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戒告処分(かいこくしょぶん)とは?意味・具体例・手続きの流れをわかりやすく解説

戒告処分

戒告処分とは、懲戒処分のなかで最も軽い処分であり、従業員の問題行動に対して将来を戒めるために口頭または文書で注意を申し渡す措置です。

人事院の発表によると、令和6年(2024年)に国家公務員が受けた懲戒処分285件のうち戒告は81件と全体の約28%を占めており、実務でもっとも多く適用される懲戒処分のひとつといえます。

本記事では、人事労務担当者や中小企業の経営者に向けて、戒告処分の定義から他の処分との違い、対象となる具体的な行為、手続きの進め方、処分後のフォローアップまでを体系的に解説します。この記事を読めば、戒告処分に関する実務上の疑問がすべて解消できます。

この記事の要約
  • 戒告処分は懲戒処分のなかで最も軽く、口頭または文書で将来を戒める処分である
  • 対象となる行為は無断欠勤・遅刻常習・軽微な規律違反など多岐にわたり、就業規則の根拠が必要
  • 処分を適正に行うためには事実調査→弁明の機会付与→書面通知→フォローアップの手順が不可欠
目次

戒告処分の定義と基本的な意味

戒告処分(かいこくしょぶん)とは、企業や官公庁が従業員・職員に対して行う懲戒処分の一種で、問題のある行為や規律違反に対して将来を戒めるために注意を与える措置を指します

戒告は懲戒処分の体系のなかで最も軽い位置づけにあり、減給や出勤停止のような経済的不利益を直接伴わない点が特徴です。

戒告の読み方と語源

戒告は「かいこく」と読みます。「戒」は「いましめる」、「告」は「つげる」を意味し、文字通り「いましめを告げる」処分です。労働法の分野では、使用者が労働者の将来の行為を戒めるために行う、懲戒処分のなかで最も軽度な措置として定義されています。

戒告処分の法的根拠

戒告処分を含む懲戒処分の法的な枠組みは、労働契約法第15条に規定されています。同条では「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。

つまり、戒告処分であっても以下の要件を満たす必要があります。

  • 就業規則に懲戒事由と処分の種類が明記されていること
  • 処分の対象となる行為が就業規則に定めた懲戒事由に該当すること
  • 処分の内容が行為に対して相当であること(比例原則)
  • 適正な手続きを経て処分が決定されていること

[参照元]労働契約法|e-Gov法令検索

懲戒処分における戒告の位置づけ

懲戒処分には複数の種類があり、一般的に以下の順序で重さが区分されています。戒告はこの体系のなかで最も軽い処分に位置します。

処分の種類重さ概要
戒告最も軽い将来を戒めるために注意を申し渡す
譴責(けんせき)軽い始末書の提出を求めたうえで注意を申し渡す
減給やや重い賃金の一部を差し引く
出勤停止重い一定期間の出勤を禁止する(無給)
降格重い役職や職位を引き下げる
諭旨解雇(ゆしかいこ)かなり重い退職届の提出を勧告し、応じない場合は懲戒解雇
懲戒解雇最も重い即時に雇用契約を解除する

労務行政研究所の調査によると、懲戒処分の段階設定数としては「6段階」が41.8%で最も多く、「7段階」が28.4%、「5段階」が15.6%となっています。戒告を独立した段階として設ける企業が多数を占めています。

[参照元]企業における懲戒制度の最新実態|一般財団法人 労務行政研究所

戒告と譴責・訓告・訓戒の違い

戒告と似た処分として譴責(けんせき)、訓告(くんこく)、訓戒(くんかい)があります。これらは混同されやすいため、それぞれの違いを明確にしておくことが重要です。

戒告と譴責の違い

戒告と譴責はどちらも注意を与える処分ですが、もっとも大きな違いは始末書の提出義務の有無です。戒告は口頭または文書での注意にとどまるのに対して、譴責は始末書(反省文)の提出を求める点でより重い処分とされています。

