MENU

社会保険労務士(社労士)の仕事内容とは?業務一覧から依頼の流れ・費用相場【2026年最新】

労務士、社労士_違い

社会保険労務士(社労士)とは、企業の「ヒトに関する課題」を解決する国家資格者です。社会保険・労働保険の手続き代行から、就業規則の作成、助成金の申請支援、労務トラブルへの対応まで、その業務範囲は多岐にわたります。

しかし「社労士は具体的に何をしてくれるのか」「自社に必要なのか」がわからないという声は少なくありません。

本記事では、社労士の仕事内容を1号・2号・3号業務の法的分類だけでなく、企業が実際に依頼できる業務を場面別に10項目で解説します。

さらに、2025〜2026年の主要法改正で社労士の重要性がどう変わるのか、税理士・弁護士・行政書士との違い、企業規模別の活用パターン、費用相場、選び方のポイントまで網羅しました。

本記事を3行で表すと
  • 社労士の仕事は「手続き代行」「帳簿作成」「コンサルティング」の3分類で、うち2つは社労士だけが行える独占業務
  • 2025〜2026年は育児介護休業法改正・雇用保険法改正など法改正が集中し、社労士への相談需要が急増している
  • 顧問料の相場は従業員10人未満で月額2〜3万円から。企業規模やニーズに応じた活用法を選べる
目次

社労士(社会保険労務士)とは?——企業の「ヒトの専門家」

社労士の仕事内容を具体的に見ていく前に、まず「社労士とはどのような専門家なのか」という基本を押さえておきましょう。社労士は、企業経営に欠かせない「ヒト」にまつわる法律と実務の両面をサポートする存在です。

社労士の定義と役割——なぜ「ヒトの専門家」と呼ばれるのか

社会保険労務士(社労士)とは、社会保険労務士法に基づく国家資格者で、労働基準法や健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法など、70以上の労働・社会保険関連法令に精通した専門家です。

企業経営には「ヒト・モノ・カネ」の3つの資源が不可欠ですが、このうち「ヒト」に関する法律と実務を専門に扱うのが社労士です。具体的には、従業員の入退社に伴う社会保険の手続き、給与計算、就業規則の作成、助成金の申請、労務トラブルの予防と解決、さらには人事制度の設計まで、企業が「人を雇う」うえで発生するあらゆる課題に対応します。

税理士が「カネ」の専門家、弁護士が「法的紛争」の専門家であるのに対し、社労士は「働く人」と「雇う人」の間に立つ唯一の国家資格者という位置づけです。この役割の独自性が、社労士が「ヒトの専門家」と呼ばれる理由です。

社労士の登録者数と市場規模——全国46,000人超の専門家集団

厚生労働省の発表によると、社会保険労務士の登録者数は46,506人(令和7年8月31日現在)に達しています。この数字は年々増加しており、令和4年の44,504人から3年間で約2,000人の純増となっています。(参照元:第57回社会保険労務士試験の合格者発表|厚生労働省

登録者の内訳を見ると、個人で事務所を開いている開業社労士が約24,000人、企業の人事部などで働く勤務社労士が約17,000人、社労士法人の社員が約4,000人という構成です。つまり、社労士の半数以上が自ら事務所を構えて企業のサポートにあたっていることになります。

一方で、日本には約380万社の企業が存在し、労働人口は約6,800万人以上です。社労士1人あたりの企業数は80社以上にのぼる計算であり、特に中小企業の労務管理を支える社労士の需要は今後も増加すると見込まれています。

勤務社労士・開業社労士・社労士法人の違い

社労士としての働き方は、大きく3つに分かれます。それぞれの特徴を理解しておくと、企業が社労士に依頼する際の選び方にも役立ちます。

開業社労士は、個人で事務所を開き、複数の企業と顧問契約を結んで業務を行います。社労士全体の約半数を占めるボリュームゾーンで、中小企業の「かかりつけ医」のような存在です。経営者との距離が近く、きめ細かな対応が期待できる反面、個人事務所ゆえに対応キャパシティに限りがある場合もあります。

勤務社労士は、企業の人事部や総務部に所属し、自社の労務管理を担当します。社労士資格を持っていることで、法的な裏付けのある判断ができる人材として社内で重宝されます。外部に依頼するコストが発生しない一方、自社の業務に特化するため、幅広い業種の事例には触れにくいという側面もあります。

社労士法人は、複数の社労士が集まって設立された法人形態の事務所です。大手企業や従業員数が多い企業の対応に強く、複数の専門家によるチーム体制でサービスを提供します。全国に拠点を持つ大規模法人もあり、組織的な対応力が強みです。

社労士の仕事内容を3分類で理解する(1号・2号・3号業務)

社労士の仕事内容は、社会保険労務士法によって大きく3つの業務区分に整理されています。この分類は、社労士の業務範囲を理解するうえでの基本フレームワークです。

1号業務——行政機関への書類作成・提出代行(独占業務)

1号業務とは、労働社会保険諸法令に基づいて行政機関に提出する申請書や届出書などの書類を作成し、提出を代行する業務のことです。いわゆる「手続きの代行屋」としての側面であり、社労士業務の根幹をなします。

具体的には、以下のような業務が1号業務に該当します。

  • 従業員の入退社に伴う健康保険・厚生年金保険の資格取得届・喪失届の作成と提出
  • 雇用保険の資格取得届・離職票の作成と提出
  • 労災保険の請求手続き(療養補償給付、休業補償給付など)
  • 労働保険の年度更新(毎年7月の保険料申告・精算手続き)
  • 社会保険の算定基礎届(毎年7月の標準報酬月額の決定手続き)
  • 36協定届など各種労使協定の届出

