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社労士と労務士の違いとは?資格の種類・業務範囲・取得方法まで

労務士、社労士_違い

「社労士に頼もうとしたら、労務士という資格もあると知った。どう違うのだろう?」

人事・総務担当者の方から、こうした疑問をよく耳にします。

社会保険労務士(社労士)と労務管理士(労務士)は、名前こそ似ていますが、法的な位置づけも業務範囲も大きく異なります。とりわけ、社労士にしか認められていない「独占業務」の存在は、企業が外部専門家に依頼する際に非常に重要なポイントです。

誤った認識のまま業務を依頼してしまうと、知らないうちに法令違反に加担してしまうリスクもゼロではありません。

本記事では、社労士と労務士の違いを、資格の種類・業務範囲・試験難易度・依頼すべき場面という4つの軸で体系的に解説します。

「どちらに相談すればよいか」「何をお願いできるのか」を正確に把握し、自社の労務管理を適切に進めるための判断軸として、ぜひお役立てください。

目次

労務士とは?正式名称と実態をまず押さえる

社労士と労務士の違いを正確に理解するためには、まず「労務士」という名称そのものについて整理しておく必要があります。実は、「労務士」という名称の背景には、多くの方が見落としがちな重要な事実が隠れています。

労務士は労務管理士のこと

「労務士」という言葉をインターネットで検索すると、「社労士との違い」を解説するページが数多くヒットします。しかし実は、「労務士」という名称そのものは、法律や公的機関によって定められた正式な資格名称ではありません。

正式な資格名称は「労務管理士」です。一般社団法人日本人材育成協会および一般社団法人日本経営管理協会が認定する民間資格であり、労働基準法や労務管理に関する一定の知識・能力を持つことを証明するものです。

労務管理士 Labor Management Adviser (LMA)
労務管理士は、企業内部の労働関係当事者が労働基準法や労務管理に関する専門的知識を習得し、人事・労務分野における、より高度な専門的職務能力を高めることを目的に、法令遵守(Compliance)を前提として、労働者の採用から退職までの一連の就業管理を行うことができる能力者に与えられる職能民間資格[能力評価審査]です。
引用元:https://jinzai.org/sikaku.html

「労務士」という呼称は、「社労士(社会保険労務士)」との対比で生まれた俗称・略称として広く使われているに過ぎません。

企業の担当者として外部の専門家に問い合わせる際や、資格保有者の経歴を確認する際には、「労務士」という表記だけでは正式な資格の種別を特定できない点に注意が必要です。

相手が「社会保険労務士」なのか「労務管理士」なのかを、必ず確認するようにしましょう。

社労士は社会保険労務士

一方、「社労士」は「社会保険労務士」の正式な略称であり、社会保険労務士法(昭和43年制定)に基づいた国家資格です。厚生労働省が管轄しており、国が定めた試験に合格し、全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録することで、初めて「社会保険労務士」として業務を行う資格が与えられます。

国家資格である以上、その業務範囲や権限は法律によって明確に定められています。特に、社労士にのみ認められた「独占業務」の存在が、労務管理士と決定的に異なる点です。独占業務とは、社労士以外の者が報酬を得て行うことを法律で禁じられた業務のことを指します。この点については後の章で詳しく解説します。

社労士は企業の採用から退職に至るまでの労働・社会保険に関する幅広い業務を担う、いわば「人に関するプロフェッショナル」として、多くの企業から頼りにされる存在です。

名前が紛らわしい理由と混同されやすい背景

なぜ「社労士」と「労務士(労務管理士)」はこれほど混同されやすいのでしょうか。その背景には、いくつかの理由があります。

まず、両者ともに「人事・労務管理」という共通の業務領域に携わっている点が挙げられます。採用管理・就業規則の整備・労働環境の改善といった分野では、社労士も労務管理士も関与し得るため、外部から見ると違いが分かりにくくなります。

次に、「労務管理士」という名称が「社会保険労務士」と語感が似ており、一見すると同格の資格のように聞こえてしまうことも要因のひとつです。さらに、労務管理士を認定する民間団体が複数存在し、資格の位置づけが統一されていないため、その実態が分かりにくくなっている側面もあります。

ただし、両者の間には「国家資格か否か」「独占業務があるか否か」という明確な差があります。企業担当者がこの違いを正確に把握しておくことは、適切な専門家への依頼と、法令リスクの回避という観点から非常に重要です。