企業の就業規則によっては、戒告でも始末書の提出を求めるケースがありますが、一般的には戒告は始末書不要、譴責は始末書必要という区分が定着しています。

戒告と訓告・訓戒の違い

訓告(くんこく)と訓戒(くんかい)は、主に公務員の分野で使用される用語です。公務員の場合、法律上の懲戒処分は免職・停職・減給・戒告の4種類に限定されており、訓告と訓戒は法律上の懲戒処分には含まれません。

訓告・訓戒は「矯正措置」や「指導上の措置」と呼ばれ、懲戒処分に至らない軽微な問題に対して行われる行政上の指導措置です。つまり、公務員の世界では戒告のほうが訓告・訓戒よりも重い措置となります。

一方、民間企業では就業規則の定め方によって異なりますが、訓戒を戒告とほぼ同義で使用するケースもあります。自社の就業規則でどのように定義されているかを確認することが重要です。

処分名始末書懲戒処分としての位置づけ主な適用場面
戒告不要(原則)懲戒処分(最も軽い)民間企業・公務員
譴責必要懲戒処分(戒告の次に軽い)民間企業
訓告不要懲戒処分外の指導措置主に公務員
訓戒不要懲戒処分外の指導措置主に公務員

戒告と注意指導の違い

戒告処分と日常的な注意指導(口頭注意)は明確に区別する必要があります。注意指導は業務上の指示の一環として行われるもので、懲戒処分としての効力は持ちません。戒告処分は就業規則に基づく正式な懲戒処分であり、人事記録に残り、その後の人事評価に影響を及ぼします。

実務上は、問題行動が発生した際にまず注意指導を行い、改善が見られない場合に懲戒処分としての戒告に進むという段階的な対応が推奨されています。

戒告処分の対象となる具体的な行為

戒告処分の対象となる行為は、就業規則の懲戒事由に定められている必要があります。ここでは、実務上よく見られる戒告相当の行為を類型別に解説します。

勤怠関連の違反行為

勤怠に関する問題は、戒告処分の対象としてもっとも多いケースです。

  • 無断欠勤:正当な理由なく欠勤し、事前の連絡も行わなかった場合。ただし、短期間(1〜2日程度)の無断欠勤であれば戒告が相当とされることが多い
  • 遅刻・早退の常習:繰り返し遅刻や早退を行い、注意指導を受けても改善が見られない場合
  • 中抜け:勤務時間中に無断で職場を離れる行為

人事院の懲戒処分の指針では、国家公務員について「正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員」は減給または戒告とする旨が定められています。

[参照元]懲戒処分の指針について|人事院

職務専念義務違反

  • 勤務時間中の私的行為:業務と関係のないインターネット閲覧、私用メール・SNSの利用、私的な電話など
  • 職務怠慢:業務指示に従わず、正当な理由なく業務を遂行しない行為
  • 業務上の軽微なミスの繰り返し:単発のミスでは処分対象にならないが、注意指導後も同様のミスを繰り返す場合

職場規律に関する違反

  • ハラスメント(軽微なもの):セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントのうち、比較的軽度なもの。ただし、ハラスメントの態様によっては減給以上の重い処分が相当となるケースも多い
  • 職場内での不適切な言動:同僚や上司に対する暴言や非協力的な態度
  • 身だしなみ・服装規定違反:就業規則で定められた服装規定に繰り返し違反する行為

人事院の統計によると、令和6年(2024年)の国家公務員の懲戒処分285件のうち、処分事由にセクシュアルハラスメントを含むものは46人(前年比16人増)、パワーハラスメントを含むものは18人(同7人増)と報告されています。

[参照元]令和6年における懲戒処分の状況について|人事院

その他の戒告相当行為

  • 経歴詐称(軽微なもの):採用時の経歴に軽微な虚偽があった場合
  • 兼業規定違反(軽微なもの):許可なく副業を行った場合で、業務への支障が軽微なケース
  • 情報管理上の軽微な違反:社内文書の取り扱い不備など

戒告処分が従業員に与える影響

戒告処分は懲戒処分のなかで最も軽い処分ですが、従業員にとっては無視できない影響があります。処分を行う企業側も、これらの影響を正しく理解しておく必要があります。

賞与(ボーナス)への影響

多くの企業では、人事評価の結果が賞与の支給額に反映されます。戒告処分を受けた場合、評価期間中の人事評価にマイナスの影響が生じ、結果として賞与が減額されることがあります。