これらの手続きは、提出先も年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署、協会けんぽなど多岐にわたり、書類の種類や様式もそれぞれ異なります。人事担当者が本業の傍らで全てを正確に処理するのは大きな負担であり、社労士に依頼する最も一般的な理由のひとつです。

2号業務——労働社会保険関係の帳簿書類作成(独占業務)

2号業務とは、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成する業務です。1号業務が「行政への提出書類」であるのに対し、2号業務は社内で整備・保管しなければならない書類の作成を指します。

代表的な2号業務としては、以下のようなものがあります。

  • 就業規則の作成・変更
  • 賃金台帳の調製
  • 労働者名簿の作成
  • 出勤簿タイムカードの管理体制の整備支援
  • 各種労使協定書の作成(36協定、変形労働時間制の労使協定など)

特に就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する事業場では作成・届出が法律で義務付けられています。就業規則は単なる社内ルールではなく、労働契約の内容を規律する法的効力を持つ重要な文書です。法改正のたびに見直しが必要になるため、社労士への依頼ニーズが特に高い分野です。

3号業務——人事労務に関するコンサルティング

3号業務とは、労務管理その他の労働に関する事項や、社会保険に関する事項について相談に応じ、指導を行う業務のことです。1号・2号が「書類を作成する」業務であるのに対し、3号は「助言・提案を行う」業務という位置づけです。

3号業務の範囲は非常に広く、以下のような相談・指導が含まれます。

  • 人事制度・賃金制度の設計・見直しに関する助言
  • 労働時間管理の適正化に関する指導
  • ハラスメント防止体制の構築支援
  • メンタルヘルス対策ストレスチェック制度の運用支援
  • 退職金制度の設計
  • 人材採用・定着に関する助言
  • 助成金・補助金の活用に関する情報提供とアドバイス

3号業務は、社労士が「手続き屋」から「経営のパートナー」へと進化するきっかけとなった業務領域です。近年は、単なる手続き代行よりもコンサルティング機能を重視する企業が増えており、社労士への期待も変わりつつあります。

独占業務とは?——無資格者が行った場合の罰則

1号業務と2号業務は社労士の独占業務に指定されています。これは、社労士の資格を持たない者がこれらの業務を業として(報酬を得て反復継続的に)行うことが法律で禁止されているという意味です。

社会保険労務士法第27条の規定に違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。つまり、社外のコンサルタントや無資格の外注業者に手続き代行を依頼する行為は、法律上のリスクを伴うということです。

参照元:社会保険労務士法|e-Gov法令検索

ただし、3号業務(コンサルティング)は独占業務ではないため、社労士資格を持たないコンサルタントや人事のプロフェッショナルも行うことができます。

特定社会保険労務士とは?——紛争解決代理業務(ADR)ができる社労士

社労士の中でも、さらに特別な研修を受講し、紛争解決手続代理業務試験に合格した社労士は「特定社会保険労務士」と呼ばれます。

特定社労士は、個別労働関係紛争(解雇や賃金未払いなどをめぐる労使間のトラブル)について、裁判によらない紛争解決手続(ADR:Alternative Dispute Resolution)の代理を行うことができます。具体的には、都道府県労働局が行う「あっせん」手続きにおいて、当事者の代理人として交渉にあたります。

これは2007年に社労士法改正によって付与された権限で、弁護士に依頼するよりも低コストかつ迅速に労使トラブルを解決できる手段として注目されています。ただし、あっせんの範囲を超える訴訟や労働審判の代理は弁護士の業務領域であり、特定社労士が扱うことはできません。

【場面別】社労士に依頼できる仕事内容10選

ここからは、法律上の分類(1号・2号・3号)ではなく、企業の人事・労務担当者が実際に直面する場面に沿って、社労士に依頼できる仕事を10項目に整理します。「自社はどの業務を依頼すべきか」を判断する参考にしてください。

①入退社に伴う社会保険・雇用保険の手続き

従業員が入社したとき、退社したとき、あるいは扶養家族の状況が変わったときには、社会保険や雇用保険の資格取得届・喪失届などを各行政機関に提出する必要があります。

入社時には健康保険・厚生年金の資格取得届をはじめ、雇用保険の資格取得届、被扶養者異動届、マイナンバーの届出などが発生します。退社時には資格喪失届に加え、離職票の作成(雇用保険被保険者離職証明書)が必要です。特に離職票は、退職者が失業給付を受け取るために不可欠な書類であり、記載内容に誤りがあると退職者に不利益が生じるため、正確な作成が求められます。

これらの手続きは期限が決まっており(多くは事実発生から5日以内または10日以内)、繁忙期に入退社が重なると処理が追いつかなくなることも珍しくありません。社労士に委託すれば、期限管理から書類作成、電子申請までを一括して任せることができます。

②給与計算の代行

毎月の給与計算は、単に勤怠データから支給額を算出するだけの作業ではありません。残業代の計算には割増賃金率の正確な適用(時間外25%、深夜25%、休日35%など)が必要であり、社会保険料・雇用保険料・源泉所得税・住民税の控除額も毎月変動する可能性があります。

さらに、年に一度の算定基礎届(4〜6月の報酬をもとに標準報酬月額を決定する手続き)や、報酬が大幅に変動した際の月額変更届(随時改定)も給与計算と密接に関連する業務です。

社労士に給与計算を依頼することで、計算ミスによる未払い残業代リスクを防止でき、社会保険料の変更にもタイムリーに対応できます。

③就業規則・社内規程の作成と届出

就業規則とは、労働条件や職場のルールを定めた社内規程です。労働基準法第89条により、常時10人以上の従業員を使用する事業場では就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。

