制度では、19〜22歳の扶養親族(特定扶養親族)は合計所得金額48万円以下(給与収入で103万円以下)が控除の要件で、要件を満たせば63万円の控除が受けられましたが、1円でも超えると控除が一切受けられない「崖」がありました。

新制度では、合計所得金額58万円(給与収入で123万円)を超えても、段階的に控除が逓減していく仕組みが導入されました。具体的には、合計所得58万円超~85万円以下(給与収入で約150万円以下)なら満額63万円の控除が維持され、85万円超から123万円以下(給与収入で約188万円以下)まで段階的に控除額が減少し、123万円を超えると控除が消滅します。

経理実務への影響として重要なのは、年末調整における扶養親族の所得確認がこれまで以上に重要になる点です。大学生のアルバイト収入が103万円を超えた場合でも、150万円以下であれば親の控除額は維持されるため、従来のように「103万円を超えたら控除ゼロ」という案内は誤りになります。従業員への説明資料を更新する必要があります。

(出典:国税庁 No.1177「特定親族特別控除」

社会保険の「106万円の壁」撤廃(2026年10月)との関連

税制改正と同時に、社会保険の大きな制度変更も進んでいます。2025年6月に成立した年金制度改正法により、2026年10月から短時間労働者の社会保険加入要件から「月額88,000円以上(年収106万円以上)」の賃金要件が撤廃されます。

改正後は、週20時間以上勤務する従業員であれば、年収に関係なく社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生します。企業規模要件(現行51人以上)も2027年10月から段階的に撤廃され、2035年10月までに全企業に拡大される予定です。

つまり、2026年は税金の壁(103万→160万→178万円)と社会保険の壁(106万円撤廃)が同時に大きく動く年になります。経理・人事担当者として特に注意すべき点は次のとおりです。

パート従業員が「年収の壁を気にして働き控えをする」判断の基準が変わります。税金面では課税最低限が大幅に引き上げられる一方で、社会保険面では年収に関係なく加入義務が発生するため、「手取りが最大化される年収」の計算が従来とまったく異なるものになります。

3年間の事業主負担軽減措置(年収156万円未満の短時間労働者が対象)も設けられるため、自社の対象者がどの程度いるかの事前把握が重要です。

改正前後の比較表|2024年 vs 2025年 vs 2026年(予定)

3年間の主要数値を一覧で比較すると、改正の全体像が把握しやすくなります。

項目2024年2025年2026年(案)
給与所得控除(最低保障額)55万円65万円74万円
基礎控除(所得税・最大)48万円95万円104万円
基礎控除(住民税)43万円43万円43万円
所得税の課税最低限103万円160万円178万円
住民税非課税ライン(単身)100万円100万円※110万円
配偶者控除の年収上限103万円123万円136万円
扶養親族の所得要件48万円以下58万円以下62万円以下
社会保険の壁(短時間労働者)106万円106万円賃金要件撤廃(10月~)

※2025年分の住民税非課税ラインは、令和8年度の住民税(令和7年分所得に基づく)から給与所得控除65万円を反映して110万円に引き上がります。令和7年度の住民税は令和6年分所得に基づくため、旧基準の100万円が適用されます。

年末調整における給与所得の計算|実務担当者のためのチェックリスト

年末調整は、1年間の給与所得の計算を締めくくり、源泉徴収した所得税との過不足を精算する最重要業務です。2025年は税制改正の影響で例年以上に複雑になるため、経理・人事担当者向けに実務のポイントをチェックリスト形式で整理します。

年末調整の全体フロー|10月〜1月のスケジュール

年末調整は12月だけで完結する作業ではなく、10月から翌年1月までの約4か月にわたるプロセスです。全体の流れを月別に把握しておきましょう。

10月:準備・書類配布フェーズ。 扶養控除等(異動)申告書の配布と記入依頼を行います。中途入社者がいる場合は、前職の源泉徴収票の回収状況を確認し、未回収の場合は早めに督促します。翌年分の扶養控除等申告書の配布・回収も同時に行うのが効率的です。