減額の程度は企業の賞与規程や人事制度によって異なりますが、一般的には1回の戒告で賞与の数パーセントから十数パーセント程度の減額となるケースが見られます

昇給・昇進への影響

戒告処分は昇給や昇進の判断材料にもなります。処分歴がある場合、同じ評価であっても昇給幅が抑制されたり、昇進のタイミングが遅れたりする可能性があります。特に管理職への昇進選考においては、過去の懲戒処分歴が重要な考慮要素となることが多いです。

公務員の場合は、より明確に影響が規定されています。国家公務員法に基づく人事院規則では、戒告処分を受けた職員は一定期間の昇給抑制措置が適用されます。

退職金への影響

戒告処分が退職金に直接影響することは少ないですが、間接的な影響はあり得ます。退職金が勤続年数と最終給与に基づいて計算される場合、戒告処分による昇給抑制が退職金額の減少につながる可能性があります。

ただし、戒告処分を理由として退職金を大幅に減額することは、処分の相当性の観点から問題が生じる可能性があるため、慎重な判断が必要です。

転職・キャリアへの影響

戒告処分の履歴は、原則として社外に公表されることはありません。転職時に前職の懲戒処分歴を申告する法的義務もないため、直接的に転職活動に影響するケースは限定的です。

ただし、転職先が前職に在籍確認(リファレンスチェック)を行う場合や、特定の業界・職種(金融業界のコンプライアンス関連職など)では影響が及ぶ可能性も否定できません。

同じ行為を繰り返した場合のリスク

戒告処分を受けたにもかかわらず同様の問題行動を繰り返した場合、次回はより重い処分(譴責、減給、出勤停止など)が適用される可能性が高まります。懲戒処分は段階的に重くなるのが一般的であり、過去の処分歴は加重事由として考慮されます。

最悪の場合、度重なる問題行動と処分歴を理由として普通解雇や懲戒解雇に至るケースもあるため、戒告処分を受けた時点で行動の改善に真摯に取り組むことが重要です。

戒告処分の手続き・進め方【実務フロー】

戒告処分を適正に行うためには、法的要件を満たした手続きを踏むことが不可欠です。手続きに不備があると、処分が無効と判断されるリスクがあります。ここでは、実務で使える具体的なフローを解説します。

ステップ1:事実関係の調査

問題行動が報告された場合、まず客観的な事実関係を調査します。調査の段階で重要なのは、推測や伝聞ではなく客観的な証拠を確保することです。

確認すべき事項は以下のとおりです。

  • 問題行動の具体的な日時、場所、内容
  • 関係者(目撃者、被害者)からの聞き取り
  • 客観的な証拠(勤怠記録、メール、防犯カメラ映像など)の収集
  • 過去の注意指導の記録、類似の問題行動の有無
  • 当該従業員の勤務態度や業績に関する記録

調査にあたっては、対象となる従業員のプライバシーにも配慮し、不必要に情報が拡散しないよう注意が必要です。

ステップ2:弁明の機会の付与

事実調査の結果、戒告処分に相当すると判断した場合でも、処分を決定する前に本人に弁明の機会を与えることが重要です。

弁明の機会の付与は法律上の義務ではありませんが、適正手続きの観点から強く推奨されており、弁明の機会を与えなかったことが処分の無効理由となった裁判例もあります。

弁明の場では以下の点を確認します。

  • 問題行動の事実関係についての本人の認識
  • 問題行動に至った経緯や背景事情
  • 本人の反省の有無や改善の意思
  • その他、処分の軽重を判断するうえで考慮すべき事情

ステップ3:処分の決定

弁明の機会を経て、最終的に処分内容を決定します。決定にあたっては以下の点を検討する必要があります。

  • 行為の性質・態様:問題行動の悪質性、故意か過失か
  • 処分の相当性:行為に対して戒告処分が適切かどうか(重すぎないか、軽すぎないか)
  • 過去の処分歴:同様の問題行動に対する過去の処分事例との均衡
  • 他の従業員との公平性:同種の行為をした他の従業員に対する処分との整合性
  • 情状酌量の余地:反省の態度、勤務年数、日頃の勤務態度など