参照元:就業規則を作成しましょう|厚生労働省

就業規則には、始業・終業時刻、休日・休暇、賃金の決定方法、退職に関する事項(解雇事由を含む)など、法律で定められた必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)があります。加えて、退職手当、賞与、安全衛生、教育訓練など、制度を設ける場合に記載が必要な相対的必要記載事項もあります。

就業規則は一度作れば終わりではなく、法改正のたびに見直しが必要です。2025年だけでも育児介護休業法の改正に伴い、子の看護休暇の規定や残業免除の対象範囲、介護休業の要件など、多くの項目で改定が求められています。こうした法改正への対応を自力で行うのは困難であり、社労士に依頼する最大の理由のひとつとなっています。

④助成金・補助金の申請支援

助成金とは、厚生労働省が所管する雇用や労働条件の改善を目的とした給付金制度です。返済不要で受け取れるため、活用すれば企業の資金繰りに大きく貢献します。しかし、助成金は種類が多く、支給要件も複雑なため、自力で申請するのはハードルが高いのが実情です。

企業がよく活用する助成金の例としては、キャリアアップ助成金(非正規従業員の正社員化等を支援)、人材開発支援助成金(従業員の教育訓練を支援)、両立支援等助成金(育児・介護と仕事の両立を支援)、働き方改革推進支援助成金(労働時間の短縮や年次有給休暇の促進を支援)などがあります。

社労士は、自社が受給できる助成金の診断から、申請書類の作成、必要な社内制度の整備支援、受給後の報告書作成まで、一連のプロセスを代行します。助成金申請は社労士の独占業務(1号業務)に含まれるため、社労士以外の者が報酬を得て代理申請することは法律で禁止されています。

⑤労務トラブル(残業未払い・ハラスメント等)への対応

労務トラブルは、企業経営にとって最も深刻なリスクのひとつです。未払い残業代の請求、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの訴え、不当解雇の主張、メンタルヘルス不調による休職者の対応など、トラブルの類型は多岐にわたります。

社労士は、これらのトラブルを未然に防止するための予防策(就業規則の整備、ハラスメント防止規程の策定、管理職研修の実施支援など)と、発生後の対応策(事実関係の調査助言、行政からの是正勧告への対応、再発防止策の策定など)の両面で企業をサポートします。

特に、先述の特定社会保険労務士であれば、都道府県労働局のあっせん手続きにおいて企業側の代理人を務めることも可能です。弁護士に依頼するよりも費用を抑えられるため、中小企業にとっては心強い選択肢です。

⑥36協定など労使協定の作成・届出

36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づき、従業員に時間外労働や休日労働をさせるために必要な労使協定です。この協定を締結し、労働基準監督署に届け出ないまま残業をさせると、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

36協定は毎年更新が必要であり、2019年4月施行の働き方改革関連法による時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内)に適合した内容で作成しなければなりません。

参照元:時間外労働の上限規制|厚生労働省

36協定以外にも、変形労働時間制に関する労使協定フレックスタイム制に関する労使協定年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定など、企業が導入する制度に応じてさまざまな協定の締結・届出が必要になります。社労士は、自社の労働時間制度に合った協定書の作成から届出までを一貫して支援します。

⑦労働基準監督署・年金事務所の調査対応

企業は、労働基準監督署の臨検監督(いわゆる「労基署の調査」)や、年金事務所の算定基礎届調査(社会保険の調査)を受けることがあります。調査は事前予告なく行われる場合もあり、適切に対応できないと是正勧告指導票の交付を受け、改善を求められます。

社労士は、調査の事前準備(必要書類の点検、不備の修正)から、調査当日の立ち会い、調査後の是正対応(改善報告書の作成・提出)まで、一連の流れをサポートします。特に、賃金台帳や出勤簿の不備、36協定の未届、社会保険の未加入などは頻出の指摘事項であり、日頃から社労士が関与していれば未然に防げるケースがほとんどです。

⑧人事制度・賃金制度の設計コンサルティング

「評価制度がない」「給与の決め方が不透明」「優秀な社員が辞めてしまう」——こうした人事上の悩みに対して、社労士は人事制度・賃金制度の設計コンサルティング(3号業務)で応えます。

具体的には、等級制度(職能資格制度や役割等級制度の設計)、評価制度(目標管理制度や行動評価の導入支援)、報酬制度(基本給テーブルの設計、手当の見直し、賞与算定ルールの策定)などを、企業の規模や業種に合わせてカスタマイズします。

近年は、同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)への対応として、正社員と非正規社員の待遇差を合理的に説明できる制度設計が求められる場面も増えています。こうした制度設計は、労働法に精通した社労士の知見が特に活きる領域です。

⑨労働安全衛生(ストレスチェック・産業医連携等)のサポート

労働安全衛生法により、企業には従業員の安全と健康を確保するためのさまざまな義務が課されています。常時50人以上の従業員を使用する事業場では、以下のような措置が法的に義務付けられています。

参照元:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省

  • 産業医の選任
  • 衛生委員会の設置と毎月の開催
  • ストレスチェックの年1回実施
  • 定期健康診断の実施と結果の報告

社労士は、これらの法定義務を漏れなく実施するための運用設計や、産業医との連携体制の構築、ストレスチェック後の高ストレス者への面接指導のフロー策定などを支援します。従業員のメンタルヘルス対策が経営課題として注目される中、労働安全衛生分野に強い社労士の需要は高まっています。