11月:申告書回収・確認フェーズ。 保険料控除申告書、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書の回収と内容確認を行います。生命保険料控除証明書など添付書類の確認は特に念入りに行い、不備がある場合は早めに差し戻します。2025年からは基礎控除の段階計算が複雑化しているため、合計所得金額の見積もりが正確かどうかのチェックが重要です。

12月:計算・精算フェーズ。 年間の給与・賞与の確定後、年税額を計算し、毎月の源泉徴収税額との過不足を精算します。多くの場合は還付(過納額の返金)となり、12月または1月の給与に還付額を上乗せして支給します。2025年は基礎控除の引き上げにより、例年よりも還付額が大きくなる従業員が多数出ることが見込まれます。

翌年1月:法定調書提出フェーズ。 1月31日までに、税務署に対して「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出し、市区町村に対して「給与支払報告書」を提出します。源泉徴収票は従業員本人にも交付します。

給与所得者の基礎控除申告書の書き方【2025年改正対応】

2025年改正で基礎控除が段階的になったことにより、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書」(通称「基配所申告書」)の記入方法が変わります。

従業員が記入する際の主なポイントは次のとおりです。まず「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」を計算します。給与収入のみの場合は、年間の給与収入見込み額から新しい給与所得控除額(速算表)を差し引いた金額が合計所得金額になります。副業収入がある場合はその分も加算します。

次に、合計所得金額の見積額に基づいて基礎控除額を判定します。2025年分は合計所得金額によって48万~95万円の間で段階的に変わるため、正確な判定が求められます。記入欄のレイアウトも改正に合わせて変更されるため、国税庁が公開する記載例を事前に確認しておくことをおすすめします。

経理担当者としては、従業員に配布する際に「合計所得金額の見積もり方の簡易説明」を添付すると、回収後の修正手戻りを減らせます。特に、基礎控除の特例加算の適用区分が合計所得金額132万円、336万円、489万円、655万円で切り替わるため、これらの境界付近の年収の従業員には特に注意を促しましょう。

中途入社者の前職源泉徴収票の取り扱い

年の途中で転職して入社した従業員の年末調整では、前職での給与収入と源泉徴収税額を合算して計算する必要があります。

最も重要なのは、前職の源泉徴収票を入社時または年末調整前までに確実に回収することです。源泉徴収票がないと年末調整ができず、本人に確定申告をしてもらう必要が出てきます。入社手続きの際に「前職の源泉徴収票の提出」を必須書類リストに入れておくのがベストプラクティスです。

前職の源泉徴収票の情報は、自社の給与データと合算して年末調整を行います。具体的には「支払金額」「社会保険料等の金額」「源泉徴収税額」の3項目を前職分と自社分で合計し、年税額を計算します。前職で配偶者控除等が適用されていた場合は、自社の年末調整で改めて適用を判断します。

前職の源泉徴収票が届かない場合や、前職の会社が倒産しているなどで入手できない場合は、年末調整での合算計算ができないため、本人に確定申告を案内します。

退職者の年末調整と源泉徴収票の発行

退職者への対応は、退職時期によって年末調整の要否が異なります。

12月の最終給与支給後に退職する場合(12月31日退職を含む)は、年末調整の対象となります。最終給与で年末調整を行い、源泉徴収票を発行・交付します。

それ以外の月に退職する場合は、原則として年末調整の対象外です。退職時に「退職時の源泉徴収票」を発行し、退職後1か月以内に交付します。退職した従業員は、翌年に確定申告を行って所得税の精算をする必要があります。ただし、退職後同年中に再就職した場合は、再就職先で年末調整が行われます。