社労士と労務士の最大の違い|国家資格か民間資格か

社労士と労務士(労務管理士)の違いを一言で表すとすれば、「国家資格か民間資格か」という点に尽きます。この違いは、資格の信頼性だけでなく、できる業務の範囲や法的な立場にまで直接影響します。

社労士(社会保険労務士)は国が認めた国家資格

社会保険労務士は、社会保険労務士法という法律を根拠とする国家資格です。毎年一度、厚生労働大臣が実施する国家試験(社会保険労務士試験)に合格し、所定の登録手続きを経て初めて名乗ることができます。

国家資格の最大の特徴は、法律に基づいて一定の業務を独占的に行う権限が認められる点です。医師や弁護士などと同様に、社労士も業務独占資格として位置づけられており、社労士でない者が特定の業務を有償で行うことは法律で禁止されています。

こうした法的な裏付けがあるからこそ、行政機関への申請書類の提出代行や、法定帳簿の作成といった業務を企業に代わって担うことが可能になります。社労士に業務を依頼することは、単に「専門知識のある人に頼む」という以上の、法的な安全性の確保という意味合いも持ちます。

労務士(労務管理士)は民間団体が認定する民間資格

労務管理士は、一般社団法人日本人材育成協会や一般社団法人日本経営管理協会といった民間団体が独自の基準で認定する民間資格です。国家試験のような統一された試験制度があるわけではなく、認定講座の受講・修了試験の合格・実務経験による書類審査など、複数の取得ルートが用意されています。

民間資格である以上、その権威と信頼性は認定団体の信頼性に依存します。また、法律に基づく独占業務は一切認められていません。つまり、労務管理士が持つのは「労務管理に関する一定の知識・能力を民間団体が認定した」という証明であって、法的な業務権限ではありません。

採用活動や就業規則の運用改善、社内制度の整備など、法定外の業務であれば労務管理士でも対応できますが、行政機関への届出書類の作成・提出代行といった法定業務は、労務管理士の業務範囲外となります。

国家資格と民間資格、法的な効力と社会的信頼性の差

国家資格と民間資格の差は、単なる「格の違い」ではありません。実務上の観点から見ると、以下の3点が特に重要です。

第一に、業務遂行の法的根拠の有無です。社労士は法律に基づいて業務を行いますが、労務管理士にはその根拠がありません。

第二に、資格の継続的な管理体制の差です。社労士は都道府県の社会保険労務士会に登録し、研修義務や懲戒規定の対象となりますが、労務管理士にはこのような公的な監督機構がありません。

第三に、行政・取引先からの信頼性の差です。助成金申請や労働基準監督署への対応など、公的な場面では社労士でなければ対応できないケースがほとんどです。

自社の労務管理に関して外部の専門家を探している企業担当者の方は、まずこの「国家資格か民間資格か」という点を確認することを強くお勧めします。

社労士にしかできない仕事(独占業務)とは?

社労士の業務は、法律上、1号業務・2号業務・3号業務の3種類に分類されています

このうち1号業務と2号業務は独占業務であり、社労士以外が有償で行うことは違法です。企業担当者として依頼内容を検討する際には、この区分を正確に理解しておくことが不可欠です。

1号業務:行政手続きの書類作成・提出代行(独占業務)

1号業務とは、労働社会保険諸法令に基づいて行政機関に提出する書類の作成・申請・届出を、企業に代わって行う業務です。具体的には、従業員を新たに採用した際の雇用保険・健康保険・厚生年金保険への加入手続き、退職時の喪失手続き、育児休業・介護休業に関する給付金の申請、労働保険の年度更新、助成金の申請代行などが該当します。

これらの手続きは法定のルールに基づいており、書類の不備や期限超過が生じると、従業員への不利益や企業への行政指導につながるリスクがあります。また、法改正のたびに手続きの内容が変わるため、常に最新の法令知識が求められます。

社労士に1号業務を依頼することで、こうした煩雑な手続きをアウトソースし、担当者の工数を削減できます。特に、従業員数が増加中の成長企業や、人事担当者が兼務で労務業務を担っている中小企業にとっては、社労士との顧問契約が大きな助けとなります。

2号業務:法定帳簿書類の作成(独占業務)

2号業務とは、労働社会保険諸法令に基づいて企業が備え付けなければならない帳簿書類を作成する業務です。代表的なものとして、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(タイムカード)の整備、就業規則の作成・変更・届出などが挙げられます。