⑩年金相談・ライフプラン支援

社労士の仕事は企業向けの業務だけではありません。年金制度に関する相談・指導も社労士の重要な業務領域です。

老齢年金・障害年金・遺族年金の受給要件の確認、年金の裁定請求手続き(年金を受け取るための申請)の代行、複雑な年金記録の整理などが代表的な業務です。特に障害年金の請求は、初診日の証明や病歴・就労状況等申立書の作成など専門的なノウハウが求められるため、社労士に依頼するケースが多い分野です。

企業の人事部門においても、定年退職する従業員への年金相談や、在職老齢年金(働きながら年金を受け取る制度)の説明など、社労士の年金知識が役立つ場面は少なくありません。

【2025〜2026年】法改正で社労士の重要性が増す理由

企業が社労士を必要とする最大の理由のひとつが、頻繁に行われる労働関連法令の改正への対応です。2025〜2026年は、特に改正が集中する時期にあたります。ここでは、企業の人事・労務担当者が押さえておくべき主要な法改正と、社労士がどのように関与するかを解説します。

育児・介護休業法改正(2025年4月・10月)——企業が対応すべきポイント

2025年の育児・介護休業法改正は、4月と10月の2段階で施行される大規模な改正です。全部で11項目にわたる改正が行われ、企業規模を問わず全ての事業主が対応を求められます。

2025年4月施行の主な改正点は以下のとおりです。

  • 子の看護休暇の拡充:対象を「小学校就学前」から「小学校3年生修了前」に拡大。取得事由に、学級閉鎖や入園式・卒園式なども追加
  • 所定外労働の免除(残業免除)対象拡大:対象を「3歳未満の子を養育する労働者」から「小学校就学前の子を養育する労働者」に拡大
  • 育児休業取得状況の公表義務拡大:公表義務の対象を「従業員1,000人超」から「従業員300人超」の企業に拡大
  • 介護離職防止のための措置義務化:介護に直面した従業員への個別周知・意向確認や、40歳到達時の情報提供が義務化

2025年10月施行の主な改正点は以下のとおりです。

  • 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化:3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者に対し、事業主は①始業時刻等の変更、②テレワーク等(月10日以上)、③保育施設の設置運営等、④養育両立支援休暇(年10日以上)、⑤短時間勤務制度の5つから2つ以上を選択して導入する義務が発生
  • 個別の意向聴取・配慮の義務化:妊娠・出産の申出時と子が3歳になるまでの適切な時期に、勤務時間帯や勤務地等の希望を個別に聴取し、配慮することが義務化

これらの改正は、就業規則の改定、労使協定の見直し、社内規程の整備、従業員への周知、管理職向け研修の実施など、広範囲の実務対応を必要とします。法令に違反した場合は厚生労働大臣からの助言・指導・勧告を受ける可能性があり、勧告に従わなければ企業名が公表されるリスクもあります。社労士は、こうした一連の対応をワンストップで支援できる専門家です。

参照元:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内|厚生労働省

雇用保険法改正(2025年4月)——出生後休業支援給付で実質手取り10割へ

育児介護休業法の改正と連動して、雇用保険法も2025年4月に改正されました。特に注目すべきは、2つの新しい給付制度の創設です。

出生後休業支援給付は、男性の育児休業取得を促進するために新設された制度です。従来の育児休業給付金(休業開始から180日間は賃金の67%支給)に加え、この給付が上乗せされることで、社会保険料の免除分と合わせて実質的な手取りが休業前の約10割に達する仕組みとなっています。

育児時短就業給付は、育児のために所定労働時間を短縮して働く従業員に対して、賃金の一部を補填する給付です。短時間勤務による収入減を軽減することで、育児期の就労継続を支援する狙いがあります。

これらの給付制度は、企業側が従業員に適切に案内し、申請手続きをサポートする必要があります。制度の内容が複雑なため、社労士のサポートを受けることで正確かつスムーズな運用が可能になります。

参照元:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要|厚生労働省

フリーランス新法(2024年11月施行済)——業務委託の新ルールと社労士の関与

2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法)は、フリーランスへの業務委託について新たなルールを定めた法律です。

この法律により、発注事業者は、フリーランスに業務を委託する際、報酬額・支払期日・業務内容などを書面またはメール等で明示する義務を負います。また、報酬の支払期日は成果物の受領日から60日以内と定められ、不当な減額や買いたたきも禁止されています。

企業がフリーランスや個人事業主に業務を委託している場合、契約書の見直しや社内の発注フローの整備が必要です。社労士は、業務委託契約と雇用契約の境界線(いわゆる「偽装請負」のリスク判断)について助言できる専門家であり、フリーランス活用の適正化を支援します。

参照元:フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)|厚生労働省

カスタマーハラスメント防止義務化(2026年予定)——就業規則の改定が急務に

2026年には、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止のための措置が事業主に義務付けられる見通しです。厚生労働省の労働政策審議会で議論が進んでおり、パワハラ・セクハラと同様に、企業に対して防止措置を講じることが法的に求められるようになります。

具体的には、カスハラに関する方針の明確化と周知・啓発相談体制の整備被害を受けた従業員への配慮措置などが義務化される見込みです。

企業としては、就業規則へのカスハラ対応規定の追加、対応マニュアルの策定、相談窓口の設置・運用ルールの整備などが必要になります。これらは社労士が日頃から支援している分野であり、法施行前の早期対応を社労士に相談することが望ましいでしょう。

社会保険適用拡大の今後——対象企業はさらに広がる見通し

社会保険の適用拡大は、段階的に進められてきた制度改正です。2016年に従業員501人以上の企業が対象となり、2022年に101人以上、2024年10月には51人以上の企業にまで拡大されました。