なお、死亡退職や心身障害による退職など特殊なケースでは年末調整が必要になる場合があるため、個別に判断が必要です。

年末調整でよくあるミスと対処法5選

経理・人事担当者が年末調整で遭遇しやすいミスと、その対処法をまとめました。

ミス①:配偶者の所得見積もりが実際と異なる

年末調整時の見積額と実際の年間所得に差異があった場合、翌年1月末までなら年末調整の再計算が可能です。特にパート収入のある配偶者は、12月の勤務実績によって年収が想定を超えるケースがあります。従業員には「12月の給与確定後に最終確認してから提出してください」と案内しましょう。

ミス②:保険料控除証明書の添付漏れ

生命保険料控除証明書やiDeCoの掛金払込証明書が未提出のまま処理してしまうケースです。チェックリストを作成し、申告書と証明書のセットで回収・確認する運用が効果的です。添付漏れに気づいた場合は、翌年1月末までの再年末調整か、本人の確定申告で対応可能です。

ミス③:扶養親族の年齢区分の誤り

特定扶養親族(19歳以上23歳未満)と一般の扶養親族(16歳以上19歳未満)では控除額が異なります(63万円 vs 38万円)。年齢は「その年の12月31日時点」で判定するため、年内に19歳になる場合の区分変更に注意が必要です。2025年からは特定親族特別控除の新設により、さらに判定が複雑になっています。

ミス④:所得金額調整控除の適用漏れ

年収850万円超で23歳未満の扶養親族を持つ従業員には所得金額調整控除(最大15万円)が適用されますが、申告書の提出を忘れるケースがあります。年収850万円超の従業員には個別に制度を案内し、申告漏れがないよう確認しましょう。

ミス⑤:前職源泉徴収票の未回収のまま年末調整を実施

中途入社者の前職分を合算せずに年末調整を行うと、税額が過少になります。入社時に回収を済ませるルールを徹底し、年末調整の準備段階で中途入社者リストを作成して未回収者をフォローアップする仕組みが必要です。

確定申告が必要なケース|年末調整だけでは完結しない給与所得者

多くの給与所得者は年末調整で所得税の精算が完了しますが、一定の条件に該当する場合は確定申告が必要です。経理担当者は、どのような従業員に確定申告の案内を行うべきかを把握しておく必要があります。

年収2,000万円超の給与所得者

給与等の年間収入金額が2,000万円を超える場合、年末調整の対象外となります(所得税法第190条)。この場合、本人が翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税の精算をしなければなりません。

経理担当者としては、年末調整を行わずに源泉徴収票を発行し、確定申告が必要である旨を本人に案内します。月次の源泉徴収は通常どおり行い、年末調整による過不足精算のみが不要となる形です。

2か所以上から給与を受けている場合

本業と副業の両方で「給与」として支払いを受けている場合は、主たる給与について年末調整を行いますが、副業分の給与は年末調整に含めることができません。副業の給与収入がある場合、原則として確定申告が必要です。

ただし、副業の給与収入と給与以外の所得の合計が20万円以下の場合は、確定申告を省略できるという特例があります。注意すべきは、この「20万円以下の申告不要」はあくまで所得税に限った話であり、住民税の申告は別途必要だという点です。「確定申告が不要だから住民税もかからない」と誤解する従業員がいるため、正確に案内しましょう。

医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ適用外)を受ける場合

年末調整では処理できない所得控除がいくつかあります。代表的なものが医療費控除と雑損控除で、これらは確定申告でしか適用できません。

ふるさと納税については、ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告は不要ですが、寄附先が6自治体以上の場合や、他の理由で確定申告を行う場合はワンストップ特例が無効になり、確定申告での寄附金控除の申告が必要です。

このほか、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)や、災害により住宅や家財に被害を受けた場合の雑損控除も確定申告が必要です。

住宅ローン控除の初年度

住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、初年度は確定申告で住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を申請する必要があります。2年目以降は年末調整で処理できるため、確定申告は不要になります。