就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する事業場では作成が義務付けられており(労働基準法第89条)、内容が法令に適合していなければなりません。また、作成した就業規則は労働基準監督署への届出も必要です。これらの手続きを社労士が代行することで、法令違反のリスクを低減できます。

特に、テレワーク導入や副業解禁など、働き方が多様化する現代においては、就業規則の見直しニーズが高まっています。既存の就業規則が実態に合っているか、法改正に対応できているかを社労士に確認・整備してもらうことは、労務リスク管理の基本といえます。

3号業務:人事・労務に関するコンサルティング

3号業務とは、企業の人事・労務管理全般に関する相談・指導・コンサルティングを行う業務です。労働時間管理の適正化、賃金制度の設計、ハラスメント対策、同一労働同一賃金への対応、人事評価制度の整備など、幅広いテーマが含まれます。

1号・2号業務と異なり、3号業務は社労士の独占業務ではないため、労務管理士やその他の専門家(中小企業診断士、人事コンサルタントなど)が有償で提供することも可能です。ただし、社労士は1号・2号業務の実務を通じて最新の法令動向を熟知しているため、法的な正確性という点では他の専門家と一線を画します。

「人事制度の見直しだけ相談したい」という場合には、労務管理士やコンサルタントへの相談も選択肢に入りますが、法令対応を含む包括的な相談は社労士に依頼するのが安心です。

特定社会保険労務士だけが担えるADR代理業務

社労士の中でも、特別な研修と試験(紛争解決手続代理業務試験)を経て登録した「特定社会保険労務士」のみが担える業務があります。それが、裁判外紛争解決手続(ADR)における代理業務です。

これは、解雇・賃金未払い・ハラスメントなど、労働に関するトラブルが生じた際に、裁判を経ずに「あっせん」という手続きによって紛争を解決する際に、当事者の代理人として関与できる業務です。

弁護士に依頼するよりも費用・時間の面でメリットがある場合が多く、労使間の迅速な問題解決に有効です。

企業として労務トラブルのリスク管理を真剣に検討されている場合、顧問社労士が「特定社会保険労務士」かどうかを確認しておくことも一つの判断基準になります。

労務士(労務管理士)の仕事内容と活躍できる範囲

労務管理士は、社労士のような法的な独占業務こそ持ちませんが、企業の労務管理に関する実務的な知識を活かして、社内のさまざまな場面で貢献できる存在です。ただし、その業務範囲には明確な限界があることも理解しておく必要があります。

採用から退職までの就業管理・社内制度の設計と運用

労務管理士の主な業務フィールドは、社内の人事・労務管理に関する実務全般です。具体的には、採用時の労働契約の整備、入社・退職に伴う社内手続きの運用、勤怠管理・休暇管理のルール設計、給与計算の実務補助、社内の人事制度(評価制度・等級制度)の設計・改善支援、福利厚生制度の整備などが挙げられます。

これらは主に社内担当者として、または社内向けのコンサルタントとして実施する業務です。労務管理士は、企業の人事・総務部門に在籍する担当者がスキルアップのために取得するケースが多く、「社内での実務能力の証明」としての性格が強い資格です。

自社の労務管理体制を内側から整えたいという企業においては、労務管理士の資格を持つ人材が在籍していることは一定の強みになります。

社労士の独占業務を行うと法律違反になる

重要な注意点として、労務管理士が社労士の独占業務(1号業務・2号業務)を、報酬を得て行うことは社会保険労務士法違反となります。具体的には、社会保険の加入・脱退手続きの書類を代わりに作成・提出すること、法定帳簿書類を有償で作成することなどが該当します。

万が一、労務管理士を名乗る人物からこれらの業務提供を持ちかけられた場合には、相手方が社会保険労務士として登録されているかどうかを、全国社会保険労務士会連合会のウェブサイト(社労士検索機能)で確認することをお勧めします。

また、資格の確認にあたっては、社会保険労務士証票の提示を求めることも一つの方法です。法令違反の業務を依頼した企業側にも責任が生じる可能性があるため、専門家への依頼前には必ず資格の確認を行ってください。

3号業務のコンサルティング分野では活躍できる

労務管理士が有償で合法的に提供できる業務の代表例が、前述した3号業務に相当するコンサルティング分野です。

人事制度の設計・見直し、労働環境の改善提案、ハラスメント対策の研修講師、勤怠管理の仕組みづくりなど、「社内制度の整備や運用改善を支援する」という役割においては、労務管理士でも十分に貢献できます。