参照元:社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省

今後は、従業員数の基準がさらに引き下げられる方向で議論が進んでおり、5人以上の個人事業所への適用拡大も検討されています。適用拡大が実施されると、これまで社会保険に加入していなかったパート・アルバイト従業員の加入手続きが必要になり、企業の社会保険料負担も増加します。

社労士は、適用拡大の対象となる従業員の洗い出し、加入手続きの実施、従業員への説明、人件費シミュレーションなど、事前の準備から実務対応までをトータルで支援します。

社労士と税理士・弁護士・行政書士の違い——場面別の使い分けガイド

企業の管理部門が関わる専門家は社労士だけではありません。税理士、弁護士、行政書士など、さまざまな士業がそれぞれの専門領域で企業を支えています。ここでは、各士業の業務範囲の違いと、場面ごとの使い分けを解説します。

4士業の業務範囲を一覧表で比較

場面・業務社労士税理士弁護士行政書士
社会保険・雇用保険の手続き◎(独占業務)×××
給与計算△(税務顧問の一環で対応する場合あり)××
就業規則の作成◎(独占業務)×△(法的チェックは可能)×
助成金の申請◎(独占業務)×××
労務トラブルの予防・ADR◎(特定社労士)×◎(訴訟・労働審判も対応)×
確定申告・税務申告×◎(独占業務)××
記帳代行・経理業務×××
税務調査への対応×◎(独占業務)××
訴訟・労働審判××◎(独占業務)×
契約書の作成・レビュー××△(一部対応可)
建設業許可などの許認可申請×××◎(独占業務)
会社設立の登記×××△(書類作成は可、登記は司法書士)
人事制度・賃金制度の設計×××
年金相談・障害年金の請求×××

「人を雇ったとき」は社労士、「税金」は税理士、「契約書」は行政書士、「訴訟」は弁護士

覚え方はシンプルです。「ヒトの問題は社労士、カネの問題は税理士、権利の争いは弁護士、許認可は行政書士」と整理すると、相談先を迷うことが少なくなります。

たとえば、「従業員を初めて雇うことになった」という場面では、社会保険・雇用保険の加入手続き、雇用契約書の作成、就業規則の整備が必要です。これらは全て社労士の業務領域です。一方、「法人税の申告をしたい」「消費税のインボイス対応を相談したい」という場面では税理士に相談します。

実務上は、社労士と税理士が連携して企業をサポートするケースが多く、特に中小企業では「顧問税理士と顧問社労士の両方と契約する」というパターンが一般的です。

社労士と税理士のグレーゾーン——給与計算はどちらに頼むべき?

給与計算は、社労士と税理士の業務が重なるグレーゾーンとして知られています。結論からいえば、給与計算そのものはどちらに依頼しても問題ありません。しかし、それぞれの強みは異なります。

社労士に依頼するメリットは、社会保険料の計算や雇用保険料の控除、入退社に伴う手続きとの連動がスムーズに行える点です。給与計算から算定基礎届、月額変更届、年度更新までを一気通貫で対応できるのは社労士ならではの強みです。

税理士に依頼するメリットは、源泉所得税の計算や年末調整、法定調書の提出など、税務関連の処理と給与計算を一括で処理できる点です。特に、顧問税理士が記帳代行も行っている場合は、給与データと会計データの連携が容易になります。

自社の状況に応じて、どちらの専門家に依頼するのが効率的かを検討するとよいでしょう。社会保険手続きが多い企業なら社労士、税務処理との連動を重視するなら税理士、という使い分けが実務的です。

【企業規模別】社労士の活用パターンと優先すべき依頼内容

「社労士に依頼すべきかどうか」「何を優先的に任せるべきか」は、企業の規模(従業員数)によって大きく変わります。ここでは、企業規模別に社労士の活用パターンを整理します。

従業員5人以下の個人事業主・スタートアップ

従業員が少ない段階では、社会保険・雇用保険の手続き自体はそれほど頻繁に発生しません。しかし、初めて人を雇うときには、社会保険の新規適用手続き、雇用契約書の作成、36協定の締結・届出、就業規則の整備(10人未満でも任意で作成可能)など、一気にやるべきことが発生します。

この段階では、顧問契約よりもスポット契約(必要な時だけ依頼する方式)が適していることが多いでしょう。初期設定を社労士にしっかり整えてもらい、その後は年に数回の手続き(年度更新・算定基礎届など)をスポットで依頼する、というパターンが効率的です。

従業員10〜50人の成長企業

従業員が10人を超えると、就業規則の作成・届出が法的義務になります。また、入退社の頻度が増え、残業管理や有給休暇の取得状況の把握など、労務管理の負荷が急速に高まる時期です。

この規模の企業にとっては、月額2〜5万円程度の顧問契約を結び、日常的な労務相談と手続き代行を任せるのが最も費用対効果の高い選択肢です。特に、人事専任担当者を雇用する余裕がない企業にとって、社労士は「外部の人事部長」として機能します。

助成金の活用も積極的に検討すべきフェーズです。キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は、成長企業が正社員化や社員教育を推進する際に大きな財務的支援となります。

従業員50〜300人の中堅企業

従業員50人以上になると、産業医の選任衛生委員会の設置ストレスチェックの実施が法的に義務付けられます。また、2025年4月の育児介護休業法改正により、従業員300人超の企業には男性の育児休業取得率の公表義務が課されるようになりました。

参照元:男性労働者の育児休業取得率等の公表について|厚生労働省

この規模の企業では、手続き代行に加えてコンサルティング(3号業務)の比重が高まります。人事制度・賃金制度の設計、ハラスメント防止体制の構築、管理職研修の実施支援など、組織の成長に伴う「仕組みづくり」を社労士に相談するケースが増えます。