初年度の確定申告に必要な書類は、住民票の写し、登記事項証明書、売買契約書の写し、住宅ローンの年末残高証明書など多岐にわたります。住宅を購入した従業員には、入居年の翌年に確定申告が必要であることを早めに案内しましょう。

経理担当者から従業員への案内文テンプレート

年末調整の時期に合わせて、確定申告が必要なケースを従業員に周知する案内文を作成しておくと、個別の問い合わせ対応を減らせます。

以下は案内文の例です。

件名:確定申告が必要な方へのご案内

社員各位

年末調整の処理が完了いたしました。以下に該当する方は、別途ご自身での確定申告が必要です。

  1. 年間の給与収入が2,000万円を超える方
  2. 当社以外からも給与収入がある方(副業でアルバイト先から給与を受けている場合など)
  3. 医療費が年間10万円を超えた方(医療費控除の適用を希望する場合)
  4. ふるさと納税の寄附先が6自治体以上の方、またはワンストップ特例を利用しなかった方
  5. 今年、住宅ローンを利用して住宅を取得し入居された方(住宅ローン控除の初年度)
  6. 年の途中で退職し、再就職されていない方

確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。ご不明な点がございましたら、経理部までお問い合わせください。

この案内文は12月の給与明細に同封するか、社内ポータルに掲載する運用がおすすめです。

源泉徴収票の見方|給与所得に関する数字を正しく読み解く

源泉徴収票は、給与所得の計算結果が凝縮された重要書類です。年末調整の結果が正しいかどうかを確認するうえでも、各欄の意味を正確に理解しておくことが大切です。ここでは、源泉徴収票の主要項目と確認ポイントを解説します。

源泉徴収票の全体構造と各欄の意味

源泉徴収票の上部に並ぶ4つの主要項目は、本記事で解説してきた計算フローの結果が反映されたものです。

  • 「支払金額」
    その年の1月1日から12月31日までに支給された給与等の合計額です。本記事でいう「給与収入(額面)」に相当します。非課税の通勤手当は含まれません。
  • 「給与所得控除後の金額」
    支払金額から給与所得控除額を差し引いた金額で、本記事でいう「給与所得」に相当します。2025年分からは新しい速算表(最低保障額65万円)に基づいて計算されます。
  • 「所得控除の額の合計額」
    基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除など、適用されたすべての所得控除の合計です。
  • 「源泉徴収税額」
    年末調整で精算された後の最終的な所得税+復興特別所得税の金額です。

これら4項目の関係は、「給与所得控除後の金額」−「所得控除の額の合計額」=課税所得金額 → 課税所得金額に税率を適用 → 「源泉徴収税額」という流れになります。

「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」の関係

この2つの差額が「課税所得金額」であり、ここに超過累進税率を適用した結果が源泉徴収税額になります。

たとえば、給与所得控除後の金額が356万円、所得控除の額の合計額が140万円であれば、課税所得金額は216万円です。ここに10%の税率を適用し控除額97,500円を引くと、所得税額は118,500円。復興特別所得税2.1%を加算した約12万円が源泉徴収税額に記載されることになります。

源泉徴収税額が想定よりも高い場合は、所得控除の適用漏れがないか確認しましょう。逆に低い場合は、配偶者の所得が実際より低く見積もられていないか(控除の過大適用)を確認する必要があります。