ただし、この分野は社労士も同様に対応できるため、コンサルティング分野のみであっても、法令への精通度という観点から社労士に相談する方が安心なケースも多々あります。企業としては、コスト・専門性・対応範囲のバランスを見極めながら、どの専門家に何を依頼するかを判断することが大切です。

社労士と労務士の業務範囲を一覧で比較

社労士と労務管理士がそれぞれ何を担えるのかを整理したうえで、企業として依頼すべき場面を具体的に理解しましょう。

できること・できないことの違い一覧表

社労士と労務管理士の業務範囲を整理すると、以下のようになります。

社会保険・労働保険の加入・脱退手続き(提出代行)は、社労士のみが有償で対応可能です。法定帳簿書類(就業規則・労働者名簿・賃金台帳など)の作成も同様に、社労士の独占業務です。助成金申請の代行も、書類作成・提出が伴うため社労士のみが対応できます。

一方、

  • 人事制度・評価制度の設計・改善提案
  • ハラスメント対策の研修・制度整備、勤怠管理の仕組みづくり
  • 採用・退職にかかる社内フローの整備など

社労士・労務管理士の双方が対応できる業務です。ただし、法令解釈が絡む場面では社労士の方が適切な対応が期待できます。

また、特定社会保険労務士のみが対応できる業務として、労働紛争のADR代理(あっせん手続きにおける代理人業務)があります。これは一般の社労士でも担えない業務であるため、トラブル対応を見越している場合は事前に確認が必要です。

同じ労務管理でも「頼める範囲」がまったく異なる

「労務管理の相談」と一口に言っても、その内容によって依頼すべき専門家が異なります。たとえば、「就業規則を整備したい」という場合、就業規則の内容確認・改善提案だけであれば労務管理士でも対応できますが、作成・変更・労働基準監督署への届出まで依頼するとなれば、社労士でなければなりません。

同様に、「残業が増えているので対策を考えたい」という相談の場合、制度設計のアドバイスは労務管理士でも可能ですが、36協定の届出や時間外労働に関する行政対応は社労士の業務範囲です。

業務の性質が「アドバイス・提案」に留まるのか、「行政手続きを伴うか」によって、依頼先を使い分けることが実務上の基本的な判断軸となります。

企業が社労士に依頼すべき場面、労務担当者が担う場面

企業として外部の社労士に依頼すべき場面は、主に次のような状況です。従業員の入退社に伴う社会保険手続き、育児休業・介護休業に関する給付申請、助成金の申請(キャリアアップ助成金、両立支援等助成金など)、就業規則の新規作成・届出が必要な変更、労働基準監督署の調査対応、労働紛争への初動対応などが代表的なケースです。

一方、社内の人事担当者(または社内在籍の労務管理士)が主体的に担える場面としては、

  • 日常的な勤怠管理・給与計算の実務
  • 従業員からの労務相談への初期対応
  • 社内研修の企画・実施
  • 人事評価制度の運用管理

などが挙げられます。社労士を活用する際は、「社労士でなければできないこと」を明確にしたうえで、業務を切り分けることがコスト効率の観点からも重要です。

試験の難易度・合格率・取得方法の違い

資格取得の観点から見ると、社労士と労務管理士の間には難易度・取得ルートの両面で大きな差があります。自社で専門人材を育成することを検討している担当者の方にも参考になる情報です。

社労士試験:受験資格・10科目の壁・合格率6〜7%

社会保険労務士試験は、毎年8月に1回のみ実施される難関国家試験です。まず受験資格の段階でハードルがあり、大学・短大・専門学校の卒業(または相当の学歴)、3年以上の実務経験、行政書士など特定の国家試験合格のいずれかを満たす必要があります。

試験は選択式と択一式の2部構成で、労働基準法・労働安全衛生法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金保険法などを含む計10科目が出題されます。特徴的なのは「科目ごとの足切り」制度であり、総点が合格基準を超えていても、1科目でも基準点を下回ると不合格になります。

試験科目選択式 計8科目(配点)択一式 計7科目(配点)
労働基準法及び労働安全衛生法1問(5点)10問(10点)
労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
1問(5点)10問(10点)
雇用保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
1問(5点)10問(10点)
労務管理その他の労働に関する一般常識1問(5点)10問(10点)
社会保険に関する一般常識1問(5点)
健康保険法1問(5点)10問(10点)
厚生年金保険法1問(5点)10問(10点)
国民年金法1問(5点)10問(10点)
合計8問(40点)70問(70点)
参考:https://www.sharosi-siken.or.jp/about/outline/