ステップ4:処分の通知(戒告書の交付)

処分が決定したら、本人に対して書面で通知します。口頭のみの通知でも法的には有効ですが、証拠保全の観点から書面での通知が強く推奨されます。

戒告書(懲戒処分通知書)に記載すべき主な項目は以下のとおりです。

  • 被処分者の氏名・所属部署
  • 処分の種類(戒告)
  • 処分年月日
  • 処分の理由(具体的な事実関係と該当する就業規則の条項)
  • 処分権者の氏名・役職
  • 今後の改善に関する指示事項

書面は必ず2通作成し、1通を本人に交付、1通を会社で保管します。本人が受領を拒否した場合は、その旨を記録に残します。

ステップ5:処分後のフォローアップ

戒告処分は、従業員の行動改善を促すことが目的です。処分を通知して終わりではなく、その後のフォローアップが重要です。

  • 改善面談の実施:処分後1〜2週間以内に直属の上司が面談を行い、改善の方向性を確認する
  • 改善計画の策定:具体的な改善目標と期限を設定し、本人と共有する
  • 経過観察:3〜6か月程度の期間を設けて、行動の改善状況をモニタリングする
  • 記録の保管:処分に関する一連の書類(調査報告書、弁明記録、戒告書、面談記録など)を適切に保管する

戒告処分における企業側の注意点と失敗事例

戒告処分は懲戒処分のなかで最も軽い措置ですが、手続きの不備や判断の誤りがあると処分が無効となるリスクがあります。企業側が注意すべきポイントと、実際の失敗事例を解説します。

就業規則に根拠がない処分は無効

懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒事由と処分の種類が明記されている必要があります。就業規則がない企業や、就業規則に戒告処分の定めがない企業では、戒告処分を行うことができません。

また、就業規則は従業員に周知されている必要があります。周知されていない就業規則に基づく処分は無効と判断される可能性が高いです。

処分の相当性を欠く場合のリスク

戒告処分は軽い処分ですが、対象となる行為の内容によっては「処分の相当性を欠く」と判断されることがあります。

三和銀行事件(大阪地裁平成12年4月17日判決)では、従業員が自身の労働条件の改善を目的とした書籍を出版したことに対する戒告処分について、裁判所は処分の相当性を欠くとして無効と判断しました。

この判例は、たとえ最も軽い戒告処分であっても、懲戒権の濫用に該当する場合は無効となることを示す重要な事例です。

手続き不備による無効リスク

弁明の機会を与えずに処分を行った場合や、事実調査が不十分なまま処分を決定した場合、手続きの適正性の観点から処分が無効となるリスクがあります。

東京地裁平成20年4月18日判決では、大学が出勤簿の虚偽記載を理由として教授に行った戒告処分について、虚偽記載の事実が認められないとして無効と判断されました。

この事例は、客観的な証拠に基づかない事実認定がいかに危険であるかを示しています。

平等取扱い原則の違反

同種の問題行為を行った他の従業員に対しては処分を行わず、特定の従業員にのみ戒告処分を行った場合、平等取扱い原則に違反するとして処分が無効となる可能性があります。

過去の処分事例と比較して著しく均衡を欠く処分も同様です。

戒告処分の適正化チェックリスト

企業が戒告処分を行う際に確認すべきポイントをチェックリストとしてまとめます。

  • 就業規則に戒告処分の根拠規定があるか
  • 就業規則が従業員に周知されているか
  • 問題行為が就業規則の懲戒事由に該当するか
  • 客観的な証拠に基づく事実調査を行ったか
  • 本人に弁明の機会を付与したか
  • 処分の内容が行為に対して相当であるか
  • 同種の事案との処分の均衡が取れているか
  • 処分決定のプロセスは社内規程に沿っているか
  • 処分通知書を書面で交付する準備ができているか
  • 処分後のフォローアップ体制が整備されているか