源泉徴収票で確認すべき5つのチェックポイント

経理担当者が源泉徴収票を発行する前、または従業員が受け取った後に確認すべきポイントを5つ挙げます。

  1. チェック①:支払金額が実際の年収と一致しているか
    月次の給与台帳の合計と一致するか確認します。ボーナスの加算漏れや、非課税手当の誤った課税処理がないかもチェックポイントです。
  2. チェック②:扶養親族の人数が正しいか
    控除対象扶養親族の数が源泉徴収票に正しく反映されているかを確認します。年の途中で扶養親族に異動(出生、就職、離婚など)があった場合は特に注意が必要です。
  3. チェック③:社会保険料等の金額が妥当か
    源泉徴収票に記載される社会保険料等の金額は、給与から天引きされた健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の合計に、年末調整で申告されたiDeCo掛金や国民年金保険料(学生時代の追納分など)を加えた金額です。
  4. チェック④:住宅ローン控除が正しく反映されているか
    住宅借入金等特別控除の適用がある場合、源泉徴収票の該当欄に控除額が記載されます。控除額が0円になっている場合は、申告書の提出漏れや記入ミスの可能性があります。
  5. チェック⑤:摘要欄の記載内容を確認する
    中途入社者の場合は前職の情報が摘要欄に記載されます。前職の支払金額、社会保険料等の金額、源泉徴収税額が正しく転記されているかを確認しましょう。

「年収の壁」完全整理|税金の壁と社会保険の壁を一覧で比較

パート・アルバイト従業員を抱える企業の経理・人事担当者にとって、「年収の壁」は避けて通れないテーマです。税金の壁と社会保険の壁は別々の制度に基づく異なる仕組みですが、従業員からは「結局いくらまで働けるの?」とひとまとめに質問されることが多いのが実情です。ここでは2つの壁を一体的に整理します。

税金の壁一覧|100万・103万・150万・160万・178万・201万円

税金に関する「壁」は、所得税と住民税の計算構造に基づいて複数のラインが存在します。それぞれの壁が何を意味し、2025年・2026年の改正でどう変わるかを時系列で整理します。

  • 住民税非課税の壁(〜100万円→110万円→119万円)
    給与収入が一定額以下であれば住民税が非課税になるラインです。東京23区の場合、2024年までは年収100万円以下で非課税でしたが、2025年分の所得(令和8年度住民税)から給与所得控除の引き上げを反映して110万円に上がります。2026年分(令和9年度住民税)では119万円に上がる見込みです。ただし、住民税の非課税限度額は自治体によって異なる場合があります。
  • 所得税非課税の壁(103万円→160万円→178万円)
    所得税がかからなくなる年収のラインです。2024年は103万円(基礎控除48万+給与所得控除55万)でしたが、2025年は160万円(基礎控除95万+給与所得控除65万)、2026年は178万円(基礎控除104万+給与所得控除74万)に引き上げられます。
  • 配偶者控除の壁(103万円→123万円→136万円)
    配偶者の年収がこのラインを超えると、納税者本人の配偶者控除(38万円)が受けられなくなります。2024年は103万円(合計所得48万円以下)、2025年は123万円(合計所得58万円以下)、2026年は136万円(合計所得62万円以下)です。
  • 配偶者特別控除の壁(150万〜201万円)
    配偶者控除の要件を超えても、年収201万円以下であれば段階的に控除が受けられる制度です。2025年改正で配偶者特別控除の満額適用上限は160万円に引き上げられ、201万円で控除が消滅する点は変わりません。

社会保険の壁一覧|106万・130万円

社会保険の壁は税金とは独立した制度であり、適用される条件も異なります。

  • 106万円の壁(2026年10月に賃金要件撤廃)
    従業員数51人以上の企業で週20時間以上勤務し、月額賃金88,000円以上(年収約106万円以上)などの要件を満たすパート・アルバイトは、社会保険への加入義務があります。2026年10月からはこの月額賃金要件が撤廃され、週20時間以上の勤務という要件のみで判定されるようになります。年収に関わらず社会保険に加入するため、「106万円の壁」自体がなくなります。
  • 130万円の壁(存続、認定方法を変更)
    配偶者の扶養に入っている場合、年収130万円未満であれば健康保険の被扶養者・国民年金の第3号被保険者として保険料の自己負担がありません。130万円以上になると扶養から外れ、自身で社会保険に加入するか国民健康保険+国民年金に加入する必要があります。2026年4月からは、扶養認定が「労働契約書に基づく年収見込み」で判定される運用に変更されます。一時的な残業で年収が130万円を超えても、契約上の年収が130万円未満なら扶養が維持される仕組みです。