選択式では「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」からの出題はありません。択一式の「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」は、各10問のうち問1~問7が「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」から出題され、問8~問10の3問(計6問)が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」から出題されます。

合格率は例年6〜7%前後で推移しており、合格のために必要な学習時間は800〜1,000時間以上ともいわれます。試験合格後には、2年以上の実務経験または事務指定講習の修了が登録要件として求められるため、資格取得から実務への参画まで一定の時間がかかる点も特徴です。

労務管理士:20歳以上なら誰でも受験可・4つの取得ルート

労務管理士の取得要件は、社労士と比べると大幅に緩和されています。受験資格は「20歳以上」であることのみで、学歴・職歴・実務経験の制限はありません。

取得ルートは主に4種類あります。

  1. 全国主要都市で開催される公開認定講座への参加後に筆記試験に合格する方法
  2. 自宅で学べる通信講座を修了する方法
  3. 3年以上の実務経験と推薦書・課題論文による書類審査を経る方法
  4. eラーニング形式のWEB資格認定講座を受講後にオンライン試験に合格する方法

合格率は公表されていないケースが多いですが、受験のハードルが低く学習量も社労士試験に比べれば大幅に少ないため、在職中でも取得を目指しやすい資格です。

ただし、民間資格であるがゆえに「取得したから即戦力」とはならず、実務での経験を積み重ねていくことが重要です。

難易度は雲泥の差?それぞれ取得にかかる期間の目安

試験の難易度を率直に比較すれば、社労士と労務管理士の間には大きな差があります。社労士は専業受験生でも1〜2年、働きながら取得を目指す場合は2〜4年かかるケースも珍しくない、非常に難易度の高い資格です。一方、労務管理士は数週間〜数ヶ月の学習期間での取得が現実的とされています。

こうした差は、「資格取得の容易さ」の問題であるとともに、「習得できる知識・技能の深さ」の差でもあります。社労士は法律・実務・行政手続きに関する総合的かつ高度な専門知識を持ち、それが試験で検証されます。労務管理士は実務的な知識のベースラインを証明するものとして有用ですが、より高度・専門的な局面では社労士の知識・経験が求められることが多いのが実態です。

企業・担当者はどちらに頼むべきか?判断基準を整理する

実際に外部専門家への依頼を検討している企業担当者が最も知りたいのは、「自社の状況に当てはめると、社労士と労務管理士のどちらに何を頼むべきか」という具体的な判断基準ではないでしょうか。

社会保険の手続き・助成金申請は社労士に依頼する

行政機関への書類提出を伴う業務は、すべて社労士に依頼することが原則です。

  • 従業員の採用・退職に伴う社会保険(健康保険・厚生年金保険)および労働保険(雇用保険・労働者災害補償保険)の手続き
  • 産前産後・育児休業・介護休業にかかる各種給付申請
  • 助成金の申請・届出、就業規則の新規作成と労働基準監督署への届出
  • 36協定(時間外・休日労働協定)の届出 など

社労士のみが対応可能な業務です。

また、社労士への依頼は「手続きを任せる」という側面だけでなく、「法令リスクを専門家が監視する」という機能も持ちます。

法改正への対応漏れや手続きの遅延は、行政指導や従業員とのトラブルにつながりますが、顧問社労士がいれば早期に対処できる体制が整います。

社内の人事制度づくり・労務管理改善は労務管理士でも対応可

社内の人事制度設計や労務管理体制の整備といった、行政手続きを伴わないコンサルティング業務については、労務管理士や人事コンサルタントなども選択肢に入ります。

評価制度の設計、給与テーブルの見直し、人事情報の管理体制の整備、従業員の労務トラブル予防に向けた社内研修の実施などがこれに該当します。

ただし、こうした業務も「法令との整合性」の確認が必要な場面では社労士のバックアップが不可欠です。たとえば評価制度の設計であっても、同一労働同一賃金に関する法令への適合性を確認する場合は、社労士の知見が必要になります。

「制度設計は人事コンサルタントや労務管理士が主担当、法令チェックは社労士が担う」という役割分担をとる企業もあります。

社労士報酬の相場と顧問契約の流れ

社労士への依頼には、大きく「スポット依頼(単発)」と「顧問契約(継続)」の2種類があります。スポット依頼では、就業規則の作成(10〜30万円程度)、助成金申請の代行(着手金+成功報酬型が多い)、社会保険の新規適用手続きなどが代表的です。