公務員の戒告処分と民間企業の戒告処分の違い

戒告処分は公務員と民間企業の両方で適用される処分ですが、法的根拠や運用方法に大きな違いがあります。

公務員における戒告処分

国家公務員の懲戒処分は、国家公務員法第82条に基づいて行われます。処分の種類は免職・停職・減給・戒告の4種類に限定されており、地方公務員も地方公務員法第29条により同様の4種類が定められています

公務員の場合、懲戒処分の基準として人事院が「懲戒処分の指針」を公表しており、行為の類型ごとに標準的な処分量定が示されています。これにより、処分の客観性と公平性が担保されています。

令和6年(2024年)の国家公務員の懲戒処分の状況は以下のとおりです。

処分の種類件数前年比
免職20人+8人
停職50人-7人
減給134人+24人
戒告81人+20人
合計285人+45人

処分事由別では、公務外非行関係が105人で最も多く、次いで一般服務関係が91人、交通事故・交通法規違反関係が34人となっています。

[参照元]令和6年における懲戒処分の状況について|人事院

民間企業における戒告処分

民間企業の場合、懲戒処分の種類や内容は各企業の就業規則によって定められます。公務員のような法定の処分種類はなく、企業ごとに柔軟に設計することが可能です。

ただし、民間企業であっても労働契約法第15条の規制を受けるため、合理的な理由と社会的相当性が必要です。

公務員と民間企業の戒告処分比較表

比較項目公務員民間企業
法的根拠国家公務員法第82条/地方公務員法第29条労働契約法第15条・就業規則
処分の種類法定4種類(免職・停職・減給・戒告)就業規則で自由に設計可能
処分基準人事院「懲戒処分の指針」各企業の就業規則・運用基準
不服申し立て人事院への審査請求が可能労働審判・訴訟
処分の公表原則として公表原則として非公表
昇給への影響人事院規則で明確に規定企業の人事制度による

戒告処分を受けた従業員の対応方法

従業員の立場から、戒告処分を受けた場合の適切な対応方法についても解説します。

処分に納得できる場合の対応

処分内容に納得できる場合は、以下の対応を取ることが望ましいです。

  • 処分の内容を真摯に受け止め、反省の態度を示す
  • 上司との面談で改善の意思を明確に伝える
  • 具体的な改善計画を自ら立案し、実行する
  • 同様の問題行動を繰り返さないための自己管理を徹底する

処分に不服がある場合の対応

処分の内容や手続きに疑問がある場合は、以下のステップで対応を検討します。

  1. 処分理由の確認:処分通知書の内容を確認し、処分の理由と根拠条項を把握する
  2. 社内の相談窓口への相談:人事部門やコンプライアンス窓口に相談し、処分の理由や手続きについて説明を求める
  3. 労働組合への相談:労働組合がある場合は、組合を通じて交渉を行う
  4. 外部への相談:労働基準監督署の総合労働相談コーナーや弁護士に相談する
  5. 法的手続き:処分が不当であると判断した場合は、労働審判や訴訟を検討する

ただし、戒告処分は懲戒処分のなかで最も軽い処分であるため、裁判で争う実益があるかどうかは慎重に判断する必要があります。

戒告処分に関する最新の実務トレンド

近年の労務管理において、戒告処分をめぐる実務にはいくつかの注目すべきトレンドがあります。

リモートワーク環境での戒告処分

テレワークの普及に伴い、勤務実態の把握が難しくなっている環境下で、勤怠関連の問題行動に対する戒告処分のあり方が問われています。在宅勤務中の勤怠不正や業務外活動への対処について、就業規則やテレワーク規程の整備が求められています。

ハラスメント関連の戒告処分の増加

人事院の統計データが示すとおり、ハラスメント関連の懲戒処分件数は増加傾向にあります。令和6年のセクシュアルハラスメント関連処分は46人(前年比16人増)、パワーハラスメント関連処分は18人(同7人増)と、いずれも前年を上回っています。

企業としては、ハラスメントに対する戒告処分の基準を明確化し、研修や相談窓口の整備とあわせて、問題の早期発見・早期対応の体制を構築することが重要です。

[参照元]令和6年における懲戒処分の状況について|人事院

SNS・情報セキュリティ関連の規律強化

従業員のSNS利用に起因する企業の信用毀損リスクが高まるなか、SNS上での不適切な投稿や情報漏洩に対する懲戒処分の規定を整備する企業が増えています。これらの行為に対する戒告処分の適用事例も増加傾向にあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 戒告処分は何回受けると解雇になりますか?