パート従業員の最適な年収はいくら?|2025年・2026年版

「結局いくらまで働くのが得なのか」という質問に対しては、2025年・2026年の制度変更を踏まえた回答が必要です。

2025年の判断基準として、税金面では年収160万円まで所得税がかかりません。社会保険面では、106万円の壁が残っているため、従業員数51人以上の企業で週20時間以上勤務する場合、年収106万円を超えると社会保険料の負担が発生します。社会保険料の負担は年間約15万〜20万円程度のため、106万円をわずかに超える年収帯では「働き損」が発生する可能性があります。

2026年10月以降の判断基準は大きく変わります。106万円の壁が撤廃されるため、週20時間以上勤務するパート従業員は年収に関わらず社会保険に加入します。

社会保険料の負担は発生しますが、将来の厚生年金受給額が増えるメリットもあります。税金面では年収178万円まで所得税がかかりません。

したがって、2026年10月以降は「年収の壁を気にして働き控えをする」動機が大幅に薄まります。企業としては、パート従業員に対して「壁がなくなるので、働ける時間を増やしやすくなります」という前向きな案内をするとよいでしょう。

経理担当者の実務対応|壁の変更に伴うシステム設定と従業員通知

年収の壁の変更に伴い、経理・人事部門が対応すべき実務を整理します。

  • 給与計算システムの更新
    2025年の年末調整に向けて、給与計算ソフトの税制改正アップデートを適用します。基礎控除の段階計算、給与所得控除の新速算表、特定親族特別控除の新設など、複数の変更が含まれるため、ソフトベンダーからのアップデート情報を早めに確認しましょう。
  • 扶養判定基準の変更対応
    配偶者控除の所得要件が48万円→58万円、扶養親族の所得要件も48万円→58万円に変更されるため、扶養判定の社内マニュアルを更新します。特に特定親族特別控除の新設は従来にない仕組みのため、年末調整の担当者への研修も必要です。
  • 従業員への説明資料の準備
    パート従業員向けに「年収の壁の変更に関する説明資料」を作成し、配布する準備を進めましょう。2026年10月の社会保険改正は特に影響が大きいため、遅くとも2026年夏までには説明会や資料配布を行うことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1:給与所得と給与収入の違いは何ですか?

給与収入は、会社から支給される給料・賞与等の額面の総額(源泉徴収票の「支払金額」欄の数字)を指します。一方、給与所得は給与収入から給与所得控除額を差し引いた後の金額です。たとえば年収500万円の場合、給与所得控除144万円を差し引いた356万円が給与所得となります。所得税や住民税は、この給与所得をもとに計算されます。

Q2:給与所得控除は自分で申告する必要がありますか?

申告は不要です。給与所得控除は給与等の収入金額に応じて自動的に計算されるため、確定申告や年末調整で特別な手続きをする必要はありません。会社の経理担当者が年末調整時に自動的に適用します。ただし、給与所得控除を超える仕事関連の自己負担がある場合は、「特定支出控除」として確定申告で追加控除を受けられる可能性があります。

Q3:2025年の税制改正で給与所得の計算はどう変わりますか?

2025年分から、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。また、基礎控除も48万円から最大95万円(合計所得金額132万円以下の場合)に拡充されます。これにより、所得税の課税最低限は103万円から160万円に引き上げられ、年収160万円以下の給与所得者は所得税がかからなくなります。この改正は2025年12月の年末調整から適用されます。

Q4:年収850万円を超えると給与所得控除はどうなりますか?

年収850万円を超えると、給与所得控除額は195万円で頭打ちになります。つまり、年収が900万円でも1,500万円でも、給与所得控除は195万円のままです。ただし、年収850万円超で23歳未満の扶養親族がいる場合や、本人が特別障害者の場合は「所得金額調整控除」(最大15万円)が追加で適用されます。

Q5:パートの年収が103万円を超えたらどうなりますか?