顧問料の相場は月額5〜10万円程度ですが、依頼する業務の範囲によって変動します。複数の社労士事務所から見積もりを取り、自社のニーズに合ったプランを選ぶことが重要です。

従業員300人以上の大企業

大企業では、自社内に人事・労務の専門部署を持っていることがほとんどです。しかし、社労士への依頼ニーズがなくなるわけではありません。

大企業が社労士法人に委託するケースとしては、グループ会社全体の社会保険手続きの集約(シェアードサービス)、全国拠点の労務管理の統一大規模な制度改定プロジェクトへの参画M&A(企業買収)に伴う労務デューデリジェンスなどがあります。

この規模になると、個人の開業社労士よりも複数の専門家を擁する社労士法人との契約が一般的です。顧問料は月額10万円以上になることも珍しくなく、プロジェクト単位での契約も行われます。

社労士に依頼する流れ——初回相談から業務完了まで

「社労士に頼みたいが、具体的にどう進めればいいかわからない」という声は多いものです。ここでは、企業が社労士に依頼する際の一般的な実務フローを5つのステップで解説します。

ステップ① 自社の課題を整理する

まず行うべきは、自社が抱える労務上の課題や依頼したい業務を洗い出すことです。

たとえば、「入退社の手続きに毎回時間がかかる」「就業規則が古くて法改正に対応できていない」「助成金を活用したいがどれが使えるかわからない」「労基署の調査が入りそうで不安」など、困っていることを具体的にリストアップしましょう。

このステップを踏んでおくと、社労士への相談がスムーズになり、見積りの精度も上がります。

ステップ② 社労士を探す・初回相談する(無料相談の活用法)

社労士の探し方としては、以下のような方法があります。

  • 全国社会保険労務士会連合会のWebサイトで地域の社労士を検索する
  • 各都道府県の社労士会が運営する「社労士紹介制度」を利用する
  • 知人の経営者や顧問税理士からの紹介を受ける
  • 社労士のマッチングサービス(社労士ナビ、社労士ステーションなど)を活用する

多くの社労士事務所は初回相談を無料で行っています。この段階では、自社の課題を伝え、対応方針と概算の費用感を確認しましょう。相性やコミュニケーションスタイルも重要な判断材料です。できれば2〜3社に相談して比較検討することをおすすめします。

ステップ③ 見積り・契約形態を決める(顧問契約 vs スポット契約)

社労士との契約形態は、大きく顧問契約スポット契約の2種類があります。

顧問契約は、月額固定の顧問料を支払い、日常的な労務相談と手続き代行をまとめて委託する方式です。「何かあったときにすぐ相談できる」安心感があり、継続的な労務管理を必要とする企業に適しています。

スポット契約は、就業規則の作成や助成金の申請など、特定の業務を単発で依頼する方式です。定額の月額費用は発生しないため、依頼頻度が少ない企業やコストを抑えたい企業に向いています。

見積りを受け取ったら、月額料金に含まれる業務範囲(手続き代行は別料金なのか、相談回数の制限はあるかなど)を必ず確認してください。社労士事務所によってプランの内容は大きく異なります。

ステップ④ 情報共有・業務開始

契約が決まったら、社労士と円滑に連携するための情報共有体制を整えます。具体的には、以下のようなデータ・書類を社労士に提供します。

  • 従業員名簿(氏名、生年月日、入社日、雇用形態、報酬額など)
  • 現行の就業規則・賃金規程
  • 36協定など既存の労使協定
  • 直近の給与台帳・出勤簿
  • 社会保険・雇用保険の加入状況がわかる資料

最近は、クラウド型の労務管理システム(freee人事労務、SmartHR、マネーフォワードクラウドなど)を介してデータをやり取りするケースも増えています。社労士がこうしたシステムに対応しているかどうかは、契約前に確認しておくとよいでしょう。

ステップ⑤ 定期的なレビューと契約の見直し

社労士との契約は「結んで終わり」ではありません。自社の従業員数の増減、事業の変化、法改正の状況に応じて、契約内容を定期的に見直すことが重要です。

たとえば、従業員が増えれば手続きの量も増えるため、顧問料のプラン変更が必要になる場合があります。逆に、社内に人事専任者を採用した場合は、委託範囲を縮小してコストを抑えることも考えられます。

年に1回程度、社労士と「今の契約内容が自社の現状に合っているか」を確認する場を設けることをおすすめします。

社労士の費用相場——顧問料・スポット料金の目安

社労士に業務を依頼する際、最も気になるのが費用です。かつては社会保険労務士会が一律の報酬基準を定めていましたが、現在は報酬が自由化されており、事務所ごとに料金が異なります。ここでは、一般的な費用相場の目安を紹介します。

顧問契約の月額相場(従業員数別)

顧問契約の月額費用は、従業員数に応じて段階的に設定されているのが一般的です。以下の表は、社会保険・雇用保険の手続き代行と労務相談を含む標準的な顧問契約の相場です。

従業員数月額顧問料の目安
5人未満1.5万〜2万円
5〜9人2万〜3万円
10〜19人3万〜5万円
20〜29人5万〜6万円
30〜49人6万〜8万円
50〜99人8万〜12万円
100人以上12万円〜(個別見積り)

※給与計算代行、コンサルティング業務は別途費用が発生するケースが大半です。

顧問料には「手続き+相談」がセットになったプランと、「相談のみ」のプランが存在する事務所もあります。自社が何を依頼したいかを明確にしたうえで、複数の見積りを比較しましょう。

スポット依頼の費用目安(就業規則作成・助成金申請・給与計算等)