顧問契約は、毎月一定の顧問料を支払うことで、社会保険手続きの代行・労務相談への対応・法改正情報の提供などを継続的に受けられる契約形態です。顧問料の相場は従業員数によって異なりますが、従業員数10名以下で月額2〜3万円、30名前後で月額3〜5万円程度が一般的な目安とされています(事務所・地域によって異なります)。

社労士を探す際は、全国社会保険労務士会連合会が運営する「SR STATION(SRステーション)」などの検索サービスを利用すると、地域・専門分野でのマッチングが可能です。顧問契約の前に無料相談を受け付けている事務所も多いため、まず相談から始めることをお勧めします。

働き方改革・2024年問題が追い風に:今こそ社労士が必要な理由

近年の法令環境の変化は、企業が社労士と連携する必要性をこれまで以上に高めています。法改正への対応が遅れると、企業は罰則の対象となるだけでなく、従業員との信頼関係の損失や採用競争力の低下にもつながります。

残業規制・同一労働同一賃金への対応に専門家が不可欠

2019年から順次施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制・年次有給休暇の取得義務化・同一労働同一賃金が法制化されました。さらに2024年4月からは、建設業・運送業・医療業といった業種にも時間外労働の上限規制が適用され(いわゆる「2024年問題」)、業種を問わず労働時間管理の適正化が急務となっています。

これらへの対応には、36協定の見直し・就業規則の改定・パートタイム・有期雇用労働者に関する待遇格差の整理といった、高度に専門的な知識と実務経験が求められます。社労士は法改正の最前線にいる専門家として、自社の状況を踏まえた具体的な対応策を提示できます。「何をどこまで対応すべきか分からない」という企業ほど、社労士のサポートが有効です。

社会保険の適用拡大で手続きが増加している実態

2016年以降、段階的に進められてきた社会保険の適用拡大により、2022年10月からは従業員101名以上(2024年10月からは51名以上)の企業で、一定条件を満たすパートタイム・有期雇用労働者にも社会保険への加入義務が生じています。

これにより、多くの企業で新たに社会保険への加入対象となる従業員が生じ、手続き業務が増加しています。対象者の洗い出し・加入手続き・給与計算の見直しなど、一連の作業には専門知識が必要であり、社労士のサポートを活用することで正確かつ迅速な対応が可能になります。

自社が適用拡大の対象になっているかどうかの確認から、対象従業員への説明、行政への届出まで、社労士に一括して依頼することで、担当者の負担を大幅に軽減できます。

社労士と労務士の違いを正しく理解して正しく活用する

本記事では、社労士(社会保険労務士)と労務士(労務管理士)の違いについて、資格の種類・業務範囲・試験難易度・依頼の判断基準という観点から詳しく解説しました。

社労士と労務管理士の最大の違いは、「国家資格か民間資格か」という点にあります。社労士は社会保険労務士法に基づく国家資格者であり、行政への申請・届出代行や法定帳簿書類の作成といった独占業務が認められています。一方の労務管理士は民間資格であり、独占業務は持たず、社内の人事制度整備や労務管理改善のコンサルティングが主な活動領域です。

企業担当者として外部の専門家を活用する際には、「行政手続きを伴う業務は社労士に」「社内制度設計・コンサルティングは社労士または労務管理士・コンサルタントに」という基本的な役割分担を押さえておくことが重要です。なお、労務管理士が社労士の独占業務を有償で行うことは法律違反となるため、依頼前には必ず相手の資格を確認してください。

働き方改革・2024年問題・社会保険の適用拡大など、労務管理を取り巻く法令環境は急速に変化しています。こうした変化に対応するためにも、信頼できる社労士との継続的なパートナーシップの構築は、企業の持続的な成長と労使関係の安定を支える重要な経営課題といえます。

まずは、自社の労務管理の現状を棚卸しし、「社労士でなければ対応できない業務」がどの程度発生しているかを確認するところから始めてみてください。そのうえで、地域の社会保険労務士会や全国社会保険労務士会連合会のSRステーションを通じて、自社に合った社労士を探すことをお勧めします。

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この記事を書いた人

労務問題の課題解決メディア『ROUMU2.0』の企画編集部。企業法務弁護士ナビやBackOfficeDBなど、労務問題の解決手段を提供している。

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