2025年分からは、所得税の課税最低限が103万円から160万円に引き上げられたため、年収103万円を超えても160万円以下であれば所得税はかかりません。ただし、配偶者控除の適用については別途判定が必要です。

2025年分の配偶者控除は年収123万円以下が要件であり、それを超えても201万円以下なら配偶者特別控除が段階的に適用されます。また、社会保険の壁(106万円・130万円)は税金とは別の制度のため、注意が必要です。

Q6:副業の収入も給与所得に含まれますか?

副業先から「給与」として支払われている場合は、その収入も給与所得に含まれます。この場合、主たる勤務先で年末調整を受けたうえで、副業分を含めた確定申告が原則として必要です。

一方、業務委託やフリーランスとしての副業収入は「雑所得」または「事業所得」に分類されるため、給与所得には含めません。所得区分は「契約形態」によって決まる点に注意してください。

Q7:給与所得の計算を間違えた場合、どう修正しますか?

年末調整の結果に誤りがあった場合は、翌年1月31日までであれば会社側で「再年末調整」を行うことが可能です。この期限を過ぎた場合は、従業員本人が確定申告(更正の請求を含む)で修正します。

税額が過少だった場合は追加納付が必要になり、過大だった場合は還付を受けることができます。経理担当者は、年末調整後も1月末まではデータを固定せず、修正に対応できる体制を維持しておきましょう。

まとめ|給与所得の計算を正確に行うために今すぐできること

本記事では、給与所得の基本的な定義から計算フロー、年収別シミュレーション、2025年・2026年の税制改正、年末調整の実務チェックリスト、源泉徴収票の見方、年収の壁の最新情報まで、経理・人事担当者が実務で必要とする情報を網羅的に解説しました。

最後に、記事の要点と今すぐ取りかかれるアクションを整理します。

  1. 要点①:給与所得の計算式をまず押さえる
    給与所得=給与収入(額面)−給与所得控除。この基本式がすべての出発点です。給与所得控除額は収入金額に応じた速算表で自動的に決まるため、正確な年収の把握が最優先事項です。
  2. 要点②:2025年・2026年の税制改正は過去に例のない規模
    給与所得控除の最低保障額が55万円→65万円→74万円と2年連続で引き上げられ、基礎控除は最大95万円→104万円に拡充。課税最低限は103万円→160万円→178万円と大幅に変動します。給与計算システムの更新と社内マニュアルの改訂を早めに進めましょう。
  3. 要点③:年末調整は10月から計画的に準備する
    扶養控除等申告書の配布・回収、保険料控除証明書の確認、中途入社者の前職源泉徴収票の回収など、やるべきことは多岐にわたります。チェックリストを活用し、漏れのない運用を心がけてください。
  4. 要点④:住民税と社会保険料も含めた「手取り」の全体像を把握する
    所得税だけでなく、住民税(基礎控除43万円で据え置き)と社会保険料(年収に対して約14.7%〜15.5%)を含めた総合的な視点が、従業員からの問い合わせに的確に対応するための鍵です。
  5. 要点⑤:年収の壁の変更はパート従業員への影響が最も大きい
    2026年10月の社会保険106万円の壁撤廃は特に大きな制度変更であり、パート従業員の働き方に直接影響します。早めの情報提供と、従業員向け説明資料の準備を進めることをおすすめします。

給与所得の計算は、正確さが求められる一方で、税制改正のたびにルールが変わるため、常に最新の情報にアップデートし続ける必要があります。本記事が、日々の実務を正確かつ効率的に進めるための一助となれば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

労務問題の課題解決メディア『ROUMU2.0』の企画編集部。企業法務弁護士ナビやBackOfficeDBなど、労務問題の解決手段を提供している。

目次