顧問契約を結ばずに、特定の業務だけを単発で依頼する場合の費用目安は以下のとおりです。

依頼内容費用の目安
就業規則の新規作成15万〜30万円
就業規則の改定(部分修正)5万〜15万円
36協定の作成・届出2万〜5万円
助成金の申請代行着手金5万〜10万円 + 成功報酬(受給額の10〜20%)
給与計算(月額)基本料1万〜3万円 + 1人あたり500〜1,500円
労基署・年金事務所の調査対応5万〜15万円
人事制度設計コンサルティング30万〜100万円以上(規模・期間による)

スポット契約は「必要な時だけ費用が発生する」メリットがある一方、急ぎの案件に対応してもらえない可能性があるというデメリットもあります。

費用対効果の考え方——「コスト」ではなく「投資」と捉える視点

社労士への報酬を「コスト」として見ると、特に中小企業にとっては負担に感じるかもしれません。しかし、以下のような観点で考えると、社労士への依頼は「投資」としての意味合いが大きいことがわかります。

時間の節約として考えると、人事担当者が手続きや法改正対応に費やす時間を本業に振り向けられます。仮に月20時間の労務関連作業を社労士に委託し、人事担当者の時給を2,000円とすると、月4万円相当の工数を削減できる計算です。

リスクの低減として考えると、残業代の未払いや社会保険の未加入が発覚した場合、遡及して支払いが発生するリスクがあります。悪質な場合は書類送検の可能性もあり、企業の信用に関わります。社労士が日常的に労務管理をチェックすることで、こうしたリスクを未然に防げます。

助成金の獲得として考えると、社労士に助成金の診断・申請を依頼した結果、数十万〜数百万円の助成金を受給できたケースは珍しくありません。顧問料をはるかに上回るリターンが得られることもあります。

失敗しない社労士の選び方5つのポイント

社労士事務所は全国に数多く存在し、それぞれ得意分野やサービスの質、対応スタイルが異なります。自社に合った社労士を選ぶための5つのポイントを紹介します。

①得意分野が自社のニーズと合っているか

社労士にも得意分野があります。助成金に強い社労士、就業規則や人事制度設計を専門とする社労士、労務トラブルの解決に強い特定社労士など、それぞれのバックグラウンドによって得意領域は異なります。

自社の課題が明確であれば、その分野に実績のある社労士を選ぶのが最善です。初回相談時に「この分野での対応実績はどのくらいありますか」と率直に聞いてみましょう。

②レスポンスの速さとコミュニケーション力

労務の相談は、法改正への対応や従業員とのトラブルなど、スピードが求められる場面が少なくありません。メールの返信が翌日以降になる、電話がなかなかつながらない、という社労士では、いざというときに頼りになりません。

初回相談の段階で、問い合わせへの対応速度や説明のわかりやすさを実際に体感しておくことが大切です。

③情報セキュリティ対策の水準

社労士には、従業員のマイナンバー、給与情報、健康診断結果など、高度な個人情報を預けることになります。情報漏えいは企業の信用を直接毀損するリスクがあるため、社労士事務所の情報セキュリティ体制は必ず確認しましょう。

具体的には、プライバシーマーク(Pマーク)の取得状況、社労士個人情報保護事務所認証(SRP認証)の有無、データの暗号化やアクセス権限の管理体制などが確認ポイントです。

④自社の労務管理システムとの連携可否

自社がクラウド型の勤怠管理システムや給与計算ソフトを導入している場合、社労士がそのシステムに対応しているかどうかは重要な確認事項です。

たとえば、SmartHR、freee人事労務、マネーフォワードクラウド、KING OF TIMEなどを利用している企業が多いですが、社労士事務所によっては特定のシステムにしか対応していないケースもあります。システムの互換性が低いと、データの二重入力が発生し、かえって手間が増える可能性があります。

⑤契約前に確認すべき質問リスト

初回相談や見積り依頼の際には、以下のような質問を投げかけてみてください。

  • 顧問料に含まれる業務範囲はどこまでですか?(手続き代行・相談・就業規則のメンテナンスなど)
  • 手続き代行の追加料金はありますか?(入退社ごとの費用など)
  • 契約期間の縛りはありますか?(最低契約期間の有無)
  • 緊急時(労基署の調査、従業員とのトラブル等)の対応はどうなりますか?
  • 担当者は社労士有資格者ですか?(事務スタッフが対応する場合もある)
  • 電子申請に対応していますか?
  • 自社が使っている労務管理システムとの連携は可能ですか?

これらの質問への回答を比較することで、自社にとって最適な社労士事務所を見極めやすくなります。

社労士になるには?——資格試験・キャリアパスの概要

ここまで企業が社労士を「活用する」側の視点で解説してきましたが、「社労士になりたい」という方向けに、資格取得とキャリアパスの概要も簡潔にまとめます。

社労士試験の受験資格と試験概要

社会保険労務士試験は、毎年8月の第4日曜日に全国19都道府県で実施される国家試験です。受験するには、以下のいずれかの受験資格を満たす必要があります。

  • 学歴要件:大学、短期大学、高等専門学校(5年制)を卒業していること、または大学において62単位以上を修得していること
  • 実務経験要件:労働社会保険関係の事務に3年以上従事していること
  • 資格要件:行政書士、司法書士、公認会計士などの国家資格を保有していること

試験科目は、選択式(8科目・40点満点)と択一式(7科目・70点満点)の2種類で構成されます。出題範囲は、労働基準法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法、労働安全衛生法、労災保険法など10科目以上に及び、広範な法律知識が問われます。