戒告処分の回数だけで自動的に解雇になることはありません。ただし、戒告処分を複数回受けた事実は、その後のより重い懲戒処分(減給、出勤停止、さらには解雇)を検討する際の加重事由として考慮されます。

一般的には、同種の問題行動に対して戒告→譴責→減給→出勤停止と段階的に処分が重くなり、改善が見られない場合に解雇が検討されます。具体的な回数基準は企業の就業規則や過去の運用事例によって異なります。

Q2. 戒告処分を受けると給料は下がりますか?

戒告処分は減給処分とは異なり、処分そのものによって直接給料が下がることはありません。ただし、人事評価にマイナスの影響が生じることで、間接的に賞与の減額や昇給幅の抑制につながる可能性があります。

公務員の場合は、人事院規則に基づき一定期間の昇給抑制措置が適用されることがあります。

Q3. 戒告処分は履歴書に書く必要がありますか?

法的には、戒告処分の履歴を履歴書に記載する義務はありません。懲戒処分歴は「賞罰」欄に記載する場合がありますが、一般的に戒告のような軽い処分は記載不要とされています。

ただし、面接等で直接質問された場合に虚偽の回答をすると、経歴詐称として問題になる可能性があるため、正直に回答することが望ましいです。

Q4. 戒告処分の記録はいつ消えますか?

戒告処分の記録の保存期間は、企業の社内規程や公務員の場合は各機関の規定によって異なります。

民間企業では一般的に人事記録として永年保存されることが多いですが、一定期間(3年〜5年)経過後に昇進・昇給への影響を解消する運用を行う企業もあります。公務員の場合は、昇給抑制の期間が明確に定められているケースが多いです。

Q5. 戒告処分は拒否できますか?

戒告処分は使用者が行う一方的な意思表示であるため、従業員が拒否しても処分の効力は生じます。ただし、処分の内容に不服がある場合は、社内の不服申し立て制度、労働組合を通じた交渉、労働審判、訴訟などの手段で処分の妥当性を争うことが可能です。

不服申し立てを行う場合は、処分通知書の内容を確認し、早期に弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

Q6. パート・アルバイトにも戒告処分はできますか?

パートタイマーやアルバイトに対しても、就業規則に懲戒処分の規定があり、その規定がパート・アルバイトにも適用される旨が明記されていれば、戒告処分を行うことは可能です。

ただし、正社員とは異なる就業規則を適用している場合は、パート・アルバイト用の就業規則にも懲戒処分の定めがあるかを確認する必要があります。

まとめ:戒告処分を適正に運用するためのポイント

戒告処分は懲戒処分のなかで最も軽い処分ですが、適正な手続きを踏まなければ無効となるリスクがあり、企業の労務管理において決して軽視できない処分です。

適正な戒告処分の運用に向けて、今すぐ確認・実行すべきことは以下の3点です。

  1. 就業規則の確認・整備:戒告処分の根拠規定が就業規則に明記されているか、懲戒事由が具体的かつ網羅的に定められているかを確認し、必要に応じて改定する
  2. 手続きフローの標準化:事実調査→弁明の機会付与→処分決定→書面通知→フォローアップという一連の手続きを社内マニュアルとして整備し、担当者が迷わず対応できる体制を構築する
  3. 処分事例の蓄積と共有:過去の処分事例をデータベース化し、同種の事案に対する処分の均衡を確保するとともに、社内研修を通じて管理職の判断力向上を図る

戒告処分はあくまで従業員の行動改善を促すための措置です。処分そのものが目的ではなく、処分を通じて職場の規律を維持し、健全な労使関係を構築していくことが重要です。

自社の状況に合わせて適切な運用を行い、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします

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この記事を書いた人

労務問題の課題解決メディア『ROUMU2.0』の企画編集部。企業法務弁護士ナビやBackOfficeDBなど、労務問題の解決手段を提供している。

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