合格率と難易度——合格率5〜7%の国家資格

第57回(令和7年度)の試験結果は、受験者数43,421名に対し合格者数2,376名、合格率は5.5%でした。例年の合格率はおおむね5〜7%で推移しており、難関国家資格のひとつに数えられます。

参照元:第57回社会保険労務士試験の合格者発表|厚生労働省

合格に必要な学習時間は一般的に800〜1,000時間程度とされ、働きながら取得を目指す場合は1〜2年の学習期間が目安です。合格者の年齢層は30〜40代が全体の6割以上を占めており、キャリアアップを目指す社会人が多い試験です。

なお、第57回試験の合格者のうち、女性の割合は39.7%で過去最高水準を更新しています。女性社労士の活躍の場が広がっていることの表れといえるでしょう。

参照元:社労士の合格発表2025年最新!|HUPRO MAGAZINE

合格後のキャリアパス(社労士事務所・企業人事・独立開業)

試験に合格した後は、2年以上の実務経験または厚生労働大臣指定の講習(事務指定講習)の修了を経て、全国社会保険労務士会連合会への登録を行います。登録が完了して初めて「社会保険労務士」を名乗ることができます。

キャリアパスとしては、以下の3つが代表的です。

社労士事務所・社労士法人に就職するのは、実務経験を積むための最もオーソドックスなルートです。さまざまな業種・規模の企業の労務管理に携わることで、幅広い知見を身につけることができます。

企業の人事部・総務部で勤務社労士として働くパターンも増えています。社労士資格を持っていることで、人事部門内での評価が高まり、キャリアアップや昇給につながるケースが多いです。

独立開業するのは、自分の裁量で働きたい人にとって魅力的な選択肢です。開業社労士の約56%が1人事務所として活動しており、小規模でも始められる士業として人気があります。

よくある質問(FAQ)

社労士と社会保険労務士は同じですか?

はい、同じです。「社会保険労務士」が正式名称であり、「社労士」はその略称です。法律上の名称は社会保険労務士法に基づく「社会保険労務士」ですが、実務上は「社労士」と呼ばれることがほとんどです。

社労士への相談は無料でできますか?

多くの社労士事務所は、初回相談を無料で行っています。また、各都道府県の社労士会が開催する無料相談会や、自治体の労務相談窓口を利用する方法もあります。ただし、具体的な書類作成や手続き代行を依頼する場合は有料となります。

個人事業主でも社労士に依頼できますか?

はい、できます。個人事業主でも従業員を雇用していれば、社会保険や雇用保険の手続き、就業規則の作成、助成金の申請などを社労士に依頼することが可能です。従業員がいない場合でも、自身の年金相談などを社労士に相談することもできます。

社労士と税理士、どちらに先に相談すべきですか?

一般的には、「人を雇う」タイミングで社労士に、「事業の収支を管理する」タイミングで税理士に相談するのが自然な流れです。法人設立時には、会社設立の登記は司法書士、税務関連は税理士、社会保険・労働保険の加入手続きは社労士と、それぞれの専門家に同時期に相談するケースが多いです。

社労士の仕事はAIに代替されますか?

社労士の業務のうち、定型的な手続き代行(書類の作成・提出)は、電子申請の普及やAI技術の発展によって効率化が進む可能性があります。しかし、複雑な法律の解釈が求められる労務相談、企業ごとの事情に応じた人事制度設計、労使トラブルの予防・解決といったコンサルティング業務は、AIによる完全な代替が困難とされています。今後は、手続き業務からコンサルティング業務へと社労士の役割の重心がシフトしていくと考えられます。

顧問契約とスポット契約、どちらがお得ですか?

一概にどちらがお得とは言い切れません。手続きの発生頻度が月1回以上ある、日常的に労務相談が発生する、法改正への対応を継続的に任せたいという企業は顧問契約が向いています。一方、年に数回の手続きだけで十分、特定の業務(就業規則の作成など)だけを依頼したいという企業はスポット契約のほうがコストを抑えられます。

社労士に依頼すると助成金はいくらもらえますか?

受給額は助成金の種類や企業の取り組み内容によって大きく異なります。たとえば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)では、非正規従業員を正社員に転換した場合、1人あたり最大80万円(中小企業の場合)が支給されます。ただし、助成金にはそれぞれ細かい支給要件があり、要件を満たしていなければ受給できません。社労士に相談すれば、自社が受給可能な助成金の診断から申請までをサポートしてもらえます。

まとめ——社労士は企業経営における「ヒトの保険」

本記事では、社労士の仕事内容を1号・2号・3号業務の法的分類、場面別の依頼業務10選、2025〜2026年の法改正対応、他士業との比較、企業規模別の活用パターン、費用相場、選び方のポイントまで、網羅的に解説しました。

社労士は、企業の「ヒトに関する課題」を解決する国家資格者です。その役割は、単なる手続き代行にとどまらず、法改正への対応、労務リスクの予防、人事制度の設計、助成金の活用支援まで、企業経営の根幹を支える広範なものです。

特に2025〜2026年は、育児介護休業法の大幅改正、雇用保険法の給付制度新設、カスタマーハラスメント防止の義務化など、企業が対応すべき法改正が集中しています。法改正のたびに就業規則を見直し、社内制度を更新し、従業員に周知する——この一連の作業を自力で完璧にこなすのは、多くの企業にとって現実的ではありません。

社労士は、いわば企業経営における「ヒトの保険」です。万が一のトラブルに備える保険としてだけでなく、日常的な労務管理の質を高め、企業と従業員の双方にとってより良い職場環境を実現するためのパートナーとして、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

労務問題の課題解決メディア『ROUMU2.0』の企画編集部。企業法務弁護士ナビやBackOfficeDBなど、労務問題の解決手段を提供している。